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最終話 もう、勘弁してください。勇者様!!


 我は魔王バルバトス。

 数百年の眠りから目を覚まし、魔王を引退しようと思ったのだが、今も我は魔王城の玉座に座っておる。


「なぁ、オリゾン。我は魔王を引退したいと思ったんだが、なぜ、今も魔王をやらされておるのだ?」

「それはオデも知らんべ。ミルドがバルバトス様が魔王じゃないとダメというからオデもそれに従っただけだべ」

「……」


 従ったって、我が魔王だと思うのだが、なぜ我に相談もなくミルドの言う事を聞くのだ? それに……。


「お前もシレっと戻ってきておるが、今まで何をしておったのだ?」


 我が声をかけたのは、いつの間にか戻っていた四天王のシランス。元々寡黙な男だったが、魔王城に戻ってからも一言も声を出していない。


「……」

「いや、答えてよ」


 シランスは無言でサムズアップしてニカッと笑う。表情は豊かなのだが、なぜか喋らない。我も殆ど声を聞いた事はないが、我に対する忠誠心はあるようだ。


「オリゾン。シランスは今まで何をしていたんだ?」

「さぁ? オデは知らんべ。気が付いたら居たべ」


 居たべって……。魔王城の危機管理は何をしていたんだ? いや、シランスは諜報員の様なモノだから気付かなくても仕方ない。


「はぁ……。ところで、ミルドはどうしたんだ?」

「ミルドなら、新しい人間の王と会談を行っているべ」

「はぁ? 新しい人間の王とはいったい何者なのだ? そもそも、どうして魔王である我じゃなくてミルドが会談に臨んでおるのだ? 我は必要ないのか?」

「知らんべ」


 はぁ……。

 相変わらず、我の扱いが酷くないか?


「……」


 シランスが我を見ておる。


「シランス。何かあったのか?」


 聞いてみたけど無言だ。そして顎をくいっと上げる。……いや、それって魔王に対して不敬じゃない? え? どうでもいい? 我の扱いって……。

 そう思っていたら、我の部屋の扉が勢いよく開いた。

 本当にこの城には無礼な奴しかいないのかと思ったのだが、部屋に入ってきたのは……。


「さぁ、魔王バルバトス。決着をつけるわよ!!」

「な!? あ、アスカ!?」


 こ、この子は人間の王を殺したとして表向きは指名手配されているはずだ。なんで魔王城にいるの!?


人間の王(・・・・)よ。バルバトス様がヘタレとはいえさすがに無礼ですよ」


 アスカの後ろから現れたのは、ミルドだった。

 ん? ミルドは人間の王と会談をしていると聞いていたのだが、いや……ちょっと待て。


「ミルド。今アスカの事を人間の王(・・・・)と呼ばなかったか?」

「はい。新しい人間の王は勇者アスカちゃんに選ばれました。あ、乗り気ではないとはいえ他国の王に不敬でしたね」

「私とミルドさんの仲だから問題ないわよ」


 はぁ!?

 この二人、いつの間にこんなに仲良くなったのだ!?

 それに……。


「アスカよ。お主は平民出身であり勇者である事も嫌がっていたのではないのか? そんなお主がどうして人間の王などになっているのだ?」

「う、うるさいわね!!」


 アスカは神剣を握りしめている。その神剣は紫色の剣身がとても綺麗で……って……。


「ちょっと待て!? アスカちゃんが持っている神剣って、我のだよね!?」

「そうよ。とても手に馴染むから貰っておいたのよ」

「えぇ!? 我、許可してないんだけど!?」


 我は慌ててミルドに視線を移すが、ミルドは優しい笑顔で我とアスカを見ている。

 いやいやいやいや!? ミルド!? お主の敬愛する魔王様の武器が勇者に勝手に借りパクされているんだよ!? それにアスカちゃんの強さが上がっている気がするんだけど!?


「バルバトス様、気を付けるだ。アスカちゃんは最後の四天王カラスが直々に鍛えていたんだよ」

「はぁ!? カラスがなんで四天王を名乗っているの!?」


 そう言えば、いつの間にかカラスもいなくなったと思ったけど……。


「もしかしてバルバトス様気付いてなかったんだべか?」

「え?」


 気付くって何?

 い、いや、確かにカラスは我の事をバルバトスと知っていたけど……。って、もしかして?


「カラスの正体は四天王の筆頭のライアーだべよ。天狗族に擬態しておったんだべな」

「嘘っ!? カラスってえらく馴れ馴れしいと思っていたけど、アイツがライアーだったの!?」


 ライアーと言えば、魔王軍の中でも我の次に強い魔族だった。そんなアイツがアスカちゃんを鍛えた?


「よ、余計な事をぉおおおおお!!」

「問答無用!!」


 アスカの踏み込みは以前よりも鋭く速かった。しかし、我とて魔王、そんな簡単に……。

 いや、ここは。


「すんませんでしたぁああああ!! 我、もう魔王辞めるから勘弁してください!!」

「は?」


 我の突然の土下座にアスカは呆気に取られている。そして我はアスカを見上げる。ちょうど……スカートの中が……って、え? どうしてスカートなんて履いてるの? え?


「この変態がぁあああああ!!」

「ぐぼぉおおお!!」


 アスカの蹴りが我の鼻っ柱にめり込み、我は玉座まで吹っ飛ばされる。

 アスカは、神剣を強く握りゆっくり歩いてくる。そして、ミルドとオリゾンの二人も一緒になってアスカとともに歩いてくる……。


 こ、これは……不味い!?


「ひぃいいいいい!!」


 我は魔王城から逃げ出す事にする。もう魔王なんてやってられるか。


「待ちなさい!!」


 アスカは、剣を振り回しながら襲ってくる。

 もう止めて!?


「もう勘弁してください!! 勇者様ぁあああああ!!」


 我は必死に逃げた。そして、アスカはいつまでも我を追ってきた……。

 

これで完結です。

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