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19話 遠征訓練 2

 翌日、朝は食事を食べ終えた後装備を整えて集まった。

 本当の意味で、遠征訓練が始まる。

 学生が中央に集まり、左に騎士、右に冒険者が並ぶ。

 遠征訓練を前に、教師が注意事項を述べる。

 

 ゼスティ大森林に入るのは、二手で分かれて行う。

 第一陣と第二陣。中層へは第一陣が、森の上層は第二陣が。

 森に行くまでの陣と全く一緒だ。

 高学年と騎士見習いの中でも一部優秀な者が多く入れたのが第一陣、第二陣が低学年。

 

 経験者の多い第一陣が色々と手馴れているため第一陣は中層まで行き、第二陣は低学年のため未経験者が多い為教えることもあるため上層だ。

 そのため薬草採取を依頼でしたりする冒険者が第二陣に多く、第一陣は中層と強い魔物もいるため騎士が多い。

 

 注意事項を前にまだ遠征訓練したことない学生達は緊張するように身体を硬直させ、上級生は慣れているためか自然な感じだ。

 教師の注意事項が終わり、次に騎士団長のフェルティオールの訓示を話す。

 

「まず、学生達よ。教師、上級生、騎士、冒険者達の言う事はちゃんと聞くように。分かっていると思うが、ここは学院ではない、外だ。何が起きるか分からない、死ぬかもしれない。だからこそ、貴族だからといって平民である冒険者の言う事も聞くように」


 これは昨夜の件を含めての事だ。

 学生だけでなく、騎士達にも伝えている。

 それが分かった時、フェルティオールと目が合う。

 口の端を上げ、微笑を浮かべたのが分かった。

 ただ、これはフェルティオールの訓示の理由を知るものぐらいしか分からない、それほど分かりにくいものだ。

 

 ありがとう、と感謝の念を込めて軽く頭を下げる。

 顔を上げるとフェルティオールは笑みを少し深め、言葉を続けた。

 

「私からは以上だ。学生諸君、励みたまえ」


 フェルティオールがその場から離れると、入れ替わるようにリンジャオが立った。

 

「冒険者として私からも一つ。失敗する事は間違いではありません、糧です。だから皆さんも今の内に何度も失敗して学んでいきましょう。ただ、この場でやってはいけない事が一つ。自分勝手に行動することです。その行動一つで自分の、仲間の命を危機に晒すことがあります。なので、皆さんは上級生や教師、騎士に私達冒険者の言葉には耳を貸すように。少し長くなりましたが、以上です」


 リンジャオはお辞儀をして離れる。

 騎士、冒険者の訓示が終わり、ゼスティ大森林の中に入る。

 今は森に入る陣形を組んでいる最中だ。

 一番先に入るのは第一陣。中層へ行くからである。

 それまで俺はお留守番だ。それでもやることはある、冒険者達と話を詰めようとしているとリンジャオが近づいてきた。

 

「これを」


 おもむろに渡してきたのはひし形の魔法道具だ。

 中に魔石が入っている。

 

「これは?」


「連絡手段です。離れても私と会話できます」


 そんな物を渡されれば、色々と勘ぐってしまう。

 

「これを渡す、ということは何か起きると?」


「起きなければいいですけどね」


 苦笑を浮かべるリンジャオ。全くその通りである。

 ただ、そう願っても相手はそんなこと気にせず問題を起こしてくるのだが。

 

「そうだな、起きなければいい。しかし、俺をこの遠征訓練に呼んだのは、もしかして何か起きるのが分かってか?」


 愚痴でも言うように、軽口を叩く。

 軽口を言わなければ、こんな状況やってられない。


「分かってたら、もう少し強い冒険者を用意しますよ。分かったのは依頼間近なんです。その時にはもう他の冒険者達は別の依頼を受けてまして」


「現場はいつも、大変だな」


「ええ、お互い様ですよ」


「最善を尽くそう」


「ええ、そちらも気を付けて」


 武運を祈り、リンジャオと別れる。

 別れた後、向かう先はフォン達の元だ。

 

「すまんが、第二陣の冒険者達を呼んでくれ。軽く説明をしたい」


 現在の状況で、影の国の暗殺者共を倒すことは無理だ。逆に殺されるくらいだ。

 それでも、やることはできる。予防策ぐらい張れる。

 暗殺者がいること、伝えた方がより彼らに対応してもらえるが。

 

 思い出すのは冒険者達の顔。

 あまり良い顔はしていなかった。入って一ヶ月の新参者が指示するのだ。

 良い顔するわけがない。信じてくれるかどうかも怪しい。

 それに、確証はないのだ。ここは言わないほうが良いだろう。

 

 フォンに集めてもらった冒険者の数は三十人ほど。

 彼らの中には、俺よりも早く冒険者になった者もいる。

 要は先輩だ。冒険者のランクで言えば一番下のDランクやCランクだ。

 フォンは長らく冒険者として働き、認められていることもあって彼らはかなりの信頼を有している。

 しかし、俺は違う。入ってまだ一ヶ月。彼らよりも後輩だ。

 

 だから、こちらに警戒心や敵意に近いものを感じる。

 まだ認められていない。そんな状態で説明しても、信用してもらえるかどうか分からない。

 認めてもらう方が先だ。

 

「集まって悪いけど、まずこの森での仲間分けをしたいと思う」


「そんなの、街道で護衛していた時のでいいだろ」


 敵意剥き出しの声が冒険者の中から上がる。

 確かに、俺も何もないのならそれでいいと思う。

 しかし、森の中には敵が魔物だけではない。そういう訳にはいかなくなった。

 

「そうなんだが、生憎とそういう訳にはいかない。冒険者の中に一人で参加しているのがいるだろ?」


 確か、四人五人だったか。一人で参加した冒険者は頷ている。

 

「彼らには悪いが、即席のパーティーを組んでほしい」


 その言葉を聞いて、一瞬だけ嫌な顔を浮かべた。

 たしかにその気持ちは分かる。

 理由があって、一人で参加したのだろう。しかし、この場ではパーティーを組むことで互いに協力してほしいのだ。

 

「特に難しいことは言わない。互いにできることをして、危ない仲間をカバーするだけでいい」


 暗殺者は隙を狙う。そして、死角から殺しにかかる。

 その死角をカバーするためにも、仲間は近くに複数いてほしい。

 

「臨時パーティーは冒険者なら慣れているだろ? 頼む」


 これが騎士だったら、見知らぬ人間と組んでも連携が取れないだろう。

 冒険者なら臨時でパーティーを組むこともあり、慣れているはずだ。

 

「そして俺がフォンの補佐を務めているわけだが、それに不満を持つ者がいるのは分かっている。それでも信じてほしい。俺ではなく、補佐として選んだフォンの事を信じてほしい」


 フォンは照れ臭そうな顔をしているが、堂々としていた。

 他の冒険者も俺の言葉に納得したのか、フォンを信じたのか分からない。だが、彼らからの敵意が幾分か薄くなったのは感じる。

 これは、フォンの人徳のおかげかな?

 

 冒険者のパーティー分けは終わった。後は騎士と学生だが、騎士はぶっちゃけどうなってもいい。

 あんな敵意を向ける相手、死のうが生きようがどっちだって構わないが、学生はどうにかしたいと思う。

 

「ちょっと学生と話してくる。フォンは他の奴と一緒にいつでも動けるように準備を頼む」


「ああ、任せろ」


 フォンに任せれば、冒険者側は大丈夫だ。あとは騎士……はどうでもいいか、学生側をどうにかしたい。

 学生達は準備を整えている最中で、バラバラに動いている。

 近くにいる学生に遠征訓練前に、集まって話した騎士見習いの上級生がどこにいるか教えてもらう。

 色々あって、別の学生に案内されて騎士見習いの上級生はいた。

 教師と何やら話し合っている最中だ。

 

「邪魔をしてすまない。遠征訓練での事で少し話をしたい」


「ええ。こちらも話をしたいと思っていたところです」


 騎士見習いの上級生が教師に謝り、こちらに寄ってくる。

 

「ゼスティ大森林での進行なんだが、こちらに来る時と同じ陣形にしたいと思う」


 この狙いは二つ。一つは前の騎士を囮にすること。そしてもう一つは騎士の機嫌を保つためだ。

 騎士はめんどくさい。それは遠征訓練の朝の打ち合わせで分かった。

 あれは駄目だ。機嫌を損ねたら何が何でも妨害してきそうだ。

 

「ただ、もし魔物からの襲撃があって処理できる数じゃなくなった場合、撤退したい。いいか?」


「今の内に決めるんですか? 臨機応変に対応するのが普通ですが」


「ああ、今の内に決める。襲撃が着たら下がる。いいな?」


「分かり、ました」


 不承不承という感じで騎士見習いの上級生は頷いた。

 暗殺者が来るのが分かって、誰が森で戦いたいのか。

 死角の多い森よりも、この開けた地で戦った方がまだマシだ。

 騎士がもし森で戦う選択をした場合、冒険者と学生の両者が下がれば騎士も下がざるおえないはず。


 賭けに近いが、出来る手はうちたい。

 学生との話が終わり、冒険者が集まっている場所に向かう。

 フォンにお願いした通り、準備は既に終えつつある。

 第一陣ももうそろそろ出発の段階で、最後にリンジャオ達を送り出して彼らは森へ向かった。

 

 中層の魔物じゃあ、彼ら第二陣の敵ではない。オーバーキルだ。しかし、これに暗殺者が加わるとどうなるか、予想ができない。

 こちらも準備をしないといけない。といっても、特にこれといったやることはないが。

 

 武器や防具の点検、道具の数。

 確認作業をしていると、隣で一緒に確認作業をしているライアンから話しかけられる。

 

「夜番していた時に聞いたんだが、魔法学院に王族がいるらしいぞ」


「王族?」


「ああ、その王族も遠征訓練に参加して薬草採取するんだから大変だよな」


「そう、だな。うん」


 唐突だった、初耳でもある。

 王族がいたなんて情報、今まで聞いたことがない。その情報源もないのだから、知らないのは当然だが。

 そうか、王族がいるのか。と頭の片隅で考えながら作業をしていると、ふと思い出す。

 王族、という単語がそれを連想させた。

 

 そういえば、フィルは確か城に住んでいると言っていたけど……。

 冒険者になってすぐのことだ。怪しい二人組を倒してみると、彼らは誘拐犯だった。

 一人の幼女、フィルという名で城に住んでいると指差す。

 それで王族だと分かったのだが……。

 

 考えすぎだな、と一つの悪い予想を振り払う。

 まずは目の前の仕事だ、と集中したい。

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