仕様外の力
異世界ヴォルガンダイン。
ここはかつて、世界の八割を魔王によって奪われた過去を持っている。
だが、異世界より召喚された人間によってその魔王は倒され世界は平和を取り戻した……。
それから約千年の間に新たな魔王が台頭する度に異世界から人間が召喚され世界の平和は維持されてきた。
そして今回も新たな魔王の台頭、そして異世界から人間が召喚される事になった。
この物語は、異世界から召喚された二人の人間によって紡がれる魔王討伐までを記した冒険譚である。
静寂に包まれた大広間に数人の男女が現れた。大広間の床には魔法陣が描かれており何か大掛かりな儀式を執り行う為のものなのだろうと予測できる。
そしてその魔法陣の上部に決意を秘めた表情で一人の少女が向かい、それに倣うように男達がそれぞれ決められた場所に歩を進めた。
「この儀式が失敗すれば、世界は確実に滅びます。必ず、成功させなければいけません。」
魔法陣の上部に立った少女が、それぞれの位置にいる男たちに言った。それを聞いた男たちの反応は様々な物であったが、今更後に引く事は出来ない事を知っているので不安を拭えないながらも頷くしかなかった。
彼女たちが行おうとしているのは異世界から人間を召喚する儀式である。失敗すれば世界は魔王によって蹂躙され、千年前の出来事を遥かに凌駕する災厄が人類を襲う事になる。祖先から脈々と受け継いできた民と国、そして世界の平和を自分達の代で終わらせる事だけはしたくないと、ここに居る者たちは願っている。
「では、始めましょう。」
大気中に含まれる魔力を魔法陣に流し込み、召喚術式を起動させる。たったこれだけの作業ではあるが儀式を行っている者達は皆一様に苦悶の表情を浮かべ、額からは汗が滲んでいる。それでも彼らは根を上げず、魔力を注ぎ続けている。
すると魔法陣に魔力が充填されたのか、光を放ち始めた。その光は徐々に大きくなり、大広間全てを飲み込んだ後、収束した。
溢れ出した光に目を瞑っていた少女が恐る恐る目を開けると魔法陣の中心からやや左側に誰かが立っているのがわかった。召喚は無事に成功した、そう思ってその人物に声を掛けようとしたら上から悲鳴が聞こえてきた。
「げふっ……!」
それなりに質量があるものの決して固いものではないと分かる音で地面へと激突したそれは、奇妙な呻き声をあげてから沈黙した。突然の出来事に放心していた少女だったが、すぐに男達に声を掛けると倒れ伏したそれを近くの部屋に運ぶように指示を出した。
「ん……、うーん、ん?」
どこか格式の高さを窺わせる天井が目に付いた。残念ながら自分の住んでいる部屋ではないとすぐに分かった、なぜならベッドが柔らかすぎる。そもそも自分の家の寝具は布団だ、こんなにふわふわな感触は買ってきた当初ですら味わえなかった。これほどの寝具ならばさぞ質のいい睡眠が取れる事だろう、羨ましい。
「なんて考えてる場合じゃないのか……。」
そうだ、現実逃避をしている場合ではなかった。ここが自分の部屋でないなら一体どこなのか、そもそもなぜこんな高級そうな部屋で眠っていたのか、手掛かりになりそうなものがないかと部屋を見回してみるが




