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~6時間目~

~6時間目(さぼり中)~


「んで、何から知りたい?」


海馬部長は机に座っている。どちらかというと椅子に座るより机に座るほうがしっくりくる体系でもある。

身長だけでない、存在が威圧的だからだ。


だが、海馬先輩が向いているのは私たちの方向じゃなかった。向いているのは柿崎先輩のほうだった。

柿崎先輩が言う。


「このメールがさっき届いたのよ。でも、本当に未来からメールなんてくるのか?成りすましメールじゃないの?」


柿崎先輩の話を聞きながら確かにこれが壮大ななりすましメールだったらと考えてしまった。

リムトがそばに寄ってくる。


「どう思う。未来からのメール説かなりすまし説か」


目の前に不思議なボックスがある。そしてつながっているパソコン。私はこの元になった学術書を取り出した。

普通に考えるとタイムマシーンを作るとなると光速で動くものが必要になる。

いや、未来に行くだけならジェット機で飛び続けたら数秒だけは周りとは違う未来に飛び立てる。けれど、過去に行こうとすると光速より速く動かないと実現しない。

一度光速より速いニュートリノが発見されたとニュースになった。だが結局は間違っていた。

この学術書は光速で動く物質に強い磁力をかけて引き寄せる。つまり光速で動いているもを違う力で加速させようというものだ。

電力と電磁場。この目の前の大きな箱が磁力を生み出すものらしい。

理論的になりたつのかまで私にはわからない。

ただ、それを実験として行おうとしたのはこの海馬部長だ。

海馬部長が言う。


「柿崎にきたメールってみせてくれるか?」


柿崎先輩は「はい」といって携帯を海馬部長に見せた。海馬部長が絶句する。


「柿崎、消去法で話していくが、まずこのメールアドレスは何人が知っている?」


そういわれて今朝自分に来たあのメールを思い出した。

私は学校にはフリーアドレスしか教えていない。プライベートのアドレスを知っているのはここにいるメンバーと家族くらいなものだ。

柿崎先輩が言う。


「プライベートアドレスなんて知っているのってこのメンバーと私と家族、あとは友達くらい。でも、アドレスなんて調べようと思ったらいくらでも調べられるでしょう」


花音先輩が頷いている。

いや、花音先輩はどこにでもすぐハッキングできるからでしょうって突っ込みそうになった。

普通の人は特定の人のプライベートアドレスなんて当人が教えない限り知ることができない。

それに、教えてくれたとしてもそれがメインアドレスかどうかもわからない。

私だってアドレスは複数持っている。多分ここにいるみんなも同じだろう。


「いったいなんてメールが来たんですか?」


私は柿崎先輩にそう話した。

柿崎先輩は携帯の画面を見せてくれた。そこにはこう書かれていた。


「部員全員で挑まないと未来は変わらない。だから参加すること」


そう書かれていた。

柿崎先輩は言う。


「海馬はいいの?お見舞いにいかなくても。だって毎日行っているじゃない」


柿崎先輩は少し涙目になっていた。海馬部長が言う。


「俺だって、奇跡を信じている。喜勢がいつか目覚めるって。なぁ、柿崎これから二人で病院にいかないか?今から行って、夜間訪問の申請をするんだ。少しだけ顔を見て戻ってこよう。今からなら十分間に合うはずだ。それに買いたいものもあるしな」


海馬部長が言う。海馬部長が見舞いに行っているのはさっき委員長から聞いた「喜勢」という人だった。

私はあまりにも周りに無頓着すぎたのかもしれない。

今日という日が来なかったら海馬部長が見舞いにいっていることも気が付かなった。

いや、海馬部長のことだけじゃない。天野や木田のことだってそうだ。

自分に関係のない人に興味なんて持っていなかった。いや、自分の足や家のことでいっぱいいっぱいだったんだ。

海馬部長がこっちを向いて話してきた。


「というわけだからすまない。授業をさぼらせたのに俺と柿崎はこれから市の病院に行ってくる。多分1時間半くらいで戻ってこられるはずだ。確認をしておく」


そういって海馬部長はホワイトボードに向かって名前を書きだした。

一番上は海馬部長、次に柿崎先輩、花音先輩、次に私、リムト、みりあの順だった。


「花音は部室にずっといるでいいな」


海馬部長が言う。花音先輩が親指を立てながらいう。


「一人で問題ない。プログラムの修正中。戸締りをしておくから部室に入る前は携帯に連絡すること。引きこもっているので安全」


そういうとすぐに画面に向かってキーボードをたたき始めた。

花音先輩が一番プログラムに強い。一人でPCを2台占領している。


「じゃあ、次は高坂だ」


リムトが頷く。


「高坂はまず新城を家まで送っていけ」


私はびっくりした。リムトはみりあの護衛のはず。私は言葉を発する前に海馬部長が言った。


「今日はこれから雨だ。さっきメールにあった通り全員がいないと解決できないらしい。雨で何かが一番あるのはお前だ」


そう海馬部長に指を差されながら言われた。さらに海馬部長は続ける。


「大丈夫だ、高坂は新城を家まで送ったら速攻で佐々木のバイト先近くで待機だ」


みりあが言う。


「バイト先の向かいに喫茶店があるからそこからだと確認もしやすいと思うわ」


「なら、それできまりだな」


海馬部長が言う。


「新城は、家で用事を済ませたら、まず携帯ショップに行け。お前の携帯は今日落雷の影響で使えなくなる。その後でも連絡がつけられるように新規契約を行っておけ。新しい携帯の連絡先は確定したらすぐに部員全員に連絡すること。連絡がつかなくなることが一番危ないからな。そして、その後すぐに部室に来ること。部室で旧携帯を花音に渡したら部室から時計塔及び写真部の部室を注視すること。新城に危険があるのは木田だ。どこでどうつながるのかわからないが木田の動きをマークする必要がある。だが、部室からは出るなよ」


私は頷くことしかできなかった。さらに海馬部長が言う。


「後、念のためお前は1学期の時につかっていた手を入れるタイプの杖って、わかるか。あれを持ってきておくように。色々思うところはあるかもしれないが今は歩けなくなるほうが怖い」


いやだと言っても多分聞き入れてもらえないと思ったのでこれまたさっきと同じく頷くだけだった。


海馬部長が言う。


「最後に俺と柿崎だが、柿崎は病院に行った後は佐々木のバイト先付近に行ってほしい」


柿崎先輩が言う。


「高坂と合流すればいいんだな」


だが、すぐに海馬部長が右の手のひらを向けてこう言った。


「いや、高坂と合流するのではない。高坂とは別の場所で天野を探してほしい。もし先に高坂が天野を発見したら天野のいる場所を柿崎に伝えてほしい。何かあるとしたら佐々木になんだろう?」


そう言いながら海馬部長は私を指差した。

その通りだ。

私は家の用事もすっぽかして雨の中でかける用事と言ったらみりあのことしかない。みりあもどういう表情をしていいのかわからず下を向いている。リムトが遠くを見ながら音は出ていないが口笛を吹くそぶりをみせている。

多分、リムトが海馬部長に何かを言ったのがわかった。同じくみりあもそのリムトを見て同じことを思ったに違いない。

海馬部長が言う。


「そして、俺だが病院に行った後ホームセンターで買い物がある。用事は避雷針の増強だ。未来を変えることをするが一番怖いのは落雷がずれることだ。だから避雷針を延長させる。そして、その作業が終わったら俺は時計塔の1階で待機する」


私は声を荒げてこう言った。


「危ないですよ。何考えているんですか?未来の私はそこで命を落とすのかもしれない場所なんですよ」


柿崎先輩は涙目になりながら海馬部長を見つめている。海馬部長が言う。


「何が起こるのかはわからないがこの場所にもし誰かが居たほうがいいのなら俺がいるのが一番だ。それに相手が襲ってきたとしても返り討ちにしてやる」


海馬部長は自分の拳と拳を胸の前でぶつけて話した。そしてもう一言。


「もう、誰かが傷つくところなんか見たくないんだよ」


そう言うと海馬部長は「行くぞ」と柿崎先輩の腕をつかんで出て行った。


「どうしよっか」


みりあが言う。海馬部長から詳細を聞く予定だったのに何も聞けなかった。そう言えば喜勢という人と海馬部長との関係って一体何なんだろうって思った。

リムトが花音先輩に話しかける。


「花音先輩は海馬部長と喜勢という人の関係って知っていますか?」


花音先輩は手を止めずに話し出した。


「あなたたちが何を知りたいのかわからない。けれど、私が知っていることを話すことであなたたちが勝手に満足するのならば話してあげるわ」


相変わらず回りくどい人だ。3人ともきょとんとしていたら花音先輩は勝手に話し出した。


「喜勢先輩は去年の生徒会長、そして副会長は海馬先輩だった。そして、柿崎先輩と3人は幼馴染だった。成績は3人がいつも上位を締めていたと聞くわ。教師がテストの問題を難しくしようとしたのもこの3人がいたためだったとか。おかげでその難易度が全校内に広がったのだから迷惑だったものね」


いや、花音先輩、あなたも全教科満点じゃないですか。なんて突っ込みを入れそうになった。

私とみりあが中間テストで全教科満点を取ったら教師が「今年も満点とる生徒が出たか。しかも二人も」と言われたのを覚えている。その時に花音先輩のことを知ったのだ。

ま、だからこの科学研究部に興味を持ったのも事実なのだが。しかも部員にいる3年生二人もずっと全教科満点だと知ったのだった。


「ということは喜勢さんも」


リムトが聞くと花音先輩は普通にこう言った。


「ええ、その代は全教科満点が3人いたそうよ。教師はテストのたびに難易度をあげているらしいけれど変わらないらしいわ」


みりあがそのセリフを聞いてぼそっと「だからあの期末テストあんなひっかけ問題があったのか」と言っていた。

そう言えばみりあは期末テストで2点だけ落としたと聞いた。どこの場所を間違えたのかなんとなくわかった。

あれは出題した教師の性格が反映されている問題だった。性格を考えればひっかけに気が付ける問題だが、普通のテストと思って挑んだみりあには分が悪かったのだと思う。

リムトが続ける。


「そして、その3人はどういう関係だったんですか?」


花音先輩が言う。


「3人とも外部生だったそうよ。ま、内部上りがテストで満点を取らないから教師が躍起になっているらしいのだけれど。って、関係ない話しだったわね。

3人は中学も一緒だったらしい。よく生徒会長の喜勢先輩と副会長の海馬先輩は意見がぶつかり合っていたらしいし、その調整役に柿崎先輩が入っていたらしい」


淡々と話す花音先輩は不思議だった。手を止めることもない。花音先輩が話すをのやめると部室にはキーボードをたたく音だけが響く。

化学室の近くには教室はない。なんだか変な静寂があった。私の思いとは違って花音先輩は話し続ける。


「そんな時不運な事故があった。ちょうど中等部の男の子が生徒会室にやってきたのだ。どうやら書類を内部の進学生名簿を持ってきたらしいのだけれど迷子になったらしい。そこに通りかかったのよ、柿崎先輩が」


「え?」


思わず声を出してしまった。ここで手助けしたのが喜勢さんだと思っていた。そこで助けた優しさで天野の行き過ぎが起きたのだと。私は黙って続きを聞いた。


「その後、柿崎先輩の周りにその男の子がまとわりついてきた。けれど、柿崎先輩はまったく相手にしなかったし、気にもしてなかった。いや、柿崎先輩が気付かないように喜勢さんが間に立ってそうよ。手紙は先に喜勢さんが破いていたし、帰りだって鉢合わせしないようにうまく調整していた。そのあたりさすがだったらしいよ。そして、喜勢さんはその男の子にやめさせようとした。その男の子が柿崎先輩を呼び出した屋上で。

でも、そこでもみくちゃになって屋上から落ちたらしい。フェンスの一部がさび付いていたらしく押された反動で留め金が外れたらしい。大事にしたくなかった理由は柿崎先輩に知られたくなかったらしいの」


「花音先輩はどうしてそのことを知っているんですか?」


私は疑問をぶつけた。海馬部長が多分情報操作をしたのだろう。だとしたらこの事実を知っている人がいることがおかしい。花音先輩が言う。


「ええ、本来なら知ることはできないことだと思うわ。私が第一発見者でなければ。落ちてきた喜勢さんは私に伝言を託した。次に来たのは海馬先輩と柿崎先輩だった。私は柿崎先輩に救急車を呼びに行かせるとともに海馬先輩に喜勢さんからのお願いを伝えたの。その後よ、この部活を作ったのは」


みりあが話す。


「多分、柿崎先輩は気が付いているんじゃないですか?だから毎日お見舞いにいくんじゃないですか?」


けれど、本当に気が付いていたらあんなに明るくいられるのだろうか?いや、気が付いているからこそ、気を使っている周りに負担をかけたくないだけなのかも。

そう、私みたいに。そう思うとちょっとだけ柿崎先輩という人がわかったような気がした。

いつもテンションが高く、元気いっぱいで海馬部長に猛アタックをしているだけの人かと思ったらそうじゃなかったんだ。

花音先輩が続ける。


「だから、この部活ができた理由も行いたかった理由も知っている。だからこそこの実験を成功させたい。でも、たまに思うこともあるわ。間違いや失敗することも必要なんだろうってね。もういい?」


気が付いたら花音先輩の手が止まっていた。おそらく花音先輩にもこのタイムマシーンを完成させたんだ。多分、もっと過去にさかのぼれるようにしたらどうしたらいいのかを考えていそうだ。

私もできるのなら過去を変えたい。いや、私だけじゃないおそらくみりあもそしてリムトも思っているはずだ。


「わかりました。では、僕は佳ちゃんをこれから家に送ってきます」


リムトはそういいながら花音先輩に深くお辞儀をした。柿崎先輩がいたら海馬先輩は話をしなかっただろう。

私はみりあに「行ってくる」と伝えて部室を後にした。部室を出るときに深々と花音先輩にお辞儀をした。花音先輩は右手だけを上にあげて手をふっていた。モニター越しに見えた花音先輩は少しだけ笑っているように見えた。


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