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~昼休み、5時間目~

~昼休み~


私たちはお弁当を持って科学研究部がある科学準備室に向かった。

だが、そこには先客がいた。そこにいたのは2人だった。

ひとりはこの部活の部長である海馬部長だ。3年生であるこの海馬部長はかなり変わった人だ。

まず風貌だが、黒縁メガネに髪は肩までの長さ。いつもヘアバンドで髪を上げている。少しおもながな顔に鋭い眼光。そして180センチはある長身。格闘技でもしていたのかと思うくらい体格もいい男性だ。

なぜこの人が科学研究部にいるのかわからない。運動部から誘いを受けたらしいが全て断ったらしい。けれど、何かを探していることだけは知っていた。

後もう一つ海馬先輩は恐ろしいくらい明るくて強引だ。

海馬先輩がこちらを見る。


「おお、お前たちか。よく来たな。あのメールか?」


海馬先輩が満面の笑顔でこちらを向いて話してくる。そして、海馬先輩の奥にもうひとりパソコンに向かっている人がいた。その人は花音先輩だ。花音先輩は絶対に苗字で呼ばせてもらえない。苗字は松下さんなのだが、どうもその苗字が嫌いらしい。

だから、呼ぶときも花音先輩と呼ばないといけない。だが、実際名前は花音でもない。

結構めんどくさい人でもある。本名は「松下香」というのだ。けれど海馬部長も含め誰もその名前では呼ばない。

花音先輩は148センチと背が低い。そして真っ黒な長い髪をして、前髪は真っすぐに揃えている。

白い肌に子供のような体型。そしていつもピンクのうさぎのぬいぐるみを手に抱えている。

花音先輩自身を私は人形のようだといつも思って見ている。年は1つ上なのだが、小学生にも見えるから不思議がくらいだ。

海馬先輩が花音先輩に向かってこう言った。


「んで、実際そのパソコンからさっき言った3通のメールは見つかってないんだよな」


花音先輩が言う。


「ええ、未来の私たちが送ったメールかもしれない。ふふ」


ぼそっと話す花音先輩。松下さん呼んだ時とあのピンクのうさぎのぬいぐるみを取り上げた時以外はおとなしい人である。あのピンクのぬいぐるみについては学校も黙認をしている。みりあが海馬先輩に向かって話した。


「未来からのメールってどういうことなのですか?」


確かに気になっていた。もし、未来からメールが来るのなら今朝来たメールは本当に未来の自分が送ったメールなのかもしれない。そんなことってありえるのだろうか。

海馬先輩が言う。


「今朝7時に俺の携帯にメールが入った。内容は

 『19時計塔避雷針に落雷。実験を実行しろ』とあった。今作っているのは過去にメールを送るいうなればタイムマシーンだ。だが、こいつには問題があった。必要になる電力量がはんぱない。夏場に落雷でも起きない限りこのシステムは使えないんだ」


リムトが聞く。


「どうして夏場でないとダメなんですか?」


海馬先輩が頭を書きながら言った。


「夏と冬だと雷の性質が違うんだ。夏は電子が雲から地表に、電流は地表から雲に流れるだが冬はこれの反対なんだ。まぁ、冬になったら冬仕様に作り変えようかと思っていたが予算が足りてないんだわ。それにおそらく電圧10億Vがかかるため1回でこのパソコンなんかは壊れるはずだ。つまりこの実験は1回で用意したものすべてが壊れるけれど、過去にメールが遅れるということなんだ。これでいいかな。高坂くん」


リムトはさらにつづける。


「原理はわかったのですが、いつ落雷になるのかわからないのにどうやって知らせるメールがくるんですか?」


海馬先輩は人差し指を突き出して自慢げにこう言った。


「そう、そこなんだ。いつ落雷があるかわからないから落雷があったら1通だけメールが送れるようにセットしておいたんだ。そのメールを見たら実験できるようにしてある。だ から、『19時計塔避雷針に落雷。実験を実行しろ』が一番古く、その次が招集メールと花音が受け取ったメールが次だと思うんだ。まぁ、何回か実験を重ねた結果なんだろうな」


海馬部長はかなり悦に浸りながら話している。どうやら未来の自分が今の自分への課題を楽しんで受けているみたいだ。リムトはそんな海馬部長を見て納得したようにうなづいた。海馬先輩が続けて話す。


「んで、今朝俺とこの花音にメールが届いたこと。それと、そのあとに部員全員を招集するメールが届いたこと。それを確認しに来たんだ。いたずらだったら困るからな」


花音先輩が話す。


「誰も招集メールなんかしていない。つまり未来の私たちが部員を集めたってことがわかった」


海馬先輩が言う。


「まぁ、とりあえず弁当でも食べながら話すか。どうせあと1人きたら部員全員集まるんだしな」


海馬先輩がそういった後ですぐに科学準備室の扉が開いた。


「海馬、あのメール送った?」


走ってきたのはこの部活の副部長の柿崎先輩だ。

柿崎先輩はツインテールが特徴のすらりとして、目鼻立ちがはっきりしている人だ。

校則で認められていないけれどいつもニーハイをはいている。

この学校の特徴なのかもしれないが、成績上位者には先生はあまり何も言わないみたいだ。

不思議な縁なのかもしれないけれど、3年の学年トップは海馬先輩、学年2位はこの柿崎先輩だ。

花音先輩も2年の学年トップだ。

そういう意味ではこの科学研究部は変な集団だ。

唯一成績が悪いのはリムトだけだ。けれど私は思っている。リムトは本気になれば多分もっと成績がよくなるはずだ。ただ、リムト自身が本気になることがないだけだ。

リムトの思いは小説に向かっている。いや、誰かに届ける時だけに本気になっているのがわかる。

受験の前日にチャットをした人も聞いたら、ネットで出会ったその人に向けて書いた小説だったから、そしてその日しかチャットが出来なかったからと聞いた。

だから、自分のために頑張ることはないのを知っている。高校受験のときもみんなと同じ高校に行くという理由があったから本気になったのだと思う。


「ああ、今朝未来の俺から決行時間を知ったからな。後は確定した未来を変える実験をするだけだ。だが、何かいい出来事があればいいんだけれどな~」


海馬先輩がそう言った。その時みりあが話し出した。


「海馬先輩、実は今朝佳ちゃんにメールが着たんです。ちょうど7時に。これって未来からのメールだったらこの未来を変えたいです」


そう言ってみりあは机の上においてあった私の携帯を海馬先輩に見せた。海馬先輩が言う。


「う~ん、確かに携帯から送ることは可能だけれどよほどじゃない限りしないな。だが、このメールが本当に未来から来ているのなら部長として部員を守るのは使命だ」


海馬先輩はふいに立ち上がってこぶしを天に上げだした。

どうやら一人でテンションが上がったみたいだ。リムトが言う。


「海馬先輩、この過去にメールを送るシステムですが、どういうルールがあるんですか。さっき言った携帯から送るのはよほどじゃないとしないといっていたので」


海馬先輩はあごに手を当てて話し出した。


「まず、システムは正直わかってない。ただ、出来ることは過去にメールが送れるが戻れる時間は最大で12時間前まで。文字は40文字以内。一回のメール送付数は7通までだ。すでにオレに1通、花音に1通来ている。そしてみんなを招集するためのメール。これで3通だ。この新城からのメールも入れるとすでに4通。後3通までは過去にメールは送れるが、ここから先は過去に送るメールは吟味しないといけないな。なんせ、新城を無事に守らないといけないからな。後それと、携帯から送った場合だが、携帯をパソコンにつなぐ必要がある。だからつないだ携帯も落雷の影響で壊れるはずだ。だから、携帯が壊れた後のことも考えておく必要があるな」


なるほど。確かにパソコンが壊れるのだから繋がった携帯も壊れるのもわかる。

40文字か。私は自分に来たメールを再度開いた。


「今日、君は19時に死ぬ。未来を変えたいなら

「木田崇」に気をつけ、時計に近づくな」


数えると40文字だ。携帯を見ていたら柿崎先輩がこう言って来た。


「って、ことは今日19時に部室にいなきゃいけないの?私用事があるから帰るよ」


そういわれてふと思った。どうして私は19時学校にいるのだろう。同じことをどうやらみりあも思ったらしい。


「佳ちゃん、いつも19時っていったら家にいるよね」


それを聞いた花音先輩が話して来た。


「多分、未来では家にいたけれど学校にいかないといけない出来事がおきたと考えるのが普通ね」


リムトがずっと考え込んでいる。その横で海馬先輩が話して来た。


「とりあえず、今わかっているのは『木田崇』という名前だな。ちょっとこの『木田』が今日何をしているのか調べるのが早いのかも知れないな」


そういうなり柿崎先輩がこう言って来た。


「19時が危険なのなら、19時に学校に来なければいいんじゃないの?」


柿崎先輩はツインテールの先をいじりながらけだるそうに言っている。

柿崎先輩は科学技術部に所属して副部長をしているけれど、実際科学に一番興味を持っていない。

多分この人は海馬先輩を気にしている。けれど海馬先輩はそのことに気が付いていない。いや、気が付いているのかも知れないけれど、一切そういう想いをもっていないように見える。

恋をするってお互いがお互いを好きになるということなのにこれほど上手く行かないものはない。この方程式はどこの参考書にも答えは書かれていない。

つまり解こうとして解ける問題じゃないってことなんだと思う。多分なんとなく解けてしまったけれど、その理由はわからない偶然の産物なのかもしれない。

私だってみりあとのことはどうにかしたいと思っている。動かないとひょっとしたら誰かのものになってしまうかもしれない。

今までそんなことを思った事はなかった。けれど、今回は天野からの告白を断ったけれど、いつまでもずっと断り続けるかなんてわからない。未来はわからないのだから。


「そういうわけにもいかないんだ」


海馬先輩の声で私は妄想から戻された。海馬先輩は続けて話す。


「これから起こる未来は確かに決まっていない。けれど、すでに未来から送られてきたメールは今の私たちにとっては過去になってしまっている。今日来たメールがもし未来から来ていなかったら違う『今』になってしまう。普通過去から未来へは1本の道でしかない。けれど、過去を分岐させるということは今の世界は本流でなくなるってことだ。自分たちの足場を壊して自分たちの世界を壊すことになるだけだ」


「タイムパラドックスですね」


リムトが言った。柿崎先輩が言う。


「タイムパラドックスって、過去にもどって自分の母親と恋におちて自分がうまれなくなるとかいうやつでしょう。今回はメールさえ送っていればタイムパラドックスは起きないはず。ならば携帯だけ今日この部室に置いていって後は家に閉じこもっていれば安全なんじゃないの?」


確かにそうだ。だが、私がこの時間に家を出て学校に向かう理由なんて多分一つだろう。私はみりあを見た。多分今日の19時にみりあに何かが起きるんだ。それを私は助けに行くために学校に来る。

でも、どうして19時にみりあは学校にいるんだ。私はみりあに聞いてみた。


「みりあは今日19時って何をしている?」


みりあは少し困った顔をした。海馬先輩が言う。


「多分、今日の19時の予定は部員みんなが共有しておくべきだろう。新城一人だけが身の危険に逢うとも考えられない。そのため、この実験をする前の予定とその予定が変更可能なのかどうかをまず知る必要があるな」


そう言って、レポート用紙を海馬先輩は取り出した。


「まず、俺だが今日は本来なら柿崎と出かける予定だ。行き先は御木本町にある病院。そこに見舞いに行く」


海馬先輩の言葉を聞いた瞬間柿崎先輩の表情が変わった。柿崎先輩が言う。


「まさか、今日、見舞いかないつもりじゃないでしょうね?」


だが、海馬先輩は普通にこう言った。


「元々、俺がなんで科学研究部にいると思っているんだ。過去を変えるためだ。そのために必要な学術書を集めている。それは柿崎だってわかっているはずだろう」


柿崎先輩は泣きそうな表情になってこう言った。


「わかった、なら私だけで今日は行くから。いっぱいいっぱい愚痴ってやる」


そう言って柿崎先輩は出て行った。その後姿を見て私は自分が思い違いをしていたのではと思った。

私がきょとんとしていたからか海馬先輩は「まぁ、気にするな」とだけいってくれた。レポート用紙にひっそりと花音先輩が書き込んでいた。そこには「花音の行動:19時家で勉強、予定の変更可能」と書かれていた。これで、解ったのは柿崎先輩だけは今日の19時にここに居ないことだけはわかった。


「じゃあ、俺も書くね」


そう言ってリムトがレポート用紙に書き始めた。「高坂の行動:家で執筆、チャット。予定の変更可能」と書いていた。私はリムトが書く小説は書き終わったものを読むようにしている。書いている途中だと続きが気になってしょうがないからだ。リムトが言うには、書く労力と読む労力があってないっていつも言う。確かに下手したら何ヶ月もかけて書いた小説をたった数時間で読まれてしまうのだから悲しくなるのだろう。

リムトが私にペンを渡してきた。私は「新城の行動:家で家事、勉強。予定の変更は時間がかかるが可能」と書いた。

多分、可能だろう。家でやるべきことをやっていれば外に出ることは。それに。多分未来の私はそんな準備もしていなかったはずだ。それから思うと準備が出来ている私はかなり有利なはずだ。私は自分が書き終わった後にみりあにペンを渡した。みりあは悩んだ末に書き始めた。


「佐々木の行動:16時から18時30分 アルバイト。19時近くは帰宅のため学校近くを移動 予定の変更不可」


その内容だけで十分だった。海馬先輩が言う。


「高坂、今日は時間の変更が可能なんだよな。なら、お前は、今日は佐々木のアルバイト近くで待機。アルバイトが終わったらそのまま帰るのではなく、部室に立ち寄れ。俺と花音は今日の実験の準備だ。新城。お前は用意が終わり次第佐々木に会いに行くのではなく部室に来い」


納得は出来ない。けれど私よりリムトの方が護衛役には向いている。自分の右足を見た。走るなんてことは出来ない。良くはなってきている。入学式の時は松葉杖だった。それから手を入れるわっかがついた杖になって夏休みの間でようやく杖なしでも歩けるようになったのだ。その時にプールに誘われて水につかって少し動かすことをしたんだ。けれど、普通には戻ってくれない。どれだけ驚異的に回復をしていっても、リハビリをしても出来ることは限られている。私は歯を食い縛った。リムトが言う。


「大丈夫。絶対に守るから」


リムトの笑顔は少しだけ安心できた。花音先輩が言う。


「今調べたけれど、木田って写真部らしい。写真部今日も部活活動の延長申請をしているから木田は部室にいる可能性は高い」


そう言って花音先輩が指差した先は時計塔だった。海馬先輩が言う。


「これで決定だな。時計塔の避雷針からこの場所への電気の誘導準備は俺がやるのが一番だろう。それに、避雷針の延長もしておく。俺らの行動一つで未来がかわってしまうことだってありえるからな。バタフライエフェクトっていうだろう。カオス理論の。何が起こるかわからないが一番さけないといけないのは落雷が起きないという未来だ。だから、俺は避雷針を延長するとともに誘導に関しても再度補強をしておく。後、受け止める機械の準備は花音だな。新城は家での用事が終わったら部室にきて携帯をパソコンにつないで待機。高坂は確実に佐々木を部室に連れて来い。全員が揃って実験が成功したらみんなで下校だ。相手が誰であれ俺が守ってやる。そこいらのやつに負けるような体の鍛え方はしてないからな」


誰も海馬先輩に挑もうなんて人いないですよ。私は心の中で突っ込んだ。


「もういい時間だ」


みりあが腕時計を見ながらそう言った。私たちは急いで教室に向かった。

次の授業は現代国語だ。



~5時間目~


授業開始前にいつも教室に来ているのが高橋先生だ。

どうしてか休み時間の途中あたりからこの高橋先生は教室に来たがる。

それがいい時もあるが悪い時もある。そして、今日は悪い時だ。なぜそう言い切れるかと言うと、熱血漢からなのかはたまた教師としての責務なのかわからないが、いきなり授業ではなく道徳のような話しをしだしたからだ。内容はなりすましメールについてだ。

確かに少し前までは成りすましメールかと思っていた。だが、昼休みの世界が変わったのも事実だ。

だが、この事実を上手く目の前にいる高橋先生に伝えられる自信はない。しかもすでに教卓で話し始めている高橋先生を説得することはできない。私は諦めて高橋先生の話しを聴くことにした。


「もし、自分がされたらどう思う。いやだろう。言われないメールを送られたり相手が誰かもわからない嫌がらせを受けたりしたらどうだ。いやだろう。でも因果応報という言葉がある。やったことは自分に戻ってくるんだ」


力説をしている高橋先生には悪いが教室で聞いている人は誰もいなかった。

多分誰もがそんな当たり前のことはわかっているんだ。けれど当たり前だからと言って出来るわけじゃないんだ。

誰だって自分が標的になるのが怖い。だから見て見ぬふりをするし、攻撃する側にまわるんだ。

自分で自分を守れるだけの力を持っている人なんて一体何人この教室にいると思っているんだろう。

そんな正論なんて誰だってわかっている。ただ、わかるけれどどうしていいのかわからないだけだ。

私はふと自分を見ている目に気が付いた。

私の右斜め後ろから視線を感じた。そこに座っているのは委員長だ。だが委員長はすぐに目線を外してきた。変わり机においていた携帯アラートを知らせるランプが光った。

メールが来ている。しかもこれは学校用に作ったアカウントだ。

連絡網を作ると言うことで私は普段使うことのないメールアカウントを一つ作って学校に提出した。フリーメールだけれどメールが着たらアラートが出るようにだけ設定してある。

たまに学校行事の連絡が担任の高橋先生か委員長からメールが来るくらいだ。

このアドレスを知っているのはこの二人だけだからだ。今、目の前にいる高橋先生が何かを知らせるためにメールしてくるとは思えない。

まだ、高橋先生は何かのたとえ話で話を続けている。確かに四字熟語や文学史を引用しているは面白いと思うけれど話自体が面白くない。誰も聞いていないのに話し続けている教師が滑稽にしか見えない。

目の前で頑張っている高橋先生からのメールでなければ、このメールを送ってきた人物はたった一人になる。そう委員長だ。

私はあの人が正直苦手だ。

あの鋭い目で見られると萎縮してしまう。蛇に睨まれたカエルの気持ちがわかる気がする。多分、こんな感じなのだろう。

私は後ろから刺すように来る視線を感じながらメールを開いた。

予想通り差出人は委員長だ。宛先に「神足茜」と出ているからだ。はじめこの「こうたり」という苗字が読めなかった。神足さんが委員長になってすぐに覚えた読みかただ。私は恐る恐るメールを開いた。

そこにはこう書かれていた。


「新城さん。いきなりのメールですみません。でも、天野くんのことを聞いてきたから気になってメールしました。おそらく外部生にはわからないことだと思う。だから何をどこまで知っているのかはわからないけれど、みんなで天野くんを止めないといけないと思っていたの。もう、あんなことを起こさせるわけにはいかないから。確かに私たちはやり方を間違っていたと思っている。でも、これはあの時にできたなかで一番良かった選択だと思うの。それを解って欲しかったからメールしました」


意味がわからなかった。

天野を止めるってどういうことだ。そして、みんなで天野を除外することが良かった選択だと言い切れることもわからなかった。何か大事なピースが抜けている。私はそう思った。

内部生しかしらない出来事。私は中学時代の天野を調べてみれば何かわかるのかと思って学校の裏サイトを巡りまわった。だが、見つけられない。いや、過去ログはあるんだ。けれど、何も天野の件は乗っていない。その時ラインの更新が入った。みりあからだ。


「なにかあったの?」


みりあはやはり勘がいい。まるで俯瞰した状態で私をみているかのように思えた。

私はみりあに隠し事が意味をなさないことを知っている。委員長から来たメールをみりあに転送して、ラインを更新した。


「って、メールが来たんだ。何か知っている?」


だが、返事は予想をしていたものと違った。


「知らないといえば嘘になるけれど、知っているといっても嘘になるの。だって、裏サイトの情報なんて何が本当なのかわからないから」


なんだか答えのようで答えでない返答にもやもやした。けれどすぐにリムトが返信してくれた。


「聞いた話だけど、天野は中学時代から行き過ぎた片思いを繰り返していたらしい。ストーカー体質らしい。そして、過去に大きな事件を起こしたことがあるんだって」


なんだかどこか違和感がある。

いや、何かを見落としている気がする。それだけであの女帝の委員長、神足さんがとった行動には何かが足りない気がする。

大きな事件って何だったんだろう。

私は天野の名前で検索をした。けれど何もひっかかってこなかった。


「少年法に守られているからね。僕らは」


そういえばリムトが一度誰かとやりあった時に言われたセリフを思い出した。

リムトは悔しくて相談をしてきたんだ。そう、私が病室にいたときだ。

マイペースなリムトがあの時だけは真剣だった。あの時の相手は知らないが少年法という法律は何を守っているのかたまにわからなくなる。

もやもやっとした思いを持っていたが、そのもやを払うかのような視線を感じた。

私はその視線がどこから来ているのか感じていた。いや、もっと前から感じていた。

けれど、気が付かないふりをしていた。いや、勘違いと思いたかったからだ。

メールが来た時から後ろからあの女帝の、委員長の目線を感じる。

私はおそるおそる後ろを向いた。やはり、神足さんが私を見ている。しかもすごい目力だ。だが、口元は笑っている。なんだかその表情がシュールで怖かった。

メールを返さなきゃずっとあの顔で、目で見られる。

私は携帯に手を伸ばした。メールをものすごい勢いで打ち込んだ。


「神足さん。

 メールありがとうございます。まず、私は天野くんのことは何があったのかを知りません。知っていることは断片的過ぎて何か大事なピースが抜けているようにしか感じられないから知っていることがあれば教えてほしいです。

 だから、何があったのかを知らないから神足さんたちがとった行動に対していいも悪いもいうことができません。ただ、私が知っている神足さんらしくないと思っただけです」


送信ボタンを押すのに勇気がいったがこのメールを送ってしまった。

すぐに返事がきた。


「新城さん。次の休み時間に話すから時計台の下で待っていてほしい」


また、時計台か。私はなんだか避けるべきだと未来の自分がいっているのに時計に近づいている。

だが、断ることはできないだろう。あの女帝だ。拒否などしたら明日からどうなるのかが怖い。

明日だと。

もし、あのメールが真実なら私には明日は訪れない。未来を変えないといけないのだから。

だが、未来を変えるにしても何が起こるのかすらわからない。

未来の私がもっとわかりやすいメールを送ってくれたらもっと助かったのに。

たとえばもう1通メールを送るなどをしてわけてくれたらよかったのに。


そう、思っていたらラインの更新があった。みりあからだった。


「何かあったでしょう。そんな顔している」


みりあの席から私の顔を見ることはできない。けれど、みりあにはすべてを見抜かれているように感じた。

私は委員長から来たメールを転送した。

すぐに、みりあから返事が来た。


「こっそりついて行こうか?」


多分断ってもみりあは着いてくるだろう、リムトも連れて。

私はだが、本当にみりあが心配している内容をまだ気が付けずにいた。

気づいていたとしても変えられない運命だと思うが。


「そうだよな」


高橋先生がふいに私の肩をたたいた。びっくりした。

私はとっさに携帯をノートの間にしまった。


「はい」


なんとか返事だけはできた。高橋先生は話しながらまた教卓に向かって歩いて行った。

そして、その途中高橋先生は私にしたのと同じように木田にも肩をたたいて「そうだよな」と言っていた。

だが、木田は違っていた。


「高橋先生、もう話は十分理解したので授業をはじめてください」


一瞬空気が固まった。高橋先生は「そうだな」と話して授業をはじめた。

ただ、裏サイトはそのあと盛り上がっていたのだけがこのクラスを物語っているのだと思った。


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