表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まだなし。  作者: 板橋稍梧
2/2

謎の少年との出会い。


 老人が管理しているという世界に生まれ変わってからもう九年の時が過ぎようとしていた。

 時折自分の力を試すために小型モンスターの巣に行って暴れたりしているが、長閑で平和な生活を送っている。

 だが、そんな平和な生活はある一人の少年との出会いによって変化していく事となった。


 「ロイ、友達が来てるぞ。」


 「友達……?」


 畑仕事から帰ってきた父の言葉に疑問符を浮かべながら玄関に行くとそこには誰も居なかった。

 まだボケるには早い年齢だと記憶しているがまさかボケたのかと頭を捻って振り返ると壁にもたれ掛かってこちらを見ている自分と同年代に見える黒髪の少年と目が逢った。


 「やぁ少年。僕の名前はガイド、以後お見知りおきを」


 大仰な仕草と恭しいお辞儀でガイドと名乗った少年からは言い知れぬ不安と怪しさが漂う。

 懐疑的な視線を向けられたガイドは肩を竦めて大げさに首を振った、そういう仕草が余計に不審さを増しているのだが本人は真面目にやっているのだろうから後でやんわりと注意してみよう。


 「それで、何の用なんだ?俺はお前みたいな怪しいやつを友達に持った覚えないけど。あと、少年はやめろ同い年だろ?きっと。」


 「それは失礼。ではロイ君と呼ぶよ。それから、僕の目的は君を導く事だ。」


 やはり仕草が一々大仰だ。大げさに振舞わないといけない病気にでも罹っているのかもしれない……それにしても導くとは何だろうか?


 「導く……?どこに?」


 「決まっているじゃないか。君に待っている輝かしき未来に、さ。」


 変なやつに目を付けられてしまった、とこの時は思ったがガイドの言葉は嘘ではないと未来で知る事になる。とはいえ、こんなヤバいやつを近くに置いておくのは嫌なので適当に会話を切り上げ家の中に引っ込むことにした。


 「あー、そうなのか……分かった。じゃあそういう事で」


 「待ちたまえ。ロイ君。」


 後ろを向いた自分の肩をガイドが掴んだ、振り払おうとしたが思いのほか強く掴まれていて振りほどけなかったので面倒になってそのまま引き摺っていく。


 「力が、強いな……!悪いが帰る所がないのでね、君の家に住まわせてくれないかな?」


 「断る、部屋が狭くなるだろ!」


 そんな自分達のやり取りを見ていたのか昼食の準備をしていた母が調理場から顔を出して会話に加わってきた。

 いい人なのだがどこか抜けているというか母親に対して言うのはあまり良くないが人を疑う事を知らない善性の塊のような人で、もう少し人を疑う事を覚えてほしいものだ。


 「いいじゃない、部屋ならロイの隣が空いているからそこを使って?」


 「ありがとうございます、流石はロイ君のお母上。……では、お世話になるよロイ君。」


 母の言葉に恭しく礼をしたと思ったらこちらの肩を二三度軽く叩いて満足そうに宛がわれた部屋へと向かっていった。面倒なやつが住み着いてしまった、あれを毎日相手にしないといけないと思うと憂鬱だ。母に恨めし気な視線を送るが嬉しそうに鼻歌交じりで調理場に戻っていった、あれは息子に友達ができたと本気で喜んでいる顔だ……そっとしておこう。


 昼食を取った後部屋でのんびりしていると早速ガイドがやってきた、こちらには用事がないので露骨に嫌そうな顔をしてやると乾いた笑いを浮かべ部屋の入り口の壁にもたれ掛かった。


 「どうやら僕は嫌われているようだね。」


 「分かってるなら、居座るなよ……。」


 ベットに寝転がりながらなるべくガイドの姿を視界に入れないようにしつつ街で借りてきた本を読む。この世界の事を知るのはとても面白い、元の世界とは違って魔力と呼ばれるエネルギーが存在するしそれによって変質した動物、魔物が存在しているのだ。この世界の事を知れば知るほど興味が湧いてくる不思議な世界だ。


 「随分と楽しそうだ、そんなに世界の仕組みを読み解くのは面白いかい?」


 「まぁな。というかずっと居る気か?自分の部屋に戻れよ。」


 自分のそっけない物言いに肩を竦めたガイドが移動を開始した。

 帰るのかと思ってその動向を見守っていると窓際に移動しただけだった。

 その顔は外、と言うよりかはどこか遠くを見ているようでどこか寂しげでもある。だからと言って同情する気はないが。


 「僕はねロイ君、あの老人に君を見守って導いてほしいと頼まれているんだ。」


 「転生後のアフターケアまでばっちりか……ちょっと過保護過ぎないか?」


 この世界の管理者を名乗る老人の甲斐甲斐しさに呆れつつも悪い気はしない、しかしガイドがあの老人の知り合いとは驚きだ……という事はガイドも神様とかそういう類なのだろうか?聞いてみようかどうしようか悩みながら見ていたらその視線に気が付いたらしいガイドは顔を少しだけこちらに向けた。


 「残念だが僕はただの人間だ。けれど僕の一族は少し変わった役目を担っていてね、その役目を遂行させる道具を渡す為だけにあの老人は態々人間界までやって来るのさ。」


 「輝かしき未来へ導くってやつか……。」


 その言葉にガイドは頷き、言葉を続けた。


 「そういう訳だから諦めてくれ、僕はどんな手を使ってでもこの本に記された未来に君を導かなければならないんだ。」


 ガイドは懐から大きな本を取り出して真っ直ぐにこちらを見つめ真剣に言葉を紡いだ。その決意の固さや瞳の強さに本当に今の自分と同じ年なのか?とか、実は中身大人なんじゃないか?とか様々な疑問が頭を駆け巡ったが彼の思いは確かに伝わったので邪険にするのはもうやめる。


 「分かった、諦めるよ。これからよろしくな、ガイド。」


 「あぁ、改めてよろしくロイ君。」


 こちらが差し出した手をしっかりと握り返したガイド。こういうのが友情の始まりというやつなのだろうか?そう考えると少し気恥ずかしくなってぶっきらぼうに手を振り払った。


 「いつまで握ってるんだよ!」


 「すまない、同年代の友人というのは初めてでね。勝手がわからないんだ。」


 嫌な共通点を見つけてしまった。

 その後、なんだかんだと居座り続けたガイドと共に本を読んだりして時間は過ぎていった。



 翌日、父と一緒に出かけた狩りから帰ってくると朝食の準備を手伝うガイドの姿を目撃した。居候させてもらっている礼に手伝っているのだろうか?案外気のきく奴だなと感心しているとこちらを見つけたガイドが皿を机に置いてから近寄ってきた。


 「やぁ、ロイ君。君を探していたらお母上に手伝いをお願いされてね、こうして皿を並べていたんだ。それにしても出掛けるのなら僕に一声掛けてくれても良かったんじゃないかな?」


 「声を掛けるも何もお前、熟睡してただろ……」


 手伝いは自主的ではなかったらしい、感心して損した。

 なぜか悔しそうな表情を浮かべているガイドを尻目に井戸水で手を洗い自分の席へと着いた。

 朝早くから動いたせいでお腹の虫が騒ぎ出している、今すぐにでも手を伸ばしたいが食事前には必ず家族全員で十字を切って祈りを捧げるのがルールだ。一応客であるガイドには強請したりはしないが祈っている最中に盗み見てみるとちゃんと十字を切って祈っていた。


 「それじゃあ、頂こうか。」


 父の言葉が終わると同時にパンを掴み頬張った。案の定、嚥下途中に水分が足らずに喉に塊が引っ掛かり苦しさのあまり胸を勢い良く叩く。そんな自分の姿を見ていた母は慌てる事も無く微笑みながら


 「パンは逃げないからゆっくり食べなさいね?」


 と、水の入ったコップを差し出しながら言った。それを受け取ると急いで飲み干すと乾いたパンに水分がもたらされゆっくりと喉元から胃の中へと落ちていった。今度からはスープに浸して柔らかくして食べよう、そう心に誓った。


 「げほっ!げほっ!……危うく二度目の人生の終焉を迎えるところだった。」


 「勘弁してくれないかな、パンを喉に詰まらせて窒息死なんて間抜けな死に方をされたら僕の役目が終わってしまうじゃないか。」


 呆れたように悪態を吐いているがあの場で自分の次に慌てふためいていたのはガイドで慌てて立ち上がった為に椅子がびっくりして横たわっている。

 それを目で示してやると咳払いを一つして椅子を元に戻してから着席した。


 「とにかく、気を付けてくれると助かる。君の命は最早君だけのものではないのだからね。」


 「……、分かってるよ。気を付ける。」


 こっそり耳打ちしてきた言葉はとても九歳の子供が言うようなものではないがこのガイドという少年から発せられていると不思議としっくりくる。むしろ外見が偽られているのではないかとすら思えるくらいだ、まぁ先程の慌てっぷりなどを見ていると年相応な所もあるようなので自分の気のせいではあるのだろうが。

 最初だけやたら騒がしかった昼食もその後は特に何事もなく終わった。


 昼食を食べ終え少しの休憩を挟んでから父の手伝いの為に出かける準備をしているとガイドがやってきた。暇なのだろうか?だとするなら仕事の手伝いでもしてほしいものだが……。と、少しばかり抗議の意味を込めて目線をくれてやると例の本で顔を隠した後、出入り口の縁に体を預けた。どこかに寄り掛かるのが好きなやつだな、と呆れながらも言葉を待った。


 「少し話があるんだけど、いいかな?」


 「良いも悪いも態々俺が一人になるタイミングを見計らってたくせに……で?話って?」


 視線を外して椅子に腰掛けると待っていたとばかりに頷いたガイドは手に持った本を開いた。


 「君には将来の為にも色々と学んでもらわないとね」


 「色々ねぇ……どうやって?」


 老人の話では能力最強やハーレム完備とかのざっくりした紹介しかされなかった為、いまいち自分がどういう状態なのか理解していないがこの歳でも小型モンスターを倒せるのだから十分強いと思う。こんな状態で本格的に学んだらどんなことになるか興味はある。


 「それは明日からのお楽しみだよ、手配はこちらでしておくから安心してほしい。」


 「あ、あぁ……。」


 得意げな顔で言いたい事だけ言って颯爽と去っていった。

 状況に置いていかれて茫然としてしまったが父の呼び声で現実に引き戻され慌てて荷物を掴んで玄関へと走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ