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異世界農家  作者: 宇宙農家ロキ
二章 異世界で初収穫した俺
52/100

52.『いただきます!』

「相談?相談って何だ?」

「それはだな……」




***




「えー本日は、我が異世界農家主催の収穫祭に集まって頂き、誠にありがとうございます」


なんともピリピリとした空気の中、いよいよ収穫祭が始まった。

意外だったのだが、年中暖かい場所の場合、収穫祭のようなものが無いようなのである。

あれはやはり、寒い冬がある日本ならではの風習なのか、それともコメ文化の特徴なのか……ってヨーロッパにもあるしなぁ、何故かはよく分からないが、ともかくこれまでに無い風習を目の前で開催される村長たちは、いささか戸惑っているようだ。


「ニ……ニンゲン。何故我らがここにいるのであるか……?」


そりゃ、隣にこの間まで争っていたコボルドたちがいるんじゃあ、無理もないよな……。

村長のシワだらけの眉がピクピクしてるような気がする。


そう。考えた結果、数少ない収穫物を不満の無いように分け合い、さらに来季以降の増産に繋げるためには、こうして関係者を集めて食事会を開くのが最適だと判断したからだった。……名付けて、「同じ釜のメシを食えば、みんな友達大作戦!」だ。

ネーミングセンスに年代を感じさせるな……。自分でダメージを負ってしまう。

いかんいかん、そんなことは気にしない。今はとりあえず、この会食を成功させることを考えねば!


「む、むぅ……ん……」

「ロキ!早く食べようぞ!食べようぞ!」


複雑な顔で唸っている村長たちを横目に、ルルガだけは食欲旺盛だ。まあ、それもそのはず、彼女の目の前には……特製『茹でトウモロコシ』があるからだ!


さて、ここで今回のコースメニューを紹介しよう。


【アミューズ】:ミニトマトとキュウリを一口大に切った串

【オードブル】:葉物とキノコの盛り合わせと茹でトウモロコシ

【スープ】:ゴールドラッシュの冷製ポタージュもどき

【メインディッシュ】:鹿肉のロースト、キノコディップがけ

【デザート】:パパイヤっぽいもの


以上である。


……素晴らしい!

俺が以前、フレンチレストランでバイトをしていた時の経験を活かして、工夫出来るだけしてみた努力の結晶だ。


まず、アミューズと呼ばれるお通しは、成り始めたミニトマトとキュウリを一口サイズに切って、竹串を通して塩をまぶす。……ああ、いずれマヨネーズを作らねば。

そして前菜であるオードブルは、20cmほどに育った各種葉物と、食用のキノコを炒めたものに塩と油を絡めたドレッシングをかけた。そしてそこに茹でたトウモロコシを。

スープはあのスイートコーン、ゴールドラッシュを贅沢に潰して搾り、山羊のミルクで伸ばしてキノコの旨味成分を足したポタージュにした。

そしてメインは、近くで採れた鹿肉に塩をまぶしてローストし、最近見つけた生姜っぽい薬味をすりおろして、キノコディップと共に味付けを。……ちなみに生姜も南国でできる植物なのだ。

最後にデザートとして、熟したパパイヤを切ったもの。


ちなみにこれらは、俺とシバ、そしてミミナの手伝いによって何とか完成した。

これを作る時のエピソードでも、一話を使ってしまうほどになるが、それはまあ割愛しよう。ただ一言だけ言っておくと、ルルガのつまみ食い攻撃を回避するのに異常に苦労した……ということだけは心の底から伝えておきたい。


今はこれが精一杯。何だか和食とはかけ離れてしまったが、出汁が摂れるようなものが手に入らない限り、和食は遠い世界の食べ物だ。しかしまあいい。今回は、ようやくトウモロコシが食べられるのだ。贅沢は言うまい。


というわけで、今までの貸しを全て使い果たして、この場に「村の長」「コボルドたちの長」「ニンゲン」「そして俺たち」というメンバーを集めることができた。そしてこの場には、本人たちの希望により、先日村に来たマルミラとベルナルドも同席している。まあ、彼らも畑を結構手伝ってくれたので、特に文句は無かったのだが、何故か熱心に頼んできたのがちょっと気になったりもした。


だがおかげで、残った一部の種用のトウモロコシを除いたら、今回の収穫はこれでほぼ全部だ。なのでこの場に賭けるしか無い。この機会をうまく利用して、次に繋がなければ……。

ゴクリと唾を飲み込む俺。


「ロキ、もううちは我慢できないのだ……!」


ゴクリと唾を飲み込むルルガ。別の意味でな。分かった分かった。お前にはそんなこと関係ないもんな。うんうん、それでいいんだ。皆まで言うな。


「えーと、それでは我慢できない奴がいるようなので、始めたいと思います。皆さん色々と気になることや思うことはあるでしょうが、それはとにかく食事の後にするということで、今日は俺……いや、俺たちが頑張って作った食べ物を、みんなで食べよう!ということで集まってもらいました。なので、とにかく目の前の料理を味わってみてください」


前口上を手短に語る俺。……うまそうな料理を目の前にして、長ったらしい言葉は要らない。そして食べる時にはただ一言だけだ。


「で、早速食べてもらうわけですが……!これだけはみんなに守ってもらいたいと思うことが一つだけあります。それは、俺がいた世界での食事の前の大切な儀式。……とは言っても、たった一言だけのおまじないです。俺に続いて、一言だけ唱えて下さい。いいですか?それではみんな一緒に……」




『いただきます!』




さあ、楽しい晩餐会の始まりだ。


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