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冷やし系少女と買い物のお誘い

一ヶ月近く空けてすみません。お待たせしました。

 文化祭の会議はつつがなく終了したようだ。

 伝聞形になっているのは俺が会議の途中から終わりまで冷たい廊下の床に膝からつま先までをピタリとくっつけていたからに他ならない。なぜそうなったかは前回の話を読んでもらえればよく分かるだろう。


 さて会議で決まったのは

・外でお茶会をすること(雨天時は部室)

・お茶会の宣伝ポスター作成

などである。詳細はこれから詰めて行く予定だ。文化祭の準備期間は長いようで短い。中間テストの勉強と上手く両立しつつ頑張らねば。


 閑話休題。


 ちなみに「閑話休題」とは、脱線していた話を本題に戻すという意味であって、新しい話題を始める前に置く四字熟語ではないので要注意である。つまり今の使い方は間違っている。


 閑話休題。


 廊下でお行儀良く正座をしていた俺は、水月の情け深い対応によってなんとか後輩達に無様な姿を見せずに済んだ。茶道で慣れているとはいえ、30分近く硬い床の上で正座していたのでさすがに足がやばい。何ともない様に立っている風に偽装しているが、足を小指でツンとつつかれただけでもおしまい。悶絶不可避である。


「カゲ…熱墨先輩 」


 会議室のパイプ椅子で未だぷるぷるしている足の痺れが取れるのを待っていると、何故かすぐ隣に座っていた雉下(きじもと)が声をかけてきた。


「え?ああ。何か用かな?」


 話し合いが終わったので会議室に残っている茶道部員は10人も居ない。大体の部員は楽しく歓談に興じているが、無言で座っているのは俺だけである。

 まさか雉下は俺の足の痺れを見抜いて?やばい。先輩の威厳とか男のプライドとかなんか色々な危機かもしれない。

 俺がたらたら背中に冷や汗をかいているのを余所に雉下はなんだか覚悟を決めた様な顔で口を開いた。


「熱墨先輩は今日放課後暇ですか?」

「へ?」


 思わぬ問いかけに思わず変な声が出てしまう。なに?放課後暇かって?まさかデートのお誘い!?俺恋人いるんですけどっ。


「きょ、今日放課後お時間があれば、少し付き合って欲しいのですが」

「え、え〜っと…」


 付き合う?いやいやそうじゃないだろう。いくらなんでも虫がよすぎる。自意識過剰も甚だしい。多分勉強を見て欲しいとかそんなところだ。今週末の土曜日に勉強会をやることが決まったが、女子三人よればなんとやら。そもそも勉強とは1人でするものだし、集まるのだって試験勉強の息抜きみたいなものだろう。だからそれを見越した真面目な雉下は分からないところを今のうちに聞いてしまおうという訳なのだ。なんて感心なんだ。俺には過ぎた後輩だよ。


「だめですか?」

「か、構わないよ」


 頬を染めて上目遣いはやめて下さい。彼女がいると言ってもポニーテールの美少女にそんな潤んだ目を向けられてたじろがない男子高校生はいないよ!


「良かった!結構困っていたんですよ。来週いきなりですし」

「雉下はきちんと勉強しているんだな」

「ふぇ?い、いえそんなことないです……」


 手でぱたぱた仰がない頬を染めて俯かない!あり得ないって分かっていても勘違いしちゃうから!小悪魔か!

 やっぱり思っていた通りだ。多分雉下はきちんと計画して勉強するタイプ。土曜日も勉強の予定が入っていたのだろう。


「勝手に曜日を決めて悪かったな。なんなら別の日に移す…」

「ダメです!!!」

「お、おう」


 俺が言い終える前に食い気味にそれを遮り、勢い良く詰め寄る雉下。これ以上予定が狂うのは駄目ということかな。よく分かったから顔を近づけるのをやめて下さい。綺麗な顔と清涼感のある甘い香りがいろいろと不味いので。


「と、とにかく落ち着こう」

「っっと、す、すみません!」


 素早く反応して離れてくれる雉下だが、顔は赤いし目がうるうる揺れている。そういう仕草に男は弱いのだからやめて欲しいな。


「そ、それで?」

「あ、そうでした。そ、その土曜日に勉強会があるじゃないですか。それで思ったより早かったので……」

「ああ、勉強の予定が狂ったから分からないところを」

「……その日のための洋服を選んでもらえないかと思いまして」

「ん?」


 今なんて?


「もう1度」

「?ですから勉強会に着ていく服を選んで貰いたいのです」

「お洋服……ん、んーなるほど。買い物の同行か。なんで俺に?」

「それはもちろんカゲ様の好みの女の子になりたいからです!」

「へ?」

「?……うわああああああ!!!違うんです違うんです!!今のは口を滑らs…言い間違えです!カゲ…熱墨先輩のセンスでコーディネートして欲しいからです!!」


 雉下は自分の発言の意味を分かっていなかったのか、一瞬きょとんと首をかしげると、火山の噴火のように急激に赤面し、手をしっちゃかめっちゃか動かして前言を撤回訂正した。


「そ、そうか」


 さすがにびっくりした。言い間違えと言うには苦しい気もしたが、真面目な雉下のことだ。言っていることは真実なんだろう。勘違いをする余地も白地もなく。それにしても俺の感覚で服を選んで欲しいなんて大丈夫なんだろうか。自分の趣味嗜好は古風と言えば聞こえはいいが、いつかの水月の言うとおり黴臭くてじじくさい。地雷臭しかしないのだがそこのところはどうなんだろう。


「だけど自分のセンスに自信はないぞ?決して。今風の洋服なんて分からないし流行なんて知らないんだが」

「それがいいんじゃないですか!」

「そ、そうか」


 そこまで言うのなら仕方が無い。自分なりに頑張ってみよう。


「分かった。じゃあどうすればいい?」

「そ、そそそれでは早速……」

「ストップです」


 何故か突然挙動不審になった雉下ーーと言っても先ほどから普段の冷静沈着な雉下らしからぬ態度だった気もするがーーに待ったをかけて割り込んできたのは茶道部1年の山泣(やまなき)だった。


「どうした?」

「…山泣さん」


 心なしか残念そうにつぶやく雉下。冷静さを取り戻したようだけど、その目の奥がメラメラ燃えているように見えるのは気のせいか。

 対する山泣は僅かな焦燥と安堵が入り混じった様な顔をしている。


「そのデート、私も行きます」


 チラッと雉下の方を睨むと山泣も買い物への同行を申し出た。


「デート?」

「山泣さんっ!?」


 首をかしげる俺と再び真っ赤になる雉下。 それにしてもデートとはこれいかに?その疑問に答えるように山泣は右手の人差し指を天井に向けてピンと立てた。


「若い男女が2人きりで買い物に行く。これをデートと言わずしてなんと言うのですか?それに熱墨先輩は涼白さんという恋人がいるのですよ?どう考えてもだめでしょう」

「で、でも……」

「デモも抗議もありません。とにかく2人きりというのはだめです。よって私も同行します」

「それとこれとは別でしょう!?」

「いいんじゃないか?」

「熱墨先輩!?」


 なぜ雉下が頑なに山泣の同行を拒むのかは分からない。2人は仲が悪いというわけでもないしな。それに山泣の言うことも最もである。もしあのまま雉下と2人きりで買い物に行ったら後でどんな極刑が待っているかしれたものではない。くわばらくわばら。

 そんなことを考えていると、メールの着信を携帯の振動が伝えた。水月からだ。それを開けて読むと背筋が凍った。


『件名:心外です


極刑とはなんですか極刑とは。先輩は恋人に対する評価を改めるべきです。どこの世界にこんなにも愛らしい癒し系少女がいるというのですか?

それはさておき、ショッピングに行くなら多分雉下さんの事ですから雛罌粟(ひなげし)ショッピングモールでしょう。そこに入っているお店でお土産にアイスをお願いします。私がチョコミント……え?はいはい…失礼、如月姉さんのベリーベリーストロベリー……え?違うんですか?はいはい。チョコレートクッキークラックルを買ってきてください。後は適当に。可愛い小物もあると嬉しいですね。では火遊びもほどほどに。』


 怖い。水月ちゃん怖すぎ。エスパーか何かなの?会話するスピードでメールを打てるのは流石女子高生と言ったところか。あと癒し系じゃなくて冷やし系だよ君は。

 ともかく許可も下りたことだし、怒られない程度に買い物を楽しもう。

 恐怖の着信(?)からふと目を上げると、いつの間にか人数が増えていた。雉下と山泣に加えて、湯々本(ゆゆもと)布枕(ぬのまくら)がいる。


「えっとどうなったんだ?」

「とりあえず雉下さんは納得してくれました」


 山泣がそう答えた。雉下を見ると口をへの字にしていて不満そうだ。そんなに皆で行くのが嫌なのか?


「そうではないですよ熱墨先輩。鳴撃(なげき)さんは熱墨先輩と2人きりじゃないと…」

「わあああああ!!雨香子(うかこ)だめ!!!」


 湯々本が何か言いかけたが、涙目になった雉下に取り押さえられて最後まで話すことは叶わなかった。目尻に雫を浮かべた雉下を見てころころと笑っているからわざと煽るような事を言ったのだろう。水月に負けず劣らずなS気質だな。


「布枕も行くのか?」


 そう問うてみると、いつも持っている枕をぎゅっと抱きしめてこくんと頷く布枕。相変わらずあまり喋らないな。


「何か買うものでも?」


 布枕は再びこくんと頷く。


「何を買うんだ?」

「………新しい枕と枕カバー」


 布枕は見ての通り睡眠が趣味であり、いつどこでも寝られるようMY枕を常に携帯している。水月が言うには高級ホテルのものから人間工学に則った最新のものまでありとあらゆる枕を集めて日々より良い睡眠を研究しているらしいが、新しく発売されたのでもあるのだろうか?最近不眠気味だから彼女にいい枕が無いか聞いてみるのもいいかもしれないな。


「それに……」

「それに?」


 布枕は言葉を切り、ふゆ〜と息を吐くと眠そうな目でこちらを見てくる。


「……面白そうだから」

「?」


 それ以降質問しても一向に答えてくれず、会議室の机に枕を置いて寝てしまったので彼女の意図していることは分からなかった。というか、行く時になったらちゃんと起きるのか?

なんだかコロコロ展開が変わって申し訳ありません。また、更新も一ヶ月以上も滞っています。本当にすみませんm(__)m

次回更新はできれば4/25までに更新したいと考えてます。

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