佐渡方面の戦い
佐渡城 城外
俺が率いる天堂寺軍四百は大間晴信が立て籠もる佐渡城を攻めていた。
しかし、いくら鉄砲が三百挺有ろうとも敵の数は五百で籠城しているのは、佐渡に侵攻してきた羽前国村山郡三十四万石の白河家先々代当主(名前は知らない)が七千の兵で攻めてきたのに対し、七百の兵で守り切った佐渡城。落とすことは不可能ーー
ーーと大間晴信は思っているだろう。
しかし、この三年間俺は新兵器のことをずっと考えてきた。だとしたら当然思いつく、大阪城を落としたーー大砲を。
ゴロゴロゴロ
「いやぁ、海辺から持ってくるのは大変でしたぞ」
清康が持ってきたのは、ヨーロッパですらまだ出回っていない鉄砲の進化版 大筒。未熟な日本の技術では一発撃ったらお釈迦になる大砲もどきしか作れないが、一発あれば十分。
大砲(大筒)さえあれば籠城が有利になる事はない。
「清康、大ほ…大筒で城門を壊したら騎馬百と鉄砲隊百五十を率いて突撃しろ。
竹千代!太郎!次郎!
お前たちは鉄砲隊五十ずつを率いて待ち伏せして大間晴信を討て!どこで待ち伏せするかは任せる。大間晴信を討てたら父上に「蜻蛉切」を褒美にするよう言っておく」
「と、蜻蛉切をッッ!!!」(清康)
「「「真ですかッッ!!!」」」(竹千代、太郎、次郎)
太郎と次郎は南條十郎左衛門の長男、次男で竹千代と同じく俺の小姓となっている。ちなみに「蜻蛉切」は何故かうちの蔵で眠っているのを俺が発見し、父上は誰にやるか、自分で使うかで悩んでいたので、ここは竹千代が大間晴信を討ち取って、何らかの理由で鍋之助(本多忠勝)の手に「蜻蛉切」が渡るようにしたいと思っている。
でも太郎君が頭良さげなんだよなー。
「大筒!準備せよ!」
全員が各々の位置に着いたのを確認ーーしたわけではないがそう思ってーー係の兵に指示を出す。
「清康!」
「いつでも突撃できます!」
「よし、撃てぇぇえええ」
ドゴーン
「グァァアアア」
「何だ!何が起きた!」
「…………」
ちょっと予想外のことが起きた。
城門を破壊しようと思っていたのにどうやら城の本体に当たったようだ。
「…………清康ッッ!!!」
「……あ、突撃ィィイイイイ」
ワァァアアァアアア
本丸?に砲弾が当たって指揮系統が壊滅状態の佐渡城に清盛率いる騎馬、鉄砲混成軍二百五十が襲いかかる。
「突っ込めぇぇえええ!
大間晴信を討ち取った者には「蜻蛉切」が貰えるぞ!」
え、何ソレ。聞いてない上に言ってない。
佐渡島 西側の海辺
(大間晴信は蒲原群に落ち延びるために占領されていないこの海辺に来るはずだ。そこを私が討ち取ってみせる。……む、あの人影は)
竹千代は相手だったらどう動くかを考え、唯一蒲原群に落ち延びられる可能性がある天堂寺軍が上陸したのとは逆の西側の海辺に来ていた。
そんな竹千代は佐渡城側にある木の陰から騎馬が出てきたのを見て、
「撃てぇぇえええ!絶対に逃すなぁぁあああ」
パンパンパン
五十挺の火縄銃が火を吹く。
五十発の弾丸のほとんどは一人の騎馬武者に命中する。
「グァァアアア」
佐渡城から逃げてきた騎馬武者は竹千代の鉄砲隊に穴だらけにされ、首を跳ねられる。
これを十歳の少年がやっているのだから驚きだ。
跳ねられた首を龍之介より借りた軒猿の者が見る。
「お手柄ですね、松平殿。この者は大間晴信の従兄弟、大間義信です」
「…………」
竹千代は黙って空を仰ぎ見た後に、
「ハァァア」
と長い溜息を吐いた。
戦果
佐渡城、大間家の財宝
被害
二名死亡、五十名軽傷
大間晴信は大筒が本丸に当たった時点で死んでいます。