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10話 初めての依頼1

 冒険者になったといってもすぐにできるわけじゃない。

 依頼をするために準備する物や気を付けないといけない事、色々と必要になるはずだ。

 だから、それを先輩であるフォンに頼んで教えてもらうことにした。

 

「まず、受けたい依頼だな。選ぶ基準は依頼の内容、報酬、あとは場所だな」


 ここらへんは暗殺と似ている。

 暗殺する対象、あとは報酬ぐらいか。場所も、大ざっばであるが町などで決まっている。さて、どんな依頼を受けるべきか。

 依頼は魔物退治と薬草の採取。

 魔物はゴブリンが多い。王都ということもあって、魔物がそこまでいないのかもしれない。

 薬草は、採取の量によって報酬が上乗せされる。

 

「ライアンはどんな依頼を受けたい?」


 候補にでも、と思い聞いてみた。

 

「討伐だッ! 何よりも、お金が欲しい」


 キッパリと断言された。

 しかし、お金が欲しいなら効率として薬草の採取のほうが良いはずだ。

 

「お金が欲しいなら薬草採取でしょ。取る分だけ報酬が増えるし、そっちのが方が良いと思うんだが」


「いや、討伐だ。そんなめんどっちい事やる必要ない」


 ただの好き嫌いだった。

 まあ、本人が嫌だというなら魔物討伐にするか。

 依頼を魔物討伐限定にすると、あるのはゴブリンぐらいしかない。

 

「いつもだったら、他の魔物の依頼もあるんだけどな~」


 フォンが依頼を物色しながら、聞えるように呟いている。

 時間帯が悪いのかもしれない。

 

「ラクリマ、依頼は何をする?」


「それなんですが……」


 フォンのパーティーも依頼を探しているようだ。

 元々探しているのだから当たり前か。こっちが邪魔しただけだし。

 あるのはゴブリン討伐の依頼だけ。あとは場所か。

 ……村の場所なんて分からねえよ。

 

「村の場所が分からない時はどうするんだ?」


「そこら辺は依頼を受けた時に教えてくれる。あとは、受付の人間に聞けば色々と聞けるぞ」


「俺、受付の人に教えてもらうわ」


 ライアンはそう言って颯爽と受付の方へ向かう。

 一緒に行ってもいいが、自主的に行ってるんだし任せるとしようか。

 彼が依頼を決める間、こっちは掲示板のほうは眺める。

 

「おーい、決まったぞ」


 待つ事、三分ほどだろうか? ライアンから話しかけられた。

 掲示板を見ていたためか、それほど時間が経っていることを感じない。

 

「ゴブリンだ!」


「それは知ってる。で、場所は?」


「近くの村だ。二の刻ぐらいで歩けば着くらしい。そこに行こう」


 二つの刻、というと二時間ということか。そこまで時間はかからないかな。


「ああ、分かった。となると、出発は明日か」


「頑張ろうぜ!」


 初の依頼ということもあって、ライアンは非常に興奮している。

 俺も初依頼ではあるが、そこまで興奮はしていない。

 

「決まったようだな」


 フォンがこちらに寄ってくる。

 彼がいてくれたおかげで、不安な事もあったが助かった。感謝しかない。

 

「ああ。あとは何か必要なものがあるか?」


「う~ん、ポーションぐらいか? ギルドで買えるぞ」


「そうなんだ。なら、買ってみようかな」


 依頼を受付とはまた別の、物を購入する用の受付があるらしく、そこで一番安いポーションを五つほど買う。

 値段は一個が一〇〇リルとお手頃で、それ相応の質ということだろう。

 ついでに、松脂の染み込んだ布も幾つか買っておく。

 買ったポーションの一つはライアンへ渡す。

 

「ほれ、持っとけ。咄嗟に使う時のために一つは自分で持っておくべきだ」


「おう、ありがと」


 受け取ったライアンはそれを腰の小さな鞄に仕舞う。

 残りは影収納で仕舞おうと思う。便利ではあるのだが、どれが分からないという欠点があるため一個ぐらいは持っていてほしい。

 こっちの買い物が無事に終わると、フォン達が受付で何やら職員と話して去っていく。

 もしかしたら、依頼を決めたのかもしれない。感謝のお礼もあるため、ライアンと一緒にフォンの方へ向かう。

 

「そっちも依頼を決めたのか?」


「ああ。こっちは薬草の採取でもして軽く仕事をして休もうと思う。前の依頼の報酬がまだ残っているからな」


「そうか、分かった。本当にありがとうな」


「気にするな。こちらも助けられてばっかりだしな、これでこっちの借りを少しでも返したい所だ」


 借り、というのはワイバーンを倒した時の事だろうか?

 あのことはそれほど気にしなくていいのに。こっちはただ居合わせただけだし、俺も襲われそうになったのだから自衛するのは当然だ。

 しかし、その事を借りだと思ってくれているのなら、少し利用したい。

 

 フォンの隣にまで近づき、小声で話す。

 

「もし、まだ借りを返したいというなら少しお願いがある」


「なんだ?」


 こちらの意図を汲んでか、小声で話してくれる。


「俺が冒険者としてあまり仕事できないときは、ライアンと一緒に仕事をしてくれないか?」


 ここでフォンのパーティーと会えたのは、ある意味僥倖と言える。

 俺は定職に就ければ、冒険者を極力はやらない事にしている。そうなれば、ライアンは一人しかいない。

 誰かと組む必要がある。俺の代わりに、組むのであれば知り合いで信用できるのはフォン達ぐらいだ。

 

「分かった。その時は協力するよ」


「助かる。それじゃあ、ライアン行くぞ」


 俺はライアンを連れて冒険者ギルドから出る。


「分かったが、何の話をしてたんだ?」


「ん? ちょっとしたお願い事だ」




 翌日、村へ向かって出発する。

 出発したのは朝。町の到着も考えて、早めの出発だ。

 町を出る時は、冒険者の認識票を見せれば出る事ができた。

 ライアンを先頭にして移動を開始する。

 

 冒険者ギルドの職員が教えたのはライアンだ。彼が先導しなければどうしようもできない。

 

「フォーメーションはどうする?」


 街道沿いに歩きながら、ライアンが尋ねてくる。

 

「当然、俺は前衛だ!」


 右拳で胸を叩くライアン。

 長槍であれば後衛も務めることはできるかもしれないが、本人の性格からもして前衛だろう。

 なら、俺はその支援か。まあ、前出て戦うという性格でもないし。

 

「分かった。俺はその支援をするよ」


「助かるぜ」


 俺とライアンはそのまま街道沿いを進んでいると道が二手に分かれ、左の方へ進む。

 そのまま進むと大きな森があり、それを迂回するようにある街道がグネグネと曲がりくねっている。

 その道を進み、約二時間ほどで村へ着く。

 着いた頃には日が真上にまで上っている。

 

 村は一般的な村。八つぐらいある木の家は点々とあり、その間には大きな畑や小さな畑がある。村の周りは木の柵が一部分だけがあり、魔物や野生動物が村に入ってこないようにするためだろう。

 柵も雨や風で朽ちるため、残っているのが一部分ということだろうか?

 

 そんなことを考えながらライアンと一緒に行動していると、村に入った事で農作業している村人が気づいて進む先へ走っていくのが見えた。

 俺とライアンの見た目は明らかに冒険者だ。その事に気づいて、依頼主のもとに向かったのだろう。

 歩いたさきにあるのは村の中で一番大きな家の前に辿り着く。

 

「ここか?」


「ああ。大きな家と言っていたからな」


 コンコン、とライアンが家の戸をノックする。

 

「冒険者だ、依頼を聞いてこっちに来た。誰かいないか!」


 ノックしてすぐ、扉が開かれた。

 

「お待ちしておりました」


 開けてくれたのは腰の曲がったお年寄りの男性であった。

 依頼主であるこの男性、村の村長らしく家の中に案内してもらう。

 リビングの椅子に座り、今回の依頼のことについて話す。

 依頼の内容はゴブリンなのだが、まずどこにいるかが分からない。

 

 ゴブリンだと分かったのも放牧していた鳥が夜中に襲われ、その鳥の悲鳴に慌てて起き上がて行ってみるとゴブリンであった。何とか撃退はしたが、二度三度来ると困るということでお願いしたという事。

 

 一先ず問題なのはゴブリンの居場所が分からない事。この村の近くには森があり、隠れる場所は十分にある。

 狩人がいるならば、この森の情報を教えてもらいつつそれらしい場所を探したい。

 

「この村に狩人はいます?」


「ええ、いますとも」


 いるのか、良かった。なら、比較的楽ができるかも。

 

「なら、協力してほしいのですけど」


「分かりました。うちの息子に案内させましょう」


「助かります」


 よし! これでゴブリンの場所を探すのは楽ができる。

 しかし、一日で終わるかが問題だな。まだ見つけていないし、どうなることやら。

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