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21話 遠征訓練 4

 薬草の生えている場所は森の中でも木が周りになく、そこの一部だけ生い茂っていた。

 学生達が採取をし、その周りを騎士と騎士見習い、冒険者が警護につく。

 教師が薬草の採取を教え、それが終わるのを待つ。

 

「きたぞ!」


 その声に騎士と騎士見習い、冒険者は迅速に反応した。

 声のした方に振り向くと、狼のような魔物が襲い掛かっている。

 普通の狼よりも一回り大きく、毛が暗い緑とこの鬱蒼とした森の中では保護色となっていた。

 

 それでも声を出したのは騎士らしく、いち早く見つけて迎撃していた。

 先に攻撃される前に虚空から剣を呼び出して斬りつけ、怯んだ所をさらに連撃で倒す。

 残ったのは魔石だけ。魔物の身体はなくなった。

 

 やはり、魔法学院を卒業した人間の魔法は凄いな。

 彼らの魔法は普通と少し違うのが特徴だ。

 魔法使いよりも魔法の消費量が少なくなり、それ故大規模の魔法が撃てる。

 そして何より、どこからともなく武器を持ちだすのだ。

 

 だから武器を押収した所で彼らには意味がない。

 騎士、という単語で一人の女性を思い出してフォンがいる方に目を向ける。

 フォンの隣、同じパーティーで騎士のエルフィラ。

 彼女は冒険者でありながら騎士を名乗っている。

 

 騎士を名乗る、ということは魔法学院の卒業したという証でもあるのだが、彼女は武器を身に着けていた。

 剣だ。騎士なら魔法で武器を呼び出せるのだから、武器を携帯する意味がない。

 

 しかし、持っているということは何かしらの理由があるのだろう。

 頭の片隅に入れておこう、と思っているとフォンと目が合った。

 真剣な眼差しで、力強くこちらを見ている。

 大体の意図は察した。

 

 周りに意識を向け、探る。

 視線が多くなったな。これは来るか?

 フォンの方に向き、頷く。それだけでフォンも察して他の冒険者に周りに探れないよう注意喚起している。

 

 やはり、リーダーというのは頼もしいものだ。何より、フォンと仲良くなれたのは大きい。

 その間にも狼の魔物の戦闘が散発的にだが起こり、戦いの範囲は広がっていく。

 魔物も利口なのか殺しにかからず、一当てしている。

 

 これは、どこか弱い所を探っているのか?

 厄介だな。

 

 その動きは集団でいるということであり、どこかに頭が存在しているということだ。

 狼の魔物が暗殺者と一緒に動けるとは思えないが、これは早めに切り上げて下がるべきだな、という考えに至った時にそれは起きた。

 

 狼の魔物の群れが強襲する。

 場所は騎士見習いの学生と騎士がいる所だ。

 やはり、弱い所を突いてきた。

 それでも騎士は騎士、何とかするだろうと考え、その予想をことごとく裏切る。

 

 知る由もなかったが、騎士はまだなって間もなく学生の方も騎士見習いになってそんなに日が経っていなかった。

 それでも狼の魔物には対抗する。

 武器を振るい、魔法を使う。

 しかし、数が多かった。

 

 一匹二匹、五匹程度ならなんとか出来たがそれ以上だ。

 何より、その中に人影が見えた。

 それを見つけた時、タイミングの悪さに思わず舌打ちをする。

 

「フォン、ここを任せる! ライアン、守れよ!」


 ここは二人に任せた方が良い。俺の方が速く駆け付けられる。

 そう考えた時には、既に身体が動いていた。

 狼に襲われた場所は先頭を北だとして、東北東の場所だ。すぐに駆け付けられた。

 それは騎士も同じく、魔物の群れに対応する。

 

 魔物は騎士に任せ、俺は。

 視界を広げ、動くもの全て認知しようとする。

 思考がゆっくりとなり、周りの動きも僅かにゆっくりとなったような錯覚に陥った。

 探すものはただ一つ。

 どこだ、と動くもの全てに眼を走らせ、魔物を影にして動くものが見えた。

 

 見つけた。

 

 凶刃が騎士見習いを狙う。

 騎士見習いというだけあって、鎧を身に着けている。ただ、それは甲冑のような全身全てを身に守るではない。

 どこかに必ず、隙間や厚みが薄い所がある。

 凶刃は脇腹を狙い定め、弧を横に描いて途中で動きが変わった。

 

 黒塗りのナイフだ。さぞ、毒が塗り込んでいるのだろう。

 それは跳ね上がる。

 剣で腕ごと、斬り飛ばした。動きを身軽せざるおえない暗殺者は、守りが薄い。

 斬るのは簡単だ。

 暗殺を防がれ、斬り飛ばされた腕。そしてこちらの顔を見て目を見開き驚いていた。

 

「遅い」


 何より、動きが止まっている。それを見逃すわけがない。

 もう片方の剣で喉を掻っ捌く。

 血を吹き出し、暗殺者は倒れた。

 

「暗殺者がいるぞ!! 気をつけろ!!」


 声を張り上げた。いたのだ、ならもう他の人間に注意してもらうしかない。

 その言葉に騎士や騎士見習い、冒険者は意識を引き締める。

 魔物だけならまだしも、暗殺者の対処は骨が折れる。ただ、事前に来るかもしれないと分かっていたからこそ、混乱はしない。

 

 ライアンの言う通り、事前に相談して良かったと今にして思う。

 これでなんとかなるか、と僅かに安堵したがそう上手くはいかない。

 高い男の悲鳴が上がる。

 きっと騎士見習いだ。

 十三の歳でなれるのだ、まだ声が低くない。

 

 声の下ほうに振り向くと、案の定まだ身体が大きく発達していない騎士が斬られていた。

 鎧越しからで傷はそこまで深くない。しかし、暗殺者の武器、ナイフには毒が塗られている。

 毒は致死毒か遅延性の毒か分からないが、すぐに解毒する必要があった。

 ただそれよりも先に、暗殺者を倒す方が先だ。


 投げナイフを出す暇がない。

 右手に持つ剣の魔力を調整し、刀身を短くして投げる。

 剣は暗殺者に吸い込まれるように真っすぐに進み、右腕に突き刺さった。

 刺さった痛みで暗殺者はナイフを落とし、その隙に周りの騎士が暗殺者を殺す。

 

「解毒を急げ!」


 斬られた騎士見習いを中央に連れていき、魔法学院の教師や騎士が治療しているのが見える。

 あそこは、任せるしかないか。

 投げた剣を拾う。見た目は普通の剣だが柄頭を取り出せるようになっていて、取り出すと筒に似た物がでてきて、その筒に魔石を入れることで剣は機能する。

 

 剣を拾ったついでに、暗殺者の遺体を確認した。

 暗殺者は魔物と共に行動した。それは明らかにおかしいのだ。

 普通ならば。

 それを知るために、暗殺者の顔を見て理解した。

 

 こいつ、確か魔法で魔物を操れた奴だな。

 魔法の中には、魔物を操ることができるものがある。

 ただ、かなり希少な上、強い魔物は操れないのが特徴だ。

 今回のように狼の魔物はそこまで強くないからこそ、操れたのだろう。

 

 魔物もそこまで強くない。騎士や騎士見習いでも対応できる。

 問題は、その影に暗殺者が動くことだ。

 それだけはこちらで対応しよう、そう決めた時状況は刻々と一変していた。

 戦いが広がっていくのだ。

 

 囲まれた? 

 魔物と暗殺者の襲撃により、他の所から人が集まりすぎた。

 それ故に他の部分が薄くなりそこを攻められたのだ。

 くそ、なら逃げ……。

 

 事前に騎士見習いと話していた通り、撤退しようと考えた時に先程暗殺者に斬られた騎士見習いを思い出した。

 あいつら、騎士見習いを狙っていたのはそれが理由か!!

 

 移動しながらの解毒、というのは難しいものがある。

 魔法ですぐに解毒する、というものではない。

 毒の種類にもよるが、時間のかかるものがあるのだ。

 もし影の国なら、解毒に時間のかかる毒を用意するはず。

 

 解毒している教師に聞いてみれば、案の定というべきか時間がかかるらしい。

 足止めを喰らった。敵の術中に嵌まった、というべきだろう。

 逃げることはできなくなった。

 ここで解毒を待つしかない。

 

 それでも、まだ狼の魔物や暗殺者ならなんとか対抗できる。

 暗殺者の質も低く、狼の魔物は弱い。これなら、まだ。

 そう考えていた。

 

 ドンッ! ドンッ! という小さな地響きが聞こえる。

 一つ一つは小さいが、集まれば地響きは大きくなっていった。

 なんだ?

 死神の足音に耳を傾けると、それはやってきた。

 

 熊の魔物だ。

 普通の熊よりも二回りほど大きく、爪はサーベルのように鋭く長い。赤い体毛は血で染まっているように汚い。

 熊の魔物の数は多く、横一列並んでいる。

 ざっとみても、十はくだらない。

 

 そう簡単には逃がしてくれないようだ。

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