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15話 変態


「人間の王よ、話を聞かせて貰おうか?」


 我はミルドの屋敷を出て、人間の王と対峙する。我が魔王と言うのは、兵士にも伝えられているのだろう。兵士達の顔は緊張の色が見て取れる。

 しかし、緊張する兵士達とは違い王は口角を吊り上げて我を見て笑みを浮かべている。これは勇者としての余裕なのか?


「くくく。ワシは人間の王として、魔王と魔王と結託している勇者を名乗る不届き者を討伐しにきただけだが? しかも、この屋敷にいる女は魔族だとの報告もある。魔王が魔族に匿われている。人間の王として、見過ごすわけにはいかんだろう?」

「不思議な事を言うものだな。この屋敷に行くように言ったのは人間の王、お主だと思うのだが?」


 人間の王は惚けるように、我を嘲笑う。いや、おそらくミルドのところに行くように言った時点で我等をここで討伐しようとしていたのだろう。

 王の周りには、兵士とは違う四人の男が立っていた。服装は王の様な豪華なのだが、誰だ? 一人はアスカに言い寄っていた王子だ。


「あれは、この国の王子達よ。王族全員で討伐なんて余程力を入れていると言う事だわ……」


 いつの間にかアスカも我の隣に立っていた。しかし、王子達総出で我等を滅ぼしにかかっていると言う事か?

 しかし、疑問も残る。

 我等がミルドの屋敷に入ってまだ二時間程しか経っていない。それなのに兵士達を配置できるものなのか?

 まさかと思うが、事前に配置していた?


「魔王バルバトス。何か言いたい事はあるか? 今なら、最期の言葉として聞いてやるぞ?」

「そうだな。いくつか聞いておきたい事があるのだが、いいか?」

「魔王の戯言など聞く価値も無いと思うが聞いてやろう」

「この短時間でここまで包囲できるとは、先程の会談は無意味だったと言う事か?」


 わかりきった答えになるだろうが、聞いておく必要はあるだろう。

 我一人であれば逃げ出す事に何の抵抗もないが、アスカはそう言うわけにはいかんだろう。それに……。


「王よ。これは一体どう言う事ですか? まさか、私を騙していたのですか?」

「騙す? 人聞きの悪い。ワシは人間の王として、魔王を討伐しようとしておるのだよ? アスカ……。貴様も我が息子の求婚に素直に応じておれば、死なずに済んだのにな……」


 ふむ……。

 どうやら、こ奴はアスカを怒らせて自分に斬りかからせようとしておるのだろう……。アスカはゴリラの様な女だが、頭は決して悪くない。こんな見え透いた挑発に乗るはずがな……。


「なんですってぇええええ!!」


 って、えぇええええええ!!?

 ちょ、挑発に乗っちゃうの? 


「あ、アスカちゃん? あんな見え透いた挑発に乗っちゃダメだよ?」

「うるさい!! あんな馬鹿王子と結婚なんて気持ち悪くてできるわけないでしょう!! 三十歳越えて、まだ王妃に子守唄を歌ってもらわないと寝られないのよ!? あの馬鹿のプロポーズの言葉知ってる!?」


 こ、これは、かなり本気で怒っているという事か!? あ、アスカの顔が真っ赤で激怒しておる。


「アイツは『僕の為に毎日子守唄を歌って欲しい。僕の為に毎日褒めて頭をなでて欲しい。僕におっぱいを毎日与えて欲しい』って言ったのよ!?」


 う、うわぁ……。

 我も生まれてから女性とお付き合いをした事がないが、それは言っちゃダメだと言うのは分かるぞ……。い、いや、百歩譲って性癖というのもあると理解したとしても、付き合っていない女性に対してそんな性癖を暴露すれば、嫌われても仕方ない。いや、男でもかなり引くな……。


「な、なにを!? 私の妻になるのであれば、私の欲望を満たすべきだろうが!!」

「い、いや……。アスカはお主の妻になると言うのを拒否しているはずだが?」

「……」


 我がそうツッコむと王子は黙ってしまう。我はミルドにアスカを止めてもらう。魔族化したミルドならば怒り狂っただけのアスカなら止められるだろう。現に、アスカはミルドに羽交い絞めにされてジタバタするだけだ。オリゾンとカラスに宥められている。


「くくく……。エネールの戯言は今はいい。そうだな、アスカは殺すのは止めておいてやろう。ただし、精神を壊して操り人形としてエネールに与えてやるとしよう」


 人間の王は、高らかに笑う。


 アスカに対し非人道的な事を言っているが、これを聞いて人間の兵士達はどう思うのだ? 元々は、人間を守る為にたった一人で戦っていたのだぞ? そんな娘を王子(変態)のおもちゃにしようとしているのだ……。普通であれば、抗議の声が上がるはずなのだが……。いや、その心配はいらぬようだ。人間の兵士にも我と同じような事を思った者もいるようだ……。安心した……とそう思った時。


「ぎゃあああああ!!」

「な、なんだ!?」


 王が抗議した兵士を斬った? いや、アレは斬ったんじゃない。引き裂いたんだ!?

 我は王を凝視する。すると、王の左腕が二倍に膨れ上がり浅黒い肌に変わり大きな掌と鋭い爪に血が滴っていた……。アレで引き裂いたのか?

 ……まるで魔物の様ではないか……。


「くはははは!! ワシは人間の王だぞ!! ワシに逆らうな。愚かな民草共の生死など、ワシの思うままだ!! それが勇者であろうとお前等兵士であろうと変わりない!! それはワシの馬鹿王子共も同じじゃ!!」

「……え?」


 王子達が一斉に王を見た直後、王子達の腹から何かが突き出る。あ、アレは触手か!?


「が……は……」

「父……う……え……」


 王子達は、その場に膝から崩れ落ち、干乾びた後塵となってしまった。


「っ!?」


 今のはまるで……。


「魔王バルバトス。お前の思っている通りだ。これは吸血能力じゃ!!」


 吸血能力?

 こ奴は人間の勇者じゃないのか!?


「驚いているようじゃな。だが、ワシが人間で、勇者である事には変わりはない。ワシは、一度喰らったモノの能力を奪う事が出来る。歴代の勇者の力もそうだが、お前が眠っている間に数々の魔族を喰らい、能力に変えた。即ち、今貴様らの前に立っているのは、歴代の勇者であり魔王の力をも持つ完璧な生物なのだ!!」


 王はそう言って、両手が異様に大きいが体そのものは灰色でか細い。何も着ていないが性器は存在せず、黒く大きな目の大きな生物へと変態した……。

王の姿は宇宙人のグレイを想像していただけたらわかりやすいです。

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