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異世界農家  作者: 宇宙農家ロキ
二章 異世界で初収穫した俺
46/100

46.なんか……気まずいんだけど……

その日はみんなで崩れた畝や倒れた野菜、そして荒らされた村の境界などの修繕をして終えた。そしてその夜には、俺が目を覚ましたということで、再び村民会議……つまりは「寄り合い」が開かれるということだった。


「なんか……気まずいんだけど……。ホントに俺が出て大丈夫なのか?」


バツが悪そうに俺は言う。

何故なら、前にこの村を出る時には、折角捕らえたコボルドの捕虜を勝手に逃がして脱走したのだ。実際に追っ手もかかったことだし、村にとっては裏切り者と思われても仕方ない。


「大丈夫だって〜!ロキの活躍はしっかり話しておいたからな!」

「そうだぞ。実際、ロキ殿がいなければ、この村もどうなっていたか分からなかった。あの事件の時、他の幾つかの村はゴウダツの手の者によって襲われていたのは事実。難民となった者が何名かこの村にも来ているのだ」

「そうなのか……。なんか無我夢中だったからよく覚えてないけど、まあシバも含めて村にいて大丈夫なら助かるけどな。収穫だってまだだし」


四人でワイワイと話しながら、寄り合いが開かれる天幕へと向かう。農作業の間に二人から聞いていたのだが、俺が犯した罪というのは、緊急避難的に取られて、なんとかOK!……ということになったらしかった。なんだかんだで、シバも俺たちの仲間ということでこの村に滞在することができるようになり、とりあえず今は俺の家に一緒に住むことになっているようだ。


そんなようなことを聞かせられ、あのコボルド事件の後の対応について、今日は寄り合いが開かれるとのことだった。




***




「コボルドたちとの戦の件……やや困った事になっておる」


そう村長が言ったのは、寄り合いが始まってしばらくした頃だった。最初はモゴモゴと、俺たちの処遇や先日の出来事について色々前置きを置いた挙句、不問にするということだったので、とりあえず俺たちはホッと一安心した。多分、ルルガとミミナがうまく言ってくれたんだろう。


で、それで俺はお役御免かと思ったら、その後の顛末がくっついてきた。なんでも、ゴウダツが言っていた通り、奴らが襲撃した村が幾つかあり、これまで舐めていたコボルドたちが、そのせいでようやく放ってはおけない存在である……と認識されたようだった。

なので、対コボルド族に関する周辺部族のネットワークの強化が課題となっているらしい。


これまでは、部族間のスタンスの違いとか、妙なプライドだかでうまく行ってなかった部分があったのだが、目の前の脅威を実感して、とうとうくだらないことは言っていられなくなったようだ。……って、なんか田舎の自治体みたいな感じだな。危機感を感じて、ようやく動き出すと。


それで、まあ何と言うか、これからは周囲の町や村などから頻繁に人が出入りするようになるのでそのつもりでいるように、というのが今回のまとめのようだった。唯一、今回の議題には出て来なかったシバに関しては、まだなんとも言えない状態らしい。……なんせ、はぐれものとは言え、一応奴はコボルドの一員なのだ。流石に部族を勘当された身だとは言っても、全員を説得することは難しいようだ。


「……まあ、流石にいきなりは無理だよなぁ……」

「まあな。だが、村に滞在できるようになっただけでも良しとせねば」

「そうだな。うちは少なくとも、うまいご飯が食べれるようになったので大満足だぞ!」

「お前はそれさえあれば幸せそうでいいよなぁ……」

「えへへ……」

「褒めてないぞ」


実際、シバが料理を担当するようになって、食生活が改善されたのは確かだ。奴が持っていた調味料に加えて、コボルドたちに伝わる料理法を村の食事にMIXさせて、いくつかバリエーションが増えたのだ。

畑で少し収穫できるようになったアブラナ科の葉物を間引きしたものを加えて、以前よりは材料もマシになった。ルッコラやからし菜などの辛味がある葉物を加えることにより、サラダにも深みが増してきたし。いや〜、食事が豊かになるのって、幸せ……!


そんなこんなでシバが村に溶けこむためにはしばらく時間が必要だろうと、度々「おすそ分け大作戦」を近所にすることによって、少しずつ実績を積むことにした。まずは胃袋さえ掴んでしまえば、こっちのものだ……!

そしてやはり、こちらの人々は味に飢えている……というか、味覚のバリエーションが少ないので、最初は怪訝な顔をされたものの、段々味の違いが分かるようになるにつれ、止められなくなってきたらしい。いかん、このままでは材料が足りなくなる……。


そんなことを思いながら、二ヶ月が過ぎようという頃、ようやく畑に植えたトウモロコシが出穂を始めてきた。


「おお!よしよし……!」

「なんだ!?どうした?もう食べられるのか?」


ルルガが今にも食いつきそうに聞いてくる。待て待て、よだれはヤメろ。


「まだだって!これがトウモロコシの花なの!で、花が終われば実がつく。もうすぐだってことだよ」

「そうか〜、ロキのあの葉っぱは辛いからあまり好きになれんのだよな〜。早くトウモロコシ食べたい」

「全くルルガはそればっかりなんだから……。私はあの大人っぽい味は好きだぞ」

「そうですね。やはりサラダにはああいうアクセントが重要ですよね。後、ロキさんに教えてもらった、油と塩を絡めた『どれっしんぐ』というものがあれば、僕はもう最高です」

「だな。後は生ハムなんかあればもう言うこと無いんだが……」

「なまはむ!?何だそれは!?うまいのか!」


……ヤバい、ルルガの前で向こうの料理の話は禁句だった……。すぐに作れ作れと言ってくるんだから。作りたいし食べたいのは俺もやまやまだが、如何せん食材というのは時間が掛かるものなのだ。人手も必要だし、土地もいるし……って、待てよ?人手か……。


一つ思いついたことがあり、俺は帰って早速それを相談することにした。



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