~放課後 その2~
~放課後 その2~
学校についたときにはすでに17時半になろうとしていた。歩いていて気が付かなかったけれどリムトからメールが来ていた。
「咲季と連絡がついて今から迎えに行ってくる。けやき通りは通らないようにして、みりあのバイト先近くに入ります」
「咲季と会いました。未来からのメールを信じてもらえなかったけれど、18時半までカラオケに行くことになった。」
その後に柿崎先輩からメールが来ていた。
「了解。バイトが終わったら佐々木に声をかける。ちなみに天野の顔を私は知らないのだけれど」
その後に花音先輩が天野の画像を添付で送っていた。多分花音先輩の世界には個人情報保護法なんてものは存在しないのだろう。いや、倫理観というものがないのかもしれないと思った。それはこの花音先輩のメールを見てだ。
「学校内にある防犯カメラをハッキング。そこから画像を抽出した本日の画像」
いや、花音先輩怖すぎですから。
私は校門に立ち、まず目の前にある校舎を見る。その3階奥に科学研究部の部室兼化学室がある。
教室が1階と2階に集中しており、移動教室となる場所は3階、4階に集中している。
そして、校門から中庭を通っていくと時計塔がある。よく見ると校舎の上にも時計塔にも避雷針がある。どちらも4階までの高さだからあっても不思議はないのかと思った。
本当に時計塔の避雷針に雷は落ちたのだろうか。
そう思って今の自分を見た。
傘を持っている。もし海馬部長に言われなければこのカーボン製の輪っかつきでない杖を持ってきただろう。
校舎と時計塔の間の中庭を走っているときに落雷があったらひょっとしたら私に落雷する可能性だってあるのではと思ってしまった。
海馬部長はそこまで考えてこの輪っかつきの杖を指定したのだろうか。
私はもし、この校門から走ってどこかに行くのならどうするのかを考えた。
目の前の校舎にまず行くだろう。でも、どうして時計塔に向かったのか。
私はまず校舎側に向かって歩いた。目の前の扉を見ると箒が立てかけてある。いや、扉の内側にかかっている。どうやら鍵が壊されているみたいでふさいでいると張り紙がしてあった。校舎に入るのなら少し遠回りをしないと中には入れない。
この状況を見て次に時計塔に向かったのだろうか。
私は雨をさけるため校舎にそって歩き出した。右手には時計塔が見える。校舎と時計塔をつなぐ屋根付き通路は運動部のウェートトレーニングが乱雑に置かれていた。多分19
時の段階でもこの場所はこのままだろう。
杖をつきながらこの煩雑な足元を走ることはできないだろ。そうなると何かから逃げる私は中庭を通ったのかもしれない。だが、どうして誰も気にとめないのだ。
今も通路で筋トレをしている生徒はいる。おそらく19時でもいるだろう。遊びだと思われていたのだろうか。でも、部室でもなく知り合いのいない時計塔に何の用事があって向かったのだ。
わからない。私が逃げるのなら校舎側に行く。いや、今は部室に先輩がいるからかもしれない。
「お~い、新城」
時計塔の扉から高橋先生の顔が見えた。ひょっとしたら先生がいるのが見えたから時計塔に逃げ込もうとしたのだろうか。
私はそう思うことにして、高橋先生に手を振りかえして校舎側に向かった。
階段をあがるのもつらい。正直片足であがるほうが楽なのではないかと思うくらいだ。
3階というのがまた遠く感じる。一段、一段あがっていく。上がるのも怖いが降りるのもこわい。後でまたこの階段を降りるのかと思うと一気に憂鬱になった。だが、これからみりあを守らないといけないんだ。そして、私自身も。
みりあが助かっても私も助かっていないと意味がないんだ。こんな今みたいな結末の第二弾なんて誰もわらえない。
だから誰一人欠けないようにしないといけないんだ。
未来の私が伝えようとしてくれているのだから。
部室の扉に手をかける。鍵がかかっているのだった。花音先輩に「部室前につきました」とメールをしたら扉があいた。
「遅かったな」
目の前に壁が現れたかと思った。実際そこにいたのは海馬部長だった。海馬部長はずぶぬれだった。すこし擦り傷が顔にあるのもわかる。海馬部長が視線を気にしてか話してきた。
「ああ、これだろう。実際避雷針は校舎にも時計塔にもある。どっちにも設備は置いてあるんだけれど今のままだと1通くらいしか送れないからな。だから時計塔側の避雷針とハード面のヴァージョンアップをしてきた。さすがに雨だとつらいわな」
窓から体を出しながら海馬部長が言う。その先にはケーブルがあった。部室の片隅にあったあのボックスにも何か追加で装置がふえているのがわかる。窓から風と雨が入ってくるが一向に気にするそぶりもなく花音先輩が奥でパソコンに向かっている。その顔は険しかった。うまくいっていないのがわかる。私の視線を感じたのか花音先輩が手の動きは止めず話しかけてきた。
「1通送れるのなら他もおくれるはず。そしてその奇跡を今目の前でも見ている。けれどプログラムはうまくいかない」
手の速度が徐々に加速しているのがわかる。話しかけるのも怖い感じだ。けれど花音先輩は気にせず話し続ける。
「木田はまだ部室から出てこない。暗室にこもっているみたい」
花音先輩は窓を指差した。右手だけでキーボードを操作している。それもまたすごい速度だ。
私は窓に近づく。海馬部長が言う。
「新城、お前が一番危険だ。未来は変わりやすい。だから危険な場所にお前を送り込むわけにはいかないんだ。まぁ、言いつけどおりそっちの杖にしてくれたのは感謝だけれどな」
やはり海馬部長は雷を気にしていたのがわかった。海馬部長が続ける。
「だから、新城、お前はここで観察だ。後は花音の気分転換にでも付き合ってくれ」
そういうなり海馬部長は部室を出ていこうとした。
「定位置でスタンバイだから。新城。お前がこれからハンドリングするんだぞ。全体を見渡せる目があるんだから」
そういわれても暗幕の向こうなんて見えませんけれど。そう思って窓にへばりついていると花音先輩が話しかけてきた。
「何の変化もないところ見て楽しい?」
いや、楽しくないですよ。でも、動きがあるかどうか見続けないといけないし、でもこんなことをしている場合でもないし。そう思っていたら花音先輩が二つ使っているモニターの一つを私に向けてきた。
「これが時計塔内の防犯カメラの映像なう。今写真部はこんな状況よ」
いや、花音先輩。ありがたいですけれど怖いです。って、そこに映っていた画像には人は映っていなかった。代わりにカメラがカーテンの隙間に突き刺さっていた。
「花音先輩、あのカメラの先って何があるかわかりますか?」
私が言うと花音先輩はパソコンで何か操作をしてカメラの向きを変えた。花音先輩が言う。
「SHIFTキーを押しながらAボタンを押すと右回転、Zで左回転よ。Sでズームイン、Xがズームアウトよ」
キーボードをみてつい感想を言ってしまった。
「どうして左手仕様なんですか?」
花音先輩がいう。
「右手はもう一つのキーボードを動かすため。だからすべて左手でできるようセットした」
花音先輩はそう言ってキーボードも私に動かしてくれた。どうやらこっちのパソコンはプログラミングではつかっていないらしい。
私はキーボードを操作してズームした。ぼやけているが人が映っているのがわかった。
そして、映っているのは校門だった。携帯が鳴る。柿崎先輩からメールだ。
「天野発見。佐々木のバイト先の勝手口付近で今待ち構えている」
そのメールを見てすぐ、花音先輩は私の目の前のキーボードを奪った。次に画面に出たのはけやき通りだった。
「これって」
絶句に近かった。花音先輩が言う。
「町にある防犯カメラの映像よ。必要かと思ってこっちもハッキングしておいた」
助かりますけれど、日本ってこんなにセキュリティーざるでいいのかと思った。こっちはカメラを動かすことはできない。固定カメラだということがわかった。このカメラからだと天野は映っていない。どうやらカメラはけやき通りの交差点についているらしい。かろうじてみりあがバイトしているという店がうつっている。
その瞬間画面が揺れた。揺れて縞模様が入った後に画面が黒くなり途切れた。柿崎先輩からメールが来る。
「けやき通り交差点で交通事故。自動車がぶつかり街灯を倒した。今のところ物損のみで被害者なし」
そのメールを見て時間が18時半になっていることに気が付いた。メールが来る。
「咲季は無事。これからどうしたらいい?天野は?」
「バイト終わったけれど、私はどうしたらいいの?」
リムトとみりあからメールが来る。防犯カメラは真っ黒な画面しか映してくれない。
どうればいい。指示を出さないといけない。天野は一体今どうしているんだ。すぐに海馬部長からメールが入る。
「柿崎、天野の様子を報告。高坂は咲季って子を連れて柿崎に合流。3人で佐々木を迎えに行け。人数が居たら何とかなるだろう。花音。どこか違う場所の防犯カメラを見つけろ。新城。情報が集まったら指示を出せ。守りたいんだろう」
海馬部長が助けてくれたのがわかる。守りたい。自分に言い聞かせた。絶対に守る。そして未来の自分を信じようと思った。
ここに私がいるということはもし何かあったとしたら過去にメールを送ることをするだろう。だからこそ海馬部長は私をここに置いたはずだ。柿崎先輩からメールが来る。
「天野は通用口と思われる場所近くにいるわ。佐々木が出てくるのを待っているみたい」
「みりあ。バイト先にいつまでいてられそう?」
私はみりあにメールする。みりあの返事は「後5分くらいなら大丈夫だけれど、それくらいかな」と返事があった。
リムトからメールが来る。
「今柿崎先輩と合流したけれど、咲季が天野を見ていけないって言うんだ。けれど、咲季の話しは大事だから聞いてほしい」
そう、それはずっと謎だった「木田崇」に気をつけろというメールの意味がわかる内容だった。
なぜ、天野ではなく「木田」だったのか謎だったからだ。




