~4時間目~
~4時間目~
すでに教室に入った時には授業が始まっていた。
リスニングだった。
こればっかりは平行して参考書が溶けない授業だ。
なので家で一番勉強するのがリスニングである。
ラジオ英会話なんかも気分転換に聞いたりするが、テストでの点数を考えるのであれば、教材を暗記するのが早い。
席に着き、携帯を見るとラインもメールも着信もあった。
リムトとみりあからだった。
二人とも心配してくれているのがよくわかる。
私は簡単に天野とあったこと、ステッキが壊れたことを書いた。リムトからすぐに返信が来た。
「ステッキが壊れたって大丈夫なのかよ」
「何もなければ大丈夫だよ。気温がいきなり変わったり、雨が降ったりすると痛むけれど、それ以外は大丈夫だよ。頓服薬もあるしね」
「今日雨だって予報だよ」
リムトの返信を見て今朝テレビで雨だと言っていたのを思い出した。
携帯で今日の天気を確認する。
傘がゆらゆら動いている。空は晴れているが夕方から天候が崩れるらしい。
だが、空を見ると雲は多いが晴れている。天気予報など当たらないことだってあるしな。
なんて空を見上げていたらラインが更新された。
「いざとなったら肩かしてやるよ」
リムトの書き込みで少し楽になった。だが、そのあとみりあからの書き込みが来た。
「天野、何か言ってなかった?」
私は最後の恨みのこもったことを言われたことは説明しなかった。
「どうして?」
私はこう切り出したが多分みりあは納得しないと思った。
こういう時のみりあはみりあ自身が納得するまで止まらないからだ。みりあの書き込みが続く。
「だって、天野は佳ちゃんにだけは助けてもらいたくなかったはずだから」
その後にリムトが続く。
「不思議なんだけれど、裏サイトには天野が告白した相手は出なかったんだ。ただ、受験組とだけ出ていた。それと同一IPが情報統制していたみたいなんだよね。ま、そんなこと出来るのは管理者以外いないけれどね」
なるほど。
だが、管理者が書き込みを左右していたのか。そんな管理者が書き込みを統制なんかしていたら面白くもなんともなくなるんじゃないのか。
リムトが続ける。
「だから天野の件は別にスレッドが立ったんだ。あまりにもあからさまだったからな。でも、その別スレッドは消されまくっていたから移転を良くしていたんだ」
私が続ける。
「でも、そこまでしていたら誰が管理者かわかるんじゃないのか?」
思っていた。管理者が告白された女の子か天野ならわかる。
「あのね」
みりあのコメントが入る。続けてみりあの書き込みが続いた。
「私なの、告白されたのは」
びっくりした。
確かにみりあはモテると思う。いや、あの事がなかったら私はみりあに告白をしていたと思うからだ。だが、今となってはそれすらもできない。
このままでいたいからだ。いや、きちんと向き合えるのがいつになるのかわからない。
私がステッキを持っているのを見るみりあはどことなく悲しげだ。
けれど、気を使っているのもわかる。以前のような感じでないのも事実だ。
この違和感がなくなるまでは告白なんてできない。だが、周りはそんな思いなんて関係ないしまってもくれない。そう思うと私はなんだか寂しくなった。
みりあから書き込みが続く。
「佳ちゃん、私断ったよ。でも、天野がこう言ってきたんだ。
『中間テストで君より1点でも点数が高かったら考えて欲しい』
って」
そういえば、中間テストの時、なぜかみりあは気合が入っていたのを思い出した。
結果は同点で満点だった。容赦がないとその話を聞いて思ったら少し笑ってしまった。
リムトの書き込みが続く。
「でも、それで満点取るなんてすごいよな」
だが、その天野の頑張りが内部生トップだった木田を上回った。だから木田は天野に攻撃をしたのか。でも、それならなんでみりあは攻撃されなかったんだろう。私は聞いてみた。
「裏サイトの管理者って誰?まさか」
書き込みはすぐに帰ってきた。リムトだ。
「多分、天野だと思う。天野が書いたMixiのコピペは数秒で消えたらしいから。多分天野を攻撃したのはそれもあって誰かは特定出来なかった」
でも、木田の名前が上がっていた。そして裏サイトにも名前があったと。
リムトが続ける。
「ただ、木田の名前が裏サイトに上がってから木田が怒り狂って。それもあって天野は学校に来なくなった」
私は木田の方を見た。
勉強をしてきたのだろう。黒縁メガネにセンター分けの男性だ。背は高くもないし体つきもがっちりした感じではない。リムトが続ける。
「怒りでなりすましメールを内部生全員に送ったんだ。まるで本人が書いたかのようなものをね」
なるほど。
けれど、それを木田がやったってわかるのになんで罰せられなかったのだろう。
みりあが言う。
「みんな誰がやったのか薄々は気がついていたの。でも、誰もあえて触れなかった。自分が被害者になりたくないからね」
ようやくわかってきた。
だから木田の名前が上がっても確証がないから触れられないのか。
「疑わしきは罰せず」
触れることが怖くて、そして、天野は転校する。
ひとつの決着がついたからこの案件は終わったということだったのか。
気がついたらチャイムがなっていた。
今日のリスニングの授業は全くといって耳に残っていなかった。
まぁ、問題ないだろう。
ただ、その時私はひとつの視線に気がつけずにいた。
気がついていたからといってまだこの時は何もできなかったと思うが。




