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17話 協力関係と裏側

 再び冒険者ギルドに戻って来た。

 場所は前と同じ、冒険者ギルドのロードリアンと会った部屋でもう一度会う。

 部屋にはロードリアンの他にも、見知らぬ幼い少女とリンジャオ、まだ気絶しているフォーリンがいる。

 見知らぬ幼い少女は見た目の割に大人っぽい洋服を着ていて、どこかアンバランスな感じであった。

 この三人が、面会の時に見ていたのだろう。

 

「それで、償いとはなんだ?」


 ここに呼ばれた理由はフォーリンが襲ってきたのが理由だ。その当の本人は気絶中だが、早めにその面談を終わらせたい。

 ライアンが待ってくれているのだ、あまり時間をかけることはできない。

 

「まずはフォーリンが襲ったことを謝りたい」


 椅子に植わるロードリアンが座ったまま頭を下げる。

 同じように、周りのリンジャオや幼女も頭を下げた。

 

「本当に申し訳ない」


「襲ったのは問題だが……あれはどうにかできるのか?」


 気絶しているフォーリンに視線を向ける。

 ただ本能の赴くまま戦いを挑んだのだ。それがどれだけ危険な事か。

 殺されるかもしれないし、殺さなくても問題になる。

 その問題を起こさないためにも、あれを制御する人間が必要だが制御できるのだろうか? 暴走列車に近い。

 

 そういう意図を含めての言葉だったのだが、ロードリアンは頷いた。


「そこは任せてほしい。ちゃんと保護者を用意している」


 視線の先にはリンジャオがいた。

 目線を合わせないように顔を逸らし、嫌な顔をしている。やりたくない仕事だが、上からの命令は従うしかない。

 その悲しみは暗殺教団に入っていたからこそ分かる。同情する。

 

「それはまた……頑張ってくれ」


「ああ、なんとか頑張るさ」


 その声には哀愁と疲労が感じ取れた。

 

「話を戻すが、償いとして次に報酬だ」


「報酬? 金か?」


 一番最初に頭に思い浮かんだのはお金だからだ。

 それ以外に思い浮かぶものとして、物。ただ、基本的に必要な物もないし欲しいものもない。

 お金に関しては、暗殺でかなり溜まっている。

 

「いや、他に欲しいものがあるだろ? 金や物以外に」


 確かに、欲しいものはある。安全だ。

 暗殺者が暗殺者をやめれば、待っている未来は暗殺だ。

 恨み、口封じ、etc.

 殺される理由はいくつかあるが、ロードリアンギルドマスターがそんな風に言うとは思えない。

 

 会って間もないが、直感がそう囁く。

 言うならストレートに言うだろう。まるで、相手に言わせるような感じに言うとは思えない。

 それに、ここに来る前にリンジャオとの会話もある。

 思いつくのは一つだ。

 

「リンジャオさんの思い付きか」


 目を向けると、ニコッと笑みを浮かべる。

 口にはしないつもりらしいが、正解だろう。

 

「確かに、欲しいものはある。まずは安全」


 ただそれ以上に欲しいものがある。

 これを伝えないことには、永遠と暗殺の依頼が舞い込んでくるはずだ。

 

「俺はもう暗殺をしたくない。だから、これ以上暗殺の依頼を出さないようにしてほしい」


「もし破ったら?」


「この国から抜ける。それぐらい俺は本気だ」


 暗殺者を辞めるために教団から抜けた。それでも他国から暗殺しろ、と催促されるぐらいならそいつらを殺す。

 催促されなくなるまで、全員殺す。今まで殺してきたんだ、殺すことに躊躇はない。

 平和な未来があるのなら。

 

「分かった。カインに暗殺の依頼が来ないように手配しよう」


「お願いするよ。いつかは国の偉い人間と交流がありそうだし」


「そうならないことを願うね」


 けど俺、この国のお城の偉い人と既に会ってるんだよな~。

 脳裏にフィルの顔が思い浮かぶ。

 俺も願うばかりだ、口にはしないがそんなことを思いながら部屋から出ていく。

 

 

 

「お疲れ様です」


 カインがこの部屋からでていくのを見て、リンジャオは言葉を漏らす。

 本当にお疲れ様、という言葉しか見当たらない。

 戦闘狂のせいでいらぬ会話、というわけではないがやる予定のない会話にやる予定のなかった契約。

 今まで以上にするべき仕事が増えた。

 

「暗殺の依頼をしたくない、ということですけどどうします?」


「しないように手配すればいい。そもそも、あれが影の王だと知られていないわけだし、そのままばれないようにすればいいだけだ」


「しかし、フォーリンのこともありますよ。彼女も有名になったことで王に名を覚えられました。彼も影の王と呼ばれているんです、いずれ有名になると思いますよ」


 その言葉に、ロードリアンはガックリと崩れ落ちて机の上で目を覆う。

 可能性として、考えてはいたらしい。

 

「そうなんだよな。どうしたものか」


「一先ず、王の文官辺りに伝えた方がいいと思います。第一王子辺りが有力だと思います」


「ああ、そうだな。まずはそっちの方に手を回しておくか」


 うちの王様、あれだからな~。

 前回会った王の第一印象が脳裏に浮かぶ。

 良く言えば、周りの人の言葉をよく聞く。

 悪く言えば、流されやすい。自分の意見を持たない、考え無し。

 苦労するのも当然か。

 ロードリアンギルドマスターに、静かに黙祷した。

 

 

 

 某国。

 明かりはほんのりと部屋を照らし、僅かに顔が見える程度。

 大きな黒い円卓には八人の男性が等間隔に座っていて、どれも初老に近い者や既に超えている者すらいる。

 彼ら、評議員はとある事で集められた。

 

「それでは報告させていただきます」


 既に集まっている円卓の外から九人目の女性が円卓に近づき、報告を始める。

 手には書類を。服は黒が基調のメイド服とこの場ではあまりに場違いな恰好。

 白銀の長い髪が頭の両側上部で二つに束ね、垂らしている。

 青い冷たい目に冷酷な顔、近寄りがたい雰囲気と話しかけにくい、という印象を与えた。

 そんな彼女が無表情で報告を始める。

 

「まず第一ですが、目標であったローリッヒ王国のフィラルシア第三王女の誘拐は失敗に終わりました」


 その言葉に評議員の空気が怒気に包まれるのを感じた。

 

「何故だッ! 何故失敗した!!」


 その場を代表するように白髪の混じった老人が憤る。目は血走り、眉間に皺を寄せる。

 そのまま高血圧で死ねばいいのに。

 メイドが老人を睨みつけながらそんなことを思う。

 

「失敗する仕事ではない、そう言ったのはお前だろ!」


 私ではない。そう自負したのは別の評議員でしょうが。

 そんな言葉を漏らしたい気持ちにはなるが、漏らしてもこの場が解決することはないのは知っている。

 だからやる事は一つ。その別の評議員を睨みつけることだ。

 その別の評議員は睨み付けられている事と仕事の失敗を聞いて、顔を青くしていた。

 

「どうするんだ! この事が皇帝陛下に知られたら」


 憤った老人は顔は赤から青に染める。

 その顔には絶望の色が見え、その理由はさっすることができた。

 彼らが何人目の評議員だろうか? 失敗すれば、それを償うのは命だ。

 早く死ねばいいのに。

 しかし、感情とは裏腹に仕事をこなさないといけないのは誰もが同じだ。

 

「どうして失敗したんですか?」


 別の評議員がこの誰もが粛清で恐れた空気を進ませるために声を上げる。

 

「誘拐には成功しました、万事つつがなく。高価な魔法道具も持たせ、町の外まで運ぼうとしましたが邪魔が入りました」


「邪魔した者が誰か、分かりますか?」


 評議員の目が一点に集まるのを感じる。

 切望の目だ。

 

「いえ。調べている所ですが、情報が入ってきておりません。足が付かないように動いているのか、今の所分かっておりません」


「チッ! 無能が」


 舌打ちが耳に入る。

 ただ椅子に座る無能には言われたくない。

 殺気が一瞬だけ迸るが、すぐに冷静さを取り戻す。

 

「そこで第二プランを取ります」


「第二プラン?」


 彼ら、評議員は第二プランなど聞いた覚えがない。

 故に眉間に皺を寄せて戸惑いの表情を見せた。

 

「はい。フィラルシア第三王女ではなく、別の標的を狙います。その標的は都合よく、町の外に出るようです。なのでそこを突きます」


「今回は上手くいくのかね」


 失敗はしないのか? という言葉が隠れているのは誰でも分かった。

 

「護衛がいますし、こちらを掴まれるわけにはいかないため戦力は少数しか出せませんが、とある暗殺集団を雇うことができました」


「暗殺集団?」


「はい、影の国です」


 おお、と評議員から歓喜の声が漏れる。

 影の国の暗殺率は極めて高い。そのため、彼らが参加すると聞けば誰もが喜ぶ。

 今回は失敗しない、と安心しきった評議員達は先程まで心理的な負担から解放されるためか酒を飲み始める。

 

 それを見ると、馬鹿者共がという言葉が心の中で漏れた。

 今回も駄目だな。全員消去か、幾人か残すか。

 消去法で使えそうな人間を選別していく。その中でふと思う。

 

 そういえば、よく影の国はこちらに声をかけてきましたね。まさか、あちらから協力の表明を出すとは思ってみませんでした。あっちで、何かあったかもしれませんね。

 

 カインの知らぬ所で進んでいく。そして遠征訓練まで進む。

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