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月光―ツキアカリ―  作者: 01(まるひと)
6/18

パーティ

「スキールさん?とアスクさん?」

「俺の仲間だ!パーティだ!」

「仮だけどな」


 あの後アスクは冬樹の残りを回収し、計7つの冬樹を採集。

 その後、スキールの援護もあって無事に【フロントアース】のコネクションに戻ってきた二人は、クエストの報告に来たところで先の会話だった。


 受付嬢は二人を見るや口を開き、スキールがノリノリで応えていたところにアスクが補足を入れた。


 受付嬢は自分のことのように喜び、嬉々としてパーティ編成の説明に移・・・


「パーティリーダーはどちらですか!?」

 らなかった。


 唐突の話に、アスクとスキールは顔を見合わせる。


 パーティリーダーというのは、名前を聞くだけで説明するまでもない。

 パーティを引っ張っていく者をリーダーとして扱うわけだが・・・


「アスクだな」「スキールだな」


 ほぼ同時に口を開いた二人は、続けて理由も口にする。


「む、アスクの方が若かろう」

「は?スキールの方が経験あんだろうが」

「んん?」

「あぁ?」


 初日にも関わらず口を揃える辺り、気が合うと見るべきか、それとも初日だから考えが逆でもしょうがないと汲み取るべきか・・・


 受付嬢はいきなりパーティリーダーを問いたことを悔いたのか、どうパーティ編成の説明の引き戻すのか考えながら、表情では営業スマイルを浮かべる。


「あ、あの」

「カード倒しか」

「わかった」

「そんじゃ、これでいいか。表がアスク裏が俺な」

「え!?カード倒し!?」


 カード倒しはカードを机に垂直に立て、二人で指を置いて同時に離す。そして倒れた方の結果になる。というものだ。


 ようするに運ゲーだ。


 パーティを引っ張っていく重要な役割を『運』で片付けようとする二人に、驚愕する受付嬢だったが、二人の考えと手は止まらず、結果は・・・


「俺かよ・・・」

「だが、パーティリーダーは名が知られやしぃから別に損はねんでねぇの?」

「それで?パーティリーダーがどうしたって?」

「あ・・・えっとぉ」

「?」


 ペタッ、と情けない音を立てて上になった面は表。結果はアスク・スヴァットで落ち着いた。受付嬢は二人の思考が読めずに苦笑いしたが、それで納得したのか一度こほん、と軽く咳払いをした後、今度こそ説明に移る。


「それでは、お二人のコネクションカードをここに・・・」


 そう言って受付嬢は赤いトレーを出し、そこにコネカを置くように促す。

 二人は特に抵抗もなくコネカを差し出す。


 受付嬢はアスクのコネカを上にして重ね、二枚のコネカの上に手をかざして魔法を唱える。


 仄かに光を発するそれを見ながら、スキールはそれが見慣れているという素振りで片目を瞑ってみせるが、アスクは両目を開いて真剣に眺める。


 数秒間その状態が続き、スキールがよそ見をし始めるころに、受付嬢の手とコネカから光が消えた。


「パーティ編成はこれで終わりになります」

「・・・なんかあっさりしてるな」

「魔法だからのぉ」

「その喋り方どうにかなんねぇの?」

「別にいいでねぇか」

「はぁ・・・」

「あはは・・・あ、コネクションカードのご確認をお願いします」


 差し出された二枚のコネカにそれぞれ自分の物を取るアスクとスキール。


「色、違うな?」


 アスクがスキールのコネカを見て疑問を抱いた。

 アスクのコネカは真っ黒の上に真っ白の文字が書かれている物だが、スキールのコネカは淡い緑色の上に赤い文字の書かれている物だった。


 これに関しても、受付嬢が説明するはずだったが、どうやら受付嬢の方はアスクがその時になったら説明しようとしたらしい。

 やむなく説明するため口を開こうとする受付嬢だったが、これについてはスキールが自信満々に語り出す。


「アスクよ。俺たち剣士にゃランクがあるのは知ってんだろ? このコネカはな、ランクが上がると色が変わるんだ。一番色が変わるのはGからFに変わるときかなぁ?ね?」

「あ、はい。補色を利用したカードと文字の関係で」

「それは知らんかったのぉ」

「へっ」

「んなっ、アスクっ」

「黒白、緑赤っつったら当然だろうが」

「んなにぃ!?」


 スキールの知識に嘲笑うアスク。

 ただ、アスクの思考はすぐに違うところにシフトしていた。


「パーティ編成はこれで終了だな。ちゃんとスキールの名前も追記済み・・・っと。とりあえずはこれでいいか。重要なのはこのあと」

「パーティ編成が重要でねぇと!?」

「いちいちうるせぇな。俺のクエストの精算すんのが重要だろうが」

「む、そういえば俺もクエスト報酬はもらってなかったな」

「あ、アスクさんとスキールさんもクエストの精算ですか?私が行います。どちらを先に行いましょうか?」


―――――


「この報酬じゃ、ここ三日間の飯代に費やした方がいいな」

「採集系クエストじゃそれが限界だろうなぁ。討伐系クエストの方が断然効率がいい」

「はぁ、武器買う金貯めねぇとな・・・俺は戦えねぇし・・・」

「一応二人でクエストには行くが、俺だけが戦うってことになるかねぇ」

「悪いな」

「気にするでねぇ。それがパーティってもんだろうが」

「はは。気に入った」

「そりゃよかった」


 コネクションからの帰り。日も落ちてきて、一層寒さの増した街【フロントアース】。

 二人は朝よりも厚着をして帰路に着いていた。


 アスクはコネカを見ながら、今日精算したクエストの報酬金額の使い道を早くも決める。

 モンスターを切ったりはしていないので、【経験値】の方は0のままだ。


 ため息を付くアスクにスキールがニッと笑って助言をして、アスクも安心そうな表情を浮かべる。

 先の戦闘の豪快な戦い方。それを見た後ではかなり頼もしい。


 こうして街の中央に位置する噴水広場で二人は別れ、アスクは受付嬢からおすすめされた宿屋へと向かう。

 受付嬢曰く、「部屋は狭いながらも、宿代は安く、木造だからいい匂い」とのこと。

 アスクは匂いの方は興味なかったが、真面目そうな受付嬢のおすすめで、なにより宿代が安いということでアスクの住む宿が決定した訳だ。


 噴水広場からほどなく。いまだ沈んでいない太陽が西に見える宿屋の玄関。

 アスクはその玄関と向かい合い、左から差し込んでくる太陽の光を眩しそうにしながらも、宿屋の中に入る。

 受付嬢の言う通り、中は木造でできていて、閉まるドアからはギィと音を立て、木の匂いがアスクの鼻孔をくすぐった。

 アスクはここに来るまで匂いは興味なかったのだが、いざ体験してみると、アスクも(なるほど)と思うほどだった。


 玄関から入ってすぐには、コネクションと同様の作りをしたカウンターがあり、職員専用のところには初老の男性が一人いた。


 アスクの目を見ると、初老の男性は優しい笑みを浮かべ、「いらっしゃいませ」と客を歓迎した。


「どうされました?」

「あーえっと・・・」


 笑みを浮かべたまま尋ねる男性に対し、テュール・グロアやスキールニル・レード以外にはコミュ障が発現してしまうアスク。

 なんて言おうか迷っているアスクを見て、初老の男性は持ち合わせたコミュニケーション能力を駆使して、提案を一つ。


「ご飯を召し上がりになりますか?それとも宿を利用なされますか?」


 男性が手を向ける方を順に追うアスク。

 アスクから見て右側には、確かに木造で円形のテーブルが設置されている食事スペースがあり、反対側には二階へと続く階段が伸びていた。

 アスクは二択に迷うことはなく「泊まりです」と簡潔に述べる。


 男性も「かしこまりました」と簡単に応え、カウンターの客側からは見ることのできない棚から、A4の紙とプラスチックの下敷き、ボールペンを取り出す。

 アスクは(何か書くのか)と、カウンターに近づく。

 予想は的中。というよりは当然ではあるが、契約書のようなものを書くことに。


 数秒でそれを終えたアスクは、男性の指示によりコネカを見せた後、コネカに入っているお金を宿代分引かれ、部屋の鍵をもらう。


 男性から「ごゆっくり」と見送られ、アスクは宿スペースである二階へ。


 部屋番号は201。往復するタイプの階段を上がって一番手前の右手にある部屋だ。

 玄関と同様にギィと音を立てて開閉する木造のドア。入ると椅子の類はなく、低い木造のテーブルに木のフローリング。木のベッドの上にはベッドパッドを覆うシーツが綺麗に整えられていた。

 布類・・・シーツや枕、カーテンは純白で、より一層綺麗さが引き立っている。


 (住み心地は悪くなさそうだな)と高評価を上げるアスクは、心の中で受付嬢に感謝し、そのままベッドへ身を沈めた。



【コネクションカード】



氏名:skirnir・rod【D】

性別:男

生年月日・年齢:7月7日,24歳

【パーティメンバー】

氏名:◎ask・svart 氏名:           

性別:男         性別:           

氏名:          氏名:           

性別:          性別:           


【bloodEXP】

837


【sild】

84032sild

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