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異世界農家  作者: 宇宙農家ロキ
二章 異世界で初収穫した俺
45/100

45.第ニクールの始まり

「ロキ殿!ついに目が覚めたか!」

「ロキさん!生きてたんですね!良がった!本当に良がった!!!」

「にゃから、生きてるって言ってるだろー?みんな心配性なんだからなぁ」


「……」


「ロキ殿?」

「ロキさん?」

「どうしたんだ?ロキ?」


「……」


「……」

「……」

「……」


「ここは……どこだ?……俺は一体……誰だ?」


「ロキ殿……ま……」

「まさか……!?」

「おいロキ。早く畑に行かなければ。トウモロコシをどうしたら良いのかウチには分からん。早く行くぞ」


「おっとそうだった。じゃあ行くか……ってオマエ、ちょっとぐらい心配したらどうだよ」


「……え?」

「え?え?」


……記憶喪失のフリをしてみたが、ルルガには全く通じなかったようだ。




***




俺:異世界農家。LV1。装備/クワ。特技/植物知識

ルルガ:けもみみ娘の巫女。LV3。装備/爪。特技/大食い

ミミナ:けもみみ娘の狩人。LV3。装備/弓。特技/妄想暴走

シバ:コボルドなりそこないの精霊使い。LV1。装備/調味料。特技/料理


……って所か?


「ロキ、何ぶつぶつ言ってるんだ?……もしかして、本当に頭ぶつけたのか?」

「あ、いや、えーと……」


折角RPG気分に浸っていた所を、またしてもルルガに現実に引き戻された。……いや、現実なのか夢なのか未だによく分からんが、もし夢ならこんなに体の節々が痛い夢なんて早く醒めて欲しいものだ……。だが、そんな俺の願いも虚しく、目の前の食欲魔神は俺を急かしてくるのだった。


「それよりも、早く畑に行こうぞ?」

「分かった分かった。……全く、新シリーズ開始の作法が分からん奴だな。第ニクールの始まりは結構期待持たせるのがセオリーだろよ」

「???」

「あ〜ああ、いやなんでもないって。それより、結局俺の畑どうなってたんだ?結構無茶苦茶になってた気がしたけど……」


なんだか頭に血が上っていてあんまり鮮明には覚えてないけど、数日前のあのヤバいコボルドの王『ゴウダツ』との戦いのことを振り返ってみる。……ちなみに、あの日から俺は数日間倒れたままだったらしい。で、結構体もボロボロだったんだけど、その辺はなんと巫女らしくルルガが治癒魔法を使えるということで、傷自体は治してくれたらしかった。


そのことを聞くと、ミミナとシバのみならず、あのルルガですらもちょっと顔を赤らめてゴニョゴニョ……と口篭っていたので、なんだかちょっと怖くなってそれ以上は聞けなかった。一体何があったんだ。


ともかく、そうして数日間眠り、傷は治ったものの中身の痛さや体の使いすぎなどの部分は治らないようなので、今朝起き上がった時の地獄さと言ったら無かった。俺はあの時の状態を「地獄み」と名付けたよ。


そんなよーなことをずっと考えていると、畑に着いた。


「あ、ロキさん。もう動いて大丈夫なんですか?」


畑には既にシバがいて、復旧作業を行ってくれていたようだ。その横にはミミナもいる。


「ロキ殿。まだ安静にしていなくて大丈夫なのか?……大方ルルガに食い物に関してせっつかれたのだろうが。全く、ルルガはとにかく食べ物優先なんだからな……!」

「だって、ロキに見てもらわないと、ウチのトウモロコシが大変なのだ!あれが食べられないとなったら、ウチはもう……死んでしまう!」

「ったく、大げさだなぁお前は……。とりあえず見てみるよ」


そう言って俺は畑の様子を見る。

おぼろげに覚えているのは、何度か吹っ飛ばされて畑の上をゴロゴロと転がったことだ。あと最後に唐辛子をもいで行ったこと。……いや〜、ホント今考えると、唐辛子植えといて良かったわ。異世界農家のアイテムリストには必須だぞこれは。


『唐辛子は武器にもなり得る』


俺の心のメモ帳に書いとこう。まあそれはともかく、他の作物はどうだろうか。……まずはトウモロコシか。うん、幾つかなぎ倒されているのはあるけど、完全に茎が折れているのでもない限り、結構トウモロコシは実はなるものなのだ。なので、ダメになったもの一割、倒れてるけど何とか種は取れそうなのが三割、マトモに残っているのが四割、といった所か。

残りの二割は……やはり環境が適していなかったのか、うまく成長していない。……ってかちょっと待て。


「おいルルガ。成長が悪いからって水をドバドバやるのは止めろ。根が腐って余計ダメになるかもしれん」


心配してるのはいいが、対処を間違う初心者は多いのだ。成長が悪いと、すぐ「水が足りない」と思ってしまう。しかし実際はそうでもなく、原因は幾つかの要因がある。例えば日光不足の場合は光合成ができていないので、水をやった所でエネルギーが足りず、カルビン・ベンソン回路を回すことができない。なので、下手に水をやって養分を吸わせても、それを使い切ることができなくて余計に虫や病原菌にやられてしまうことになるのだ。


つまり、材料だけあってもエネルギーが足りないと、成長はできないよね?ってことなのだ。……というようなことをルルガに説明してみたのだが、案の定全く分かっていなかったようだ。まあそれはミミナも同様で、唯一勉強熱心なシバだけがなんとなく分かったような顔でふんふんと頷いていた。お、こいつは見所があるな。異世界農家塾の塾生にしてやろう。いつやるのかと言ったら「今でしょ!」だからな。


「ロキ。何を言ってるんだ?トウモロコシは食べられるのか?」

「あ、ああ……まあ多少ダメになった奴はあるが、何とか食えるのもあるよ。みんなの分とまでは行かないが、俺たちの分ぐらいはあるだろ。他のも同じだな。ダメになったのはあるが、全滅じゃあない。ホントに自然ってのは……強いな」


改めて感心する。そして案外丈夫な自分の体に関しても、ホッと一息ついたのだった。

やはり『健康第一安全第二』がモットーだからな。



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