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異世界農家  作者: 宇宙農家ロキ
三章 異世界で出稼ぎに出る俺
82/100

82.ここから先は持久戦だ

「みんな、それぞれの作業お疲れ様」


俺たちは再びマルミラの屋敷に再集合し、各自の進捗を報告し合った。

約一週間ぶりに顔を合わせる面々は、お互いの無事を確認して安堵の表情を浮かべるのと同時に、懐かしさで安心した様子だった。

だが俺はそこへ、不安極まりない情報をもたらしてしまうこととなった。


「戻ってきて疲れてるとこ悪いが、悲しい知らせだ。……食料が残り一週間を切った」

「え!何だって!?」


予想通り、真っ先に反応したのはルルガだ。この世の終わりのような顔をしている。

これまでは俺やシバの力により、なんやかんやで食材の味がイマイチな所を色々工夫しながら対応して、それなりの物を作ってきたため、ルルガも文句は無かったようなのだが、最早それすらも尽きようとしている。

……そんな顔になってしまうのも無理もないか。


「ロキ殿、ルルガではないが、私もさすがに若干不安を覚えるぞ?最悪我々は森で獲物を捕まえればいいが、他の者はそうは行くまい。戦略として問題があるように思うが……」


ミミナもそれに続く。彼女の言い分は確かにその通りだ。俺は答える。


「ああ、無理もないよな。だからまずは、一度黄金耳の村に戻って、コボルドの巣の近くにあった沼から、ハスの苗と種を持ってきてほしい」

「ハスの苗と種……?あんなもの一体どうするのだ?」

「お前たちには馴染みがないかもしれないがな、俺のいた世界ではレンコンと言って、蓮の根っこを食べるんだよ」

「何?あんなものを食べるのか!?」

「いやこれが、醤油と一緒に煮込むとうまいんだ……って醤油が無いよな……」

「ショーユ?何ですかロキさん、それはまた新しい調味料ですか!?」


すっかり調味料オタクになってしまったシバがすかさず聞いてくる。

こいつにはまた後で醤油のことを教えるとして、今はまだ肝心の調味料を使うための食材についてだ。


「シバ、精霊たちに聞いて、何とか食べれそうな物を見つけることはできないのか?」

「残念ですがロキさん。精霊たちは僕たちの世界とは全く異なる認識で生きているので、我々がどのような物を食べているのか、彼らには全然理解できないかと……」

「そうか……じゃあともかく、お前は常に森で食べられそうな物があれば見つけるようにしてくれ。主には植物きのこ類だな」

「わかりました!」


シバの嗅覚と直感があれば、多少は何か食べるものが見つかるかもしれない。だが油断は禁物だ。食べ物は余るぐらいでちょうどいいのだ。


「ここから先は持久戦だ。特に兵站……つまりは食糧が重要になる。各自、できる限り自給できる物は自給するようにしてくれ」

「すまん、我が家にそれなりの備えがあれば良かったのだが……」

「仕方ないよ。いきなりこんなに大所帯が増えたんだし。それよりも、今後は保存食が必要だ。悪いがマルミラは屋敷に残って情報を皆に伝達しながら、シバと一緒に食品の加工を頼む」


これまでは、何らかの携行食があったため、数日間の行動は問題が無かったが、既に干し肉もパンも残り少ない。……特に、炭水化物が無いのは危険だ。戦闘行動において、カロリーが足りないのは致命的なデメリットだ。

さらに、穀物は乾燥状態にすることで貯蔵性が飛躍的に高まる。それが無い以上、何か他の物で代用させなければならなかった。


「ああ、それは構わないが、人手が足りなくなりはしないか?」

「そうだな……。ベルナルドは引き続きトウモロコシとハスの植え付けを頼む。町から多少は近いから、何とかそこで食糧を調達してくれ。獣人たちの部族には、今なら食材が売り放題だと伝えるから、しばらくしたら手に入るようになるだろう」

「ああ、承知した」

「ルルガとミミナは、森で獲物を調達できるだろ?それで問題無いよな?」


彼女たちは、普段から森の中で暮らしているのだ。狩猟生活をすることなどわけがないはずだ。あの二人に関しては、特に心配してなかった。今回も、手頃な豚を一匹仕留めてきて、これで燻製でも作れば、かなりいい食材になるはずだ。

本当にこういう時は頼りになる存在だった。


「ああ、私たちは問題無い。ロキ殿はどうするのだ?」

「俺は引き続き、オークたちの道を潰していく。……なーに、任せとけよ!異世界農家の実力を舐めるんじゃないって!」

「本当か?そうか、なら安心だな……。ん、ルルガ?」


ミミナが言葉の途中で急に話を区切り、ルルガに対して話しかける。それに釣られてルルガの方を見てみると、何故か少しボーッとしているルルガの様子が目に入った。

そして彼女はみんなの注目を集めているのに気が付くと、ふと我に返り、急に焦点の合った目で宣言した。


「……うちは、ロキと一緒に行くぞ」

「え?どうしたんだ急に?」

「あ……」


その言葉に、驚いて俺は尋ねる。

すると彼女は、一瞬何かを言いかけようとしたが、僅かにかぶりを振ると笑顔で答えた。


「だってその方がおいしいもの食べられそうだからな!」

「ルルガ……?」

「……」


明らかに様子がおかしいルルガのことが気になり、どうしたのか尋ねようとする前に、横から突然ミミナに大声で割り込まれてしまった。


「ダ、ダメだルルガ!お前は……あっ、いや、わ……私は反対だ!ロキ殿には私がついていく!」

「ミミナ……?どうしたんだよお前まで急に……?」

「ミミナ」


ルルガに続き、ミミナの様子もおかしい。

それを聞こうとしたら、ぴしゃりと嗜めるようにルルガが言葉を発し、ミミナの発言を遮った。


「ど、どうしたんだよお前ら……?」


食べ物がヤバいというのに、俺たちまでこんなんで果たして大丈夫なんだろうか?

……俺は、僅かに残った小麦の量を見て、不安な気持ちが湧いてくるのを止められなかった。



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