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シュクリエールへの道
人が生まれて初めて母乳の後に口ににする食べ物は祝福の砂糖菓子。
誕生日にも七五三にもクリスマスにも成人式に結婚式にも欠かせないのは、真っ白な砂糖菓子。
そして、人の生が終わる時の旅立ちにも欠かせないのが一粒の砂糖菓子。
それが、私達の常識。
砂糖に始まり、砂糖に終わる。甘く刹那の生涯。人生と共にある人類のパートナー。それが砂糖菓子。
一粒でみんなを笑顔に出来る、そんな砂糖菓子職人に私はなりたい。
思い出
私のお父さんの実家は栃木県の那須にある。
赤い屋根に黒いペンのような煙突がある二階建てのログハウスはおばあちゃんの住居兼アトリエで、周りは楓の林に囲まれた静かなところにある。
周りには何軒かの定住している家と別荘がひっそりと距離を置いて立つ、ちょっとしたリゾート地だ。
私は毎年夏になると其処に両親と遊びに行っていた。
その日、私はおばあちゃんの家の林の中で一番大きな楓の木の下で膝を抱えて不貞腐れていた。