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14話 黒幕


 我等を応接間に案内してくれたミルドがお茶を用意してくれた。そして、にこやかな顔で、アスカを見ていた。


「ちょっと……、彼女って魔族なの? どう見ても、人間にしか見えないんだけど?」


 アスカが小声で我にミルドの事を聞いてきた。

 まぁ、アスカがミルドの事を疑問に思うのは当然だ。ミルドは我以上に魔法の技術を持っておる。彼女が人間に化けたら、我等同族であっても、魔族であれど見分けるのは難しいだろう。これが人間ならば尚の事だ。

 ミルドをアスカが怪訝な目で見ていると、ミルドがアスカの視線に気づき、微笑む。


「え?」

「ふふっ。貴女が巷で噂の勇者アスカちゃんね」


 巷で噂?

 まぁ、アスカの容姿と強さを考えたら噂になってもおかしくないだろうが、ミルドは微笑みを我にも向ける。


「なんだ?」

「バルバトス様も隅に置けないわねぇ……。まさか、魔王様と勇者ちゃんが恋仲(・・)になるなんてね」


 ……は?

 何を言っておるのだ? 我とアスカが恋仲?


「ここ最近、噂になっていて仕入れた情報の人相がバルバトス様そのものだったからね。でも、驚いたわよ。クソ四天王共に故郷を滅ぼされたアスカちゃんが、直接関係がないとはいえ、魔王であるバルバトス様とそういう仲になるとは思っていなかったからね……」

「「はぁ!?」」


 我とアスカの声が被ってしまった。

 しかし、我の人相という事は、あの時の噂か!?


「あ、アレは違うのだ!? アレは、アスカに命を狙われていて……その!?」

「そ、そうよ!! アレは誤解なのよ!!」


 そうだ。

 あの時は徹夜で我を探しておったアスカが、我を見つけて緊張の糸が切れて眠ってしまっただけだ。


「あらあら……。必死に否定するところを見ると、お互い嫌がってはいないみたいだからいいわ……。私としてはバルバトス様が幸せになってくれればそれでいいのよ」

「な、何を……」


 アスカが顔を真っ赤にしておる……。こういう話には慣れていないのか? いや、この娘は思っているよりも、純情なのかもしれんな。


「何を感心した顔してるべ。バルバトス様も鈍感なんだから、ちゃんと勇者ちゃんを見習うべ」

「はぁ?」


 オリゾンは何を言っておるのだ?



「ミルド。我が眠っていた間に何があったのか教えてくれないか?」


 我がそう聞くと、ミルドは呆れた顔でオリゾンに視線を移す。


「オリゾン、あんたバルバトス様に説明していないの?」

「したべ。奴等にはバルバトス様の名前も肖像画も見せていない事は伝えたべよ」


 確かに、それは教えてもらったな。

 しかし、ミルド達四天王が失墜した理由がまるで分らない。今のミルド達を見る限り、追いやられた風には見えん。

 現にオリゾンに至っては、純粋にアスカよりも強そうに見える。ミルドは、元々文官だったから強さはアスカに劣るのは仕方がないが……。


「いやいや、私が言っているのは、そうじゃなくて私達が魔王城を後にした理由よ」

「なんだべか? あの馬鹿共に愛想が尽きたんではないだべか?」

「あのねぇ……。愛想も何も、殺そうと思えばいつでも殺せたでしょう?」

「え? ……それって、四天王を?」

「そうよ……」


 ミルドの言葉にアスカが少しだけ殺気立つ。

 いや、ミルドよ。今の言葉がアスカにとって聞き捨てならないのは我でもわかるぞ。


「ミルドよ……。魔王である我が言うのもなんだが、お主等が四天王を御していれば、アスカの故郷が滅ぼされる事がなかったのではないのか?」

「……」


 ミルドは何も言わずに微笑んでいる。ミルドがあの顔をしている時は何かを考えた結果である時だけだ。だが、今のこの状況では、アスカにとって逆効果になる。


「あ、あんた達の……」

「アスカちゃん。勘違いしないでね。アレは私達でも防ぎ様がなかったのよ……。実はね……」


 む?

 この気配は……。


「なんや? この屋敷が囲まれてんのか? 殺気を感じるで?」

「え?」


 アスカは頭に血が上っていてようやく今気づいたようだ。とはいえ、我ですら直前まで気付かなかった……。どういう事だ?


「チッ……。バルバトス様とアスカちゃんがこの屋敷に来た時点で動き出すとは思っていたけど、こんなに速いとは思わなかったわ……」

「どういう事だ?」

「アスカちゃん。これは貴女を騙そうとしているわけじゃないと思って聞いてね。貴女の故郷を滅ぼすよう命じたのは……四天王じゃないのよ……」

「え!?」


 アスカはとても驚いているようだ。しかし、すぐに頭を横に振る。


「そんなはずはないわ。魔王バルバトス様の名のもとにと言っていたわよ」

「おでもそう聞いたが、さっきも言ったがバルバトス様の名も教えてないのにどうして知っていたんだべか?」

「それは……」


 我は窓の外を見る。すると、人間の王が兵に指示を出していた……。

 やはり、人間の王は和平交渉などする気もなかったという事か……。


「人間の王……。デセーオは邪魔なアスカちゃんもろとも、ここで私達を殺すつもりだわ……」

「どういう事よ……」


 ミルドは、人間の姿から魔族の姿へと変わる。そして、窓の外を睨む。


「アレは、デセーオ王じゃない。私達ヘタレ四天王とずっと敵対してきた……勇者であり、今の四天王を操っていた黒幕よ……」

「……え!?」


 人間の王が勇者だと? しかも……黒幕だと!?

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