15話 面談
今日も今日とて薬草採取。何せ金払いがいい。
薬草採取を嫌がっていたライアンですら、喜々としてやるほどだ。
ここ最近、お金が溜まったらしく宿が馬小屋から少しボロイ宿にグレードアップしたらしい。
今日も同じように、薬草採取に行こうとするが呼び止められてしまった。
「ロードリアンギルドマスターがカインさんをお呼びです。申し訳ありませんが、私の後について来てもらえませんか?」
言葉的に拒否権もないらしい。
「何かやらかしたか?」
ライアンが心配してくれるが、何かしたような記憶がない。
「した覚えはないんだがな、まあちょっと行ってくるよ。先に行っといてくれ」
「ああ。門前で待っとくから早く終わらせろよ」
「ああ、すまん」
職員がカウンターから離れ、二階に上がっていく。その後をついて行く。
二階に上り、奥へ進んで一番奥の一つ手前の扉に向かった。
「どうぞ、お入りください」
職員が扉を開けると、そこは長机に幾つもの椅子が対になるように並んでいる。
その向かい側の椅子に一人の男が座っていた。
見た目は五十代から六十代ぐらいおっさんがいる。
かなりの歳を取っている割には鍛えられた肉体をしていて、人を殴り殺せるんじゃないかと思うほどだ。
いかつい顔つきで一目見たら恐怖で少しのけぞるだろう。俺は暗殺業に身を置いたから慣れてだけど。
歳のせいか白髪でモヒカンのような髪型。明らかに武闘派、そんな男が俺に何の用だ?
「では、私はこれで」
扉を開けてくれた職員がお辞儀をし、扉を閉めて去っていった。
これで、この部屋は二人っきり──。
ふむ、見られてるな。
ビシビシと視線を感じる。
部屋に入って来た当初から感じた視線は、天井。隣の部屋、そしてギルドマスターのさらに奥。
視線を感じる場所に顔を向けた。
そこには当然の事ながら人はいない。
見られているのは気のせい? いや、自分の感覚を大事にしよう。
さて、どう行動するべきか。
まず第一前提として、俺が影の王とバレているのかが大切だ。
一当てすることにした。
「本日の要件はどんな御用で? 暗殺の依頼ですか?」
「いや、今日の要件は別だ」
キッパリと断られてしまった。ただ、分かったことがある。
既に影の王だというのはバレている。何より、暗殺と聞いて狼狽えなかった。
もし知らなかったら、暗殺という言葉に眉をひそめていただろう。
だが、ひそめなかった。暗殺という言葉は否定しなかった。
念のため、逃げ道を考えていた方が良いか。
暗殺という家業のせいで、恨みから命を狙われることがある。だから、もしかしたら今回は騙し討ちという可能性もある。そこも考慮したい。
それに、隣の壁から殺気を感じるのだ、いつ襲われてもいいよう臨戦態勢だけは整ておこう。
「まずは自己紹介をしよう。私はこの冒険者ギルドのギルドマスターを務めるロードリアンだ」
「カインです。よろしくお願いします」
「知っているとも。登録した時の書類を見たからな」
登録? という言葉が脳裏を掠めた時、どうして影の王だとばれたのか理解した。
そういや、最初の登録の時に隠密魔法をバレてたな。
それでも登録してからかなりの時間がかかったけど、何故だ?
それはまず、登録した職員が影の王について詳しくなかった事。そしてそれを知ったのが書類を見た時だということをカインは知らない。
「今日呼んだのはその、なんだ、頼みがあるんだ」
こういう場合の頼みは、大抵強制だ。
ロードリアンギルドマスターの言葉には重みがある。言葉を選び、どうやって伝えるかという気づかいが見える。
こちらの先手に動揺したようには見えないが、内心動揺しているのかもしれない。
もしかしたら、暗殺という言葉に何かしらの考えを読み取ったのか。
「頼みとは? どういったものかによって、力を貸せるか変わりますが」
「魔法学院からとある依頼がきている。遠征訓練の護衛だ。現在、護衛する冒険者を探している所なんだが、もしよければ参加してくれないか?」
護衛の参加、その言葉が正しければ願ったり叶ったりだ。
フォンから話は聞いていた。金払いは良いらしいから、参加したい所だ。
それに、参加できない場合に備えて護衛依頼があるからとわざわざこの町から離れないといけなかった。
そのための出費もしないといけないから、参加できるのにこしたことはない。
ただ、本当に相手の言葉を信用していいのだろうか?
もしかしたら、別の場所に誘導して暗殺かもしれない。
そう考えると、巻き添えを喰らうライアンも酷い目に合う。
ネガティブな思考だが、今までそういうことをしてきたのだから
しょうがない。
相手の言葉を信用できる証拠がほしい所だ。
「参加するのは構わないですが、どうして私なんです? 他にも人はいるでしょう?」
「ああ、いるとも。だが、全員を招集することはできない。他にやるべき仕事がある。今欲しいのは有能な人材だ」
短くもなく、長くもない言葉。それでもどうして呼んだのかは理解した。
要は人材不足ということだ。便利な手足に仕事を与えて、他の仕事ができない状況なのだろう。
「分かりました。お引き受けします」
その言葉を聞いて、ロードリアンギルドマスターはホッと安堵の顔を浮かべている。
断られる事を考えていたのかもしれない。
こんなにも顔にでるのだ、腹芸ができるとは思えない。
安堵の顔とは裏腹に、腹の内側黒一色というイメージができないのだ。
言葉を正直に受け取っていいだろう。ただ、用心にこしたことはない。
「では、私はこれで。依頼を受けておりますので」
まずはライアンに護衛の依頼があることを伝えないと。あとは殺されることも考えての準備が必要か。
これからの事を考えながら、部屋を出た。
カインが完全に部屋を出て数秒、ロードリアンは緊張の糸が切れて引き締まっていた顔が緩む。
「終わったか」
声に疲労の糸が見て取れた。
凄く張り詰めた部屋だった。短い時間であるが、ここまで疲れるのはあまり経験がない。
「お疲れぇ、大丈夫? 元気ドリンク、飲む?」
「お前のドリンクは意味不明な物が入りすぎて怖いから嫌だ」
背後からちぇッと可愛い舌打ちをするテリアスの言葉に、ロードリアンは少しばかり救われる。
入り詰めていた空間だからこそ、こういう軽口は嬉しいものだ。
まあ、本人はそんなこと考えず本当に飲ませようとして落ち込んでいるが。
「お疲れ様でした。ギルドマスター」
天井の一部がどかされると同時に、リンジャオが降りてきた。
「本当だよ。こんな張り詰めた部屋で話し合うなんて、もう御免だぞ」
「いやあ、すいません。まさか部屋に入ってすぐにバレるとは思わなかったもので」
アハハ、と乾いた笑いをリンジャオを浮かべる。
部屋に入ってすぐ、カインは壁や天井、俺の後ろに視線を向けた。
その場所には雷鳴の剣のメンバーを隠していた場所だ。
フォーリンは隣の部屋、リンジャオが天井裏、テリアスが後ろに。
すぐにバレたせいで、カインは警戒する素振りを見せ三人もその反応に気を引き締めていた。
特に、フォーリンは殺気を漏らしていたのが酷い。
そのせいでカインも戦闘状態に移行したのは目に見えて分かった。
だから言葉で張り詰めた空気を戻そうとしたのだ。
「テリアス。もう魔法で姿を隠すのはやめていいよ」
「うんぅ~」
彼女は魔法を解除し、姿を現した。
「そういえば、フォーリンはどうした? 姿を見せないが」
二人は姿を現したのに、一切姿を見せないフォーリンが何をしているのか疑問を感じたが二人も知らないらしい。
いつもなら、すぐにやってくるようなはずなのに、おかしいこともあるものだ。
「少し探してきます」
リンジャオの顔が勇ましくなる。何かを感じたのだろう。
「どうした、何があった?」
「いえ、分かりません。けど、嫌な予感がするのです」
冒険者の勘は馬鹿にできない。向かわせることにした。
「何もなければいいが」
思わず出た言葉。リンジャオの勘が的中しなければいいと願うしかない。
「大丈夫ですよぉ、ギルドマスター。フォーリンが動いた場合、基本面倒しか起きないので、備えはしときましょう」
「ちょっ待て! それは大丈夫じゃない!」
優しい顔で毒をテリアスに、ロードリアンは慌てふためいた。
もはや本当に願うしかない。何もないことを。
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明日の分を間違えて投稿してしまったので、明日の分はないです。すみません




