冷やし系少女と浴衣デート
開けましておめでとうございます。
やっとデートに辿り着きました!やったね☆
年内という予告でしたが、年を跨いで申し訳ないです。
まあでも深夜アニメは25時とかいう表示をするから、今日はまだ2014年12月31日だよね!(白目)
カランコロン♫カランコロン♪
カラッコロッ♫カラッコロッ♪
浴衣を着た水月とお祭りをやっている水月の家の近所の神社へと歩く。
「まずはお面を買いましょう。祭りと言ったら1にかき氷、2にトルコアイス、3・4が無くて5に欠き氷ですから」
「お面どこいった。かき氷2回言ってるし」
「お面は0なので言いませんでした。それからかき氷と欠き氷は字面が違いますよ?」
「分かるか!それからトルコアイスはマイナーだろう。普通は焼きそばとかチョコバナナとか綿あめじゃないの?」
「マイナーとは失礼な。トルコアイスとはそもそも……」
「長くなるなら勘弁な。とりあえずお面買おう」
「むう。先輩こそ話が長いくせに」
そうこうしているうちに神社の鳥居が見えてきて、夏の夜道に賑やかな明かりが漏れ出している。
お面屋は鳥居を入ってすぐの所にあった。
「いらっしゃい。どんなお面がいいかな?」
「あーそれじゃあ「般若のお面を下さい」はあ!?」
「どうしたんですか先輩、口をあんぐり開けて。餌を欲しがる雛のようで大変見苦しいです前世からやり直してください」
「……俺の彼女が酷すぎる。と、そうじゃなくてなんで般若のお面なんだよ。もっとこう可愛いやつがあるだろう。ほらキ◯ィちゃんとか」
「ああ、サン◯オの売女ですね嫌です絶対にお断りです」
「世界を股に掛けるキャラクターになんて言い方を……世界のビッグアーティストが愛し、あらゆるところとコラボしてるスーパーアイドルじゃないか。なんで売女なんて言うんだよ?」
「世界に股を開き、誰とでも(コラボを)ヤるスーパービッチじゃないですか。汚らわしい」
「……物は言いようだね」
「先輩が静かになったところでお面を買いましょう。おじさん、般若とウルトラ◯ン80のお面をください。あ、それ違います。それはウル◯ラマンAです。80はその横の……」
「なんでそんなにウ◯トラマンに詳しいんだよ。しかもくらげちゃんのお父さんくらいの世代のやつだろう」
「乙女の嗜みです。先輩知ってます?◯ルトラマンはカラータイマーを取られると萎むんですよ」
「なにそれマニアックすぎる。今をときめく女子高生の知識じゃない、字面だけなら親父の知識だろう」
「詳しくはウルトラマ◯タロウ第五十二話『ウルトラの命を盗め』を見ましょう。それからタロウ第1話のウルトラの母ですが、この時点では母の着ぐるみが完成していなかったので、急遽初代ウルトラ◯ンの着ぐるみを使用していますね。なので実際の母の姿とは多少異なっているんですよ」
「……これまたディープなネタだな。すごいけど、素直に褒めるかどうか迷うところだ」
「また◯ルトラセブン第十二話の『遊星より愛をこめて』は色々あって永久欠番となってしまいました。様々な意見がありますが、私はマスコミと過剰な世間の反応による表現の自由の侵害と考えます。あれがダメなら、今の世の中にはもっとたくさん公開禁止や絶版にすべき創作物がたくさんあると思います」
「社会問題を混ぜてきただと!?単なるマニア的知識をよりマクロな視点へと昇華させたとは……!!」
「先輩の反応はなかなかよろしいですね。ご褒美に80のお面をあげましょう」
「ありがとう。くらげちゃんの頭の中を1度覗いてみたいよ」
「……先輩のエッチ」
「無表情で言われてもグッとこないな」
「今すぐお面を返して家に帰ってください」
「嘘です!大変可愛いらしくて悶絶しそうでした!!」
「……まあいいでせう」
続いて2人が向かったのは射的の屋台。
パン!
ビシッ
パン!
ビシッ
パン!
ビシッ
「……なんで執拗にクマのぬいぐるみの眉間ばっかり狙うんだよ。しかも全部当ててるし」
「いざという時のための練習です」
「いざという時って……何の練習だよ。壁を背にする超A級スナイパーにでもなるつもりなの?……無表情なとこもそっくりだし」
パン!
ビシッ
「ふむ……眉が濃くなりそうですね。剃るのが大変そうです。あ、弾がもうない」
「もう終わりにしない?これで8回目だぞ。しかも全部クマの眉間狙いだし。全く落とせてないし」
「おじさんもう一回お願いします」
「聞けよ!」
「じょ、嬢ちゃん、これやるからもうやめてくれ。他の客が引いちまってるからな」
「そうですか残念です。クマはありがたく頂いておきます」
「まいど〜」
次はくじ引きだった。
カランカランカラン〜♪
「おめでとう!一等の商品の40インチの薄型液晶テレビだ!!お姉ちゃんやるね〜」
「おお!くらげちゃんすごいな」
「重くて持って帰るのめんどくさいのでいりません。代わりに四等のB級恐怖映像DVDボックスを下さい」
「「ええ!?」」
「………それは構わないけど、本当にいいのかい?」
「ええ。私が欲しいのはあのDVDボックスなのです」
「ちょっと待った」
「先輩どうしたんですか」
「そういうのは良くない。くじ引きというシステムを冒涜する行為だ」
「そうかもしれません。しかし、テレビはリビングにも自分の部屋にもこれより大きいのがありますし、現実問題、屋台の人にとっては四等よりも一等が残っていた方がお客さんも寄ってくるので商売的にもありがたいでしょう?」
「そ、それはそうだけど……」
「とにかく屋台のお兄さん、テレビの代わりに四等のDVDボックスを下さい」
「いいんだね?じゃあこれ。四等おめでとう」
「ありがとうございます。ふふ……先輩、これを一緒に見ましょうね」
「くそっやっぱりそうなるか……俺はホラー系はダメなんだが」
「知ってます」
「だったら……」
「一緒に見ましょうね?」
「……嫌だ」
「一緒に見ますよね?」
「見ません、断じて」
「一緒に見なさい」
「命令形かよ。嫌です」
「一緒に見てくれないと別れますよ?」
「脅迫かよ!?うぐ……りょ、了解です」
「では今夜我が家で」
「ええっちょ、いきなりは……心の準備が」
「案ずるより産むが易し、ですよ」
「その言葉は、始める前はあれこれ心配をするものだが、実際にやってみると案外たやすくできるものだというたとえであって正しくない」
「では他人の疝気を頭痛に病む、でしょうか」
「それは、自分に関係のないことで余計な心配をすることのたとえだ!!この場合自分にばっちり関係のある事例なので誤用だ」
「ふむ……ならば、幽霊の正体見たり枯れ尾花、はどうでしょう?」
「それは、恐怖心や疑いの気持ちがあると何でもないものまで恐ろしいものに見えること、また、恐ろしいと思っていたものも、正体を知ると何でもなくなるということのたとえなので正しい……というか諺に詳しいなくらげちゃん」
「先輩こそ、今日の突っ込みは冴え渡っていますね。ふふふ……楽しみです。今夜は寝かせませんよ?」
「この場合、その言葉は全く嬉しくない!!」
この神社の歴史はとても古く、そのためか境内がとんでもなく広い。
おまけに水月が屋台をひとつひとつ見たがるので、なかなか先に進まない。
いちいち見るのは構わないのだが、時々、毒の舌刀を抜いてテキ屋さんを凍りつかせるのはやめて欲しい。
「毒の舌刀とは失礼な。私はちょっと感想を述べただけですよ」
「ここのくじ引きはインチキだとか、この屋台は食品衛生法違反だとか、淡々とした口調で理路整然と言うのはどうかと思うぞ。くらげちゃんが苦言を呈した屋台から人が消えていただろうが」
「自然淘汰です」
「悪意ある情報操作だったろうが」
「個人の感想です。必ずしも正しいとは限りません」
「とにかく自重しろ」
「善処します」
途中で水月の同級生と会ったりして、広い神社の中ほどまで進んだところで俺の腹の虫が悲鳴を上げた。
「可愛い悲鳴が聞こえましたね」
「少しお腹が空いたな」
「ではここらで食事にしましょうか。先輩は何か希望はありますか?」
「そこの焼きそば屋はどう?」
「いいですね。それにしましょうか」
俺達は「味自慢!スーパー焼きそば」の屋台に向かった。
なんだよスーパーって、売っているのは普通の焼きそばだし。
「すいません、焼きそば二つ下さい」
「先輩は二つも食べるのですか?」
「え?いや、一個はくらげちゃんの分だよ」
「そうですか……おじさん、焼きそば一個なしでお願いします。代わりに冷やし中華一つ下さい」
「は?ここは焼きそばの屋台だぞ。冷やし中華なんてあるわけが」
「ハイよお嬢ちゃん!冷やし中華いっちょ入りましたぁ!!」
「あるのかよ!!」
続いて行ったのはかき氷の屋台。
「先輩、かき氷が食べたいです」
「了解。ここの屋台で買おうか。くらげちゃんは何味が好きなの?」
「レモンとイチゴとグレープとメロンとブルーハワイです」
「ここの屋台の全種類じゃん。それだと何を食べるのか迷うだろ」
「大丈夫です。すいません、全種類一個ずつ」
「おいおい、いくらなんでもそれは……アイスクリーム頭痛になるぞ」
「大丈夫です」
「おう!姉ちゃん久しぶり!相変わらずだなっ。ところで新作の梅味があるんだがどうよ!?」
「ではそれもお願いします。六つ買うのでサービスよろしく」
「おうよっ山盛りにしてやんよ!」
「先輩3個持って下さい」
「……わかった」
「つまみ食いはだめですよ」
「しないしないする気もない。うう…想像しただけで頭痛が……」
かき氷は全部水月が平らげた。
それもものすごい勢いで。
食べ終わっても彼女はなんら体に不調をきたしていないようだった。
どんな体をしているんだか……こっちは見ていて頭が痛くなったのに。
「『水月はどんな身体をしているんだぐへへ』とか下衆です変質者です近寄らないでください」
「言葉を足すな曲解するな」
「さて、お腹も満ちたところで、金魚すくいをしましょう」
「話を逸らすな……まあいいが」
「苦手なので先輩が代わりに取ってくれますか?」
「任せとけ。そうか、くらげちゃんも金魚とか好きだったか。可愛いところもあるじゃないか。家で飼うのか?」
「違います。うちの雪の晩ご飯です。だから先輩いっぱいとってくださいね?」
「!?雪って、くらげちゃんちの家猫か?」
「はい。雪はグルメなので。なるべく生きたままがいいですね」
「野生かよっ。家猫どこ行った!猟奇的で怖いよ!」
「そうですか?」
「ま、まあいい。じゃあ哀れな金魚さん達を掬いに行こうか」
「先輩、金魚さんとか言わないでください。感情移入してしまうでしょう。あくまで餌ですから、名前を付けるなら“雪のイケニエ”みたいなかんじでお願いします」
「…………うん、餌ね、イケニエね。雪ちゃんの晩ご飯を取りに行こうか」
「出来れば明日の朝ごはんの分もお願いしますね」
「お、おーけー。泥舟に乗った積もりでどんと来い」
「先輩、それだと沈没します」
屋台で花火が売っていたので、それを買い、神社の境内で花火をすることにした。
なぜか神主さんと知り合いだった水月は許可とバケツをもらってきた。
パチッパチパチッ…パチッパチパチパチッ…
「綺麗だな」
「……足りませんね」
「ん?」
「火力が足りません。もっとドーンと派手なのがやりたいです。ちまちました線香花火は見ていてイライラします」
「こういうのはムードを楽しむものじゃないの?」
「丑三つ時でもないのにムードもへったくれもありませんよ」
「うん、そういうムードじゃないよ俺が言いたいのは」
「?」
「まあいいや。あ、落ちた」
「私はまだ落ちていないので先輩の負けですね。約束通り、今夜は夜通しDVD鑑賞に付き合ってもらいます」
「も、もう一回勝負しない?ね?もう一回だけ」
「5回連続負けた先輩に慈悲はありません。仏の顔も三度まで、涼白家の顔は五度までです。ふふふ…今夜は何があろうと先輩を私の部屋に連れ込みます」
「彼女の部屋に夜尋ねるという嬉しいはずのシチュエーションが死刑執行に感じるよ!!あと普通男女逆じゃね?くらげちゃん男らしすぎません?」
「女子力高い先輩に言われたくありません。兎に角DVDはBOXなんですから時間はいくらあっても足りません。行きますよ先輩」
「いやだ〜!!誰か助けて!!」
「……問答無用です」
「いやぁぁ〜……」
そしてその夜、とある少女の部屋にて……
「ぎゃああああああ!!!うわっ!!ひいぃぃ!何何何何やめてこないでっお願いだから出てこないで!!いやイヤイヤ無理無理無理!!!もう十分だから止めてぇ!!」
「先輩♫ここからがイイところですよ?ね?ほら顔を覆う手をどけて♩」
「なんでそんなにいい笑顔なの!?いつもの無表情はどこ行ったの? ていうかもうムリだから!!音量を下げて!!……なんであげるんだよぉぉぉおおおおお!!!」
「音量を下げたら怨霊の叫び声が小さくなってしまうでしょう?それに先輩の可愛い悲鳴も小さくなってしまうので断固却下です♫」
「上手いこと言ったつもりっって何これまたなの?蒼白い黒髪の女はもうお腹いっぱいだから!!!イヤイヤもう十分だよぉぉ!………え………なに?……きゃああああああ!!!!」
「怖くてもツッコミを忘れない先輩素敵です。ふふふ……まだ半分ですよ?もうちょっと頑張りましょう。天井のシミでも数えておけばすぐですって……何が見えても知りませんが」
「天井に視線を逃す作戦がダメになったよ!とにかくはやく朝になってくれぇぇぇぇえええ!!!!」
「ふふ……♩」
悲鳴は明け方近くまで響いたという……
お読みいただき、ありがとうございました。
誤字・脱字や誤用などを発見したらご報告下さるとありがたいです。
本年も『くらげちゃん』を宜しくお願いします。