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16話 怒る勇者と嘲笑う勇者


 アレが人間だと?

 我等の前に立つ王は人間と思えない姿をしておる。その姿に兵士達も困惑しているようだ。


「そんな姿で本当に人間を名乗るのか? もう人間とは思えんが?」

「くはははは!! これこそ、人間が進化した姿だ!! それに……」


 王が手を上げると、兵士達が地面から出てきた無数の棘にくし刺しにされてしまう。いや、我等の足下からも棘が現れる。しかし、我等にはこんな棘は効く事はない。それはアスカも同じで棘を全て斬り刻んでいた。

 しかし、兵士達は対処できなかったのかくし刺しにされて死んでいた。

 その姿を見てアスカが絶句している。


「アスカ……辛いのであれば見るんじゃない」


 我はそう言って抱きしめてみたのだが、殴られてしまった。


「しまらんのぉ……」

「やかましいわ!!」


 カラスは一言多いのだ。

 しかし、アスカは兵士の死に驚いているわけではなさそうだ。では、何に驚いているんだ?


「ど、どうして……。今の棘は、魔王四天王が使っていた技……。そして、私の村を滅ぼした技でもある……。どうして王が使えるの……?」


 アスカが殺意の籠った目で王を睨む。しかし、王はそんなアスカを見て高らかに笑う。


「アスカよ。何を呆けておる? あの四天王にこの技を仕込んだのはワシだ。あぁ、そう言えば言っていなかったな。お前の村を襲わせたのはワシだ」

「……え?」


 な、どういう事だ? どうして人間の王がアスカの故郷を襲わせる必要がある? 

 考えられるのは勇者であるアスカを覚醒させるため? それとも……。


「ど、どういう事だ?」


 アスカから魔力があふれ出している。怒りで自分自身を抑えられないようだ……。我はミルドとオリゾンに目で合図をする。しかし、二人は首を横に振る。確かに今のアスカを止めようと思ったら我等も相応の力を使う必要がある。

 それに……。


「アスカ。少し待て……」

「なによ!?」


 相当頭に血が上っているみたいだな。我はアスカの頭に手を置く。そして、魔力を少し流し込む。こうすると人間は少し落ち着くと聞いた事がある。しかし、我はアスカに脛を蹴られてしまう。顔を見てみると、怒りのせいか少し顔が赤い。しかし、先ほどよりも落ち着いているみたいだ。


「アスカ。お主の復讐を止めようとは思わない。だが、我と約束してくれ」

「何をよ……」

「死ぬな。死にそうになったら、我が邪魔するぞ?」

「……好きにしたら……」


 アスカはそう言って、剣を取り出し王に斬りかかった。しかし、王は片手で剣を止める。

 あのアスカの斬撃にはかなりの力が込められていたようだ。しかし、王はまるで本気を出していないのかアスカに様々な攻撃を繰り出している。


「バルバトス様。アレは不味いんでないか?」

「えぇ、アスカちゃんには手に負える相手じゃないわ……」


 どうやら、二人はアスカの事を心配しているようだ。

 我としてもアスカの戦い方に違和感を覚える。我をボコっていた時のアスカは今よりも強かった。それに……け……ん?


「あぁああああ!!」

「な、なんだべ!? バルバトス様どうしたべ!?」


 し、しまった。アスカの神剣を塵にしたのを忘れていた。今アスカが使っているのは聖剣。アレではアスカの力を使いきれないという事か!?


「み、ミルド、神剣持ってないか!?」

「え? そんなもの持っているわけないじゃない。何を焦っているの?」


 我は神剣を塵に変えた事を説明する。その瞬間、ミルドから思いっきり平手打ちを頬に喰らった。


「何やってんのよ!! アスカちゃんが本当の実力を出せないのは貴方のせいじゃない!?」

「い、いや、待て。我も神剣を持って鬼の形相で襲い掛かってくるアスカが怖かったのだ。だから、神剣が無くなれば少しは諦めてくれるのを期待したんだ!!」


 我も真剣だったのだ。そこに気付いてくれ。

 しかし、ミルドの怒りは収まらない。オリゾンが必死に止めてくれているが、オリゾンも我をゴミを見るような目で見ておる。

 いやいやいやいや。我は悪くないよね? 我は自分の命を守ろうとしただけだよ?


「くっ!?」


 あ、アスカが押されておる。何とかしなくては……。


「そうだ、カラス。お前は商人だっただろう? 神剣は「そんなもん、扱ってるわけないやろ」……あぅ……」


 そ、そうだよね。神剣は神に愛された剣。そんな剣を承認が持っているわけないよね。

 ……となると、どうしたらいいんだ? いや、たった一つだけ方法がある。


「アスカ!! これを使え!!」


 我は自分の愛剣をアスカに投げつける。しかし、この行動にミルドがさらにキレる。


「アホかぁあああああ!! 人間に魔剣なんて扱えるはずがないだろうがぁああああ!!」


 我はミルドに殴られながら説明する。


「ま、まて。ぐぼぉ!? わ、我の剣は……魔剣じゃ……がふぅ!? な……ない」


 我がそう話すとミルドの暴力が収まる。


「え? 魔剣じゃない?」


 その証拠に、我から剣を受け取ったアスカは全力を出し王に斬りかかっておる。当然だ。我の剣は神剣だからな。


「なんで魔王が神剣を使っとんねん。神剣は聖剣の上位互換ちゃうんかい」

「その認識は正しいが、少し足りぬな。神剣は魔剣の上位互換でもあるんだ」


 聖剣と魔剣の行きつく先が神剣なんだ。今の魔族はその事も知らぬようだな……。しかし、人間の王もその事に気付いているらしく、アスカの剣を奪う。


 あ、やべ……。

 アスカはその場で神剣に斬られる。咄嗟に避けたみたいだが、王はアスカに追い打ちをかけようとする。

 もう限界……だな。


 我は王の振り下ろす神剣を掴んだ。


「え!?」

「ここまでだ。言ったであろう。死にそうになったら、邪魔をするとな

「私はまだ!?」


 実際、アスカはまだまだ戦えそうだが、女の子が傷つくのはあまり見たくはない。それに……。


「勇者同士で戦うのはここまでだ。ここからは魔王と勇者の因縁の戦いをしようじゃないか。人間の王よ……」

「くはははは!! 面白い。歴代の勇者の力と魔王の力を持つワシにお前のようなヒキコモリ魔王が勝てるとでも思っているのか!?」


 我はアスカをミルドの下に連れて行き、王の前に立つ。そして魔力を解放させる。

 我とて腐っても魔王だ。簡単に勝てると思うなよ。


「さて、最後の戦いを始めようか……」

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