ヨハンネ・キンブレイト その3
ルベアは、皇帝の居場所を知っているかのように、振舞ったていたが、実はまだはっきりとわかっていなかった。
クリスタル・スピアのある場所は、溢れかえるほどの太古の遺跡群の中のどれかに奥深くに眠っており、ルベアがプルクテス国軍近衛団長の時、までに、発掘されていなかったからである。
つまり、存在は書物などでちら見していただけで、、その場所までは全く検討もつかない。
一つ一つ調べて行くのも手なのだろうが、そんな事をすれば、発見に何年かかるのやら………
そこで、この数日前に真正面から襲撃を仕掛けたレイラの能力を考えた。
戦略も立てずに、真正面から、攻撃をしたので、さぞかし、頭が悪い奴だと、ルベアは判断すると、単純な罠にも、かかるかもしれないと思いつく。
「また、ここへ来るよ。あんたの惨めな姿を拝みにね」
(少し、準備をしなくては………)
「けっ。クソが………」
ルベアは、何か巧妙な策略を企てると、その場を後にした。
それから、ルベアはドンタールと共にクリスタル・スピアにいて、調べることにした。
幸い、このサーチベルクの街は古くから建築されていた為、書物庫は立派なものだった。
プルクテス国の建国は、元より、数年前の書物も眠っていた。
ドンタールにとっては、宝の山という事である。
そこで、神々の聖戦と呼ばれる書物を見つけ出すことに成功したこの二人は、それを読み解いていく。
複雑な文脈で、凡人には分かりにくいようにあえてそう書かれている。
作者であるルック公爵の性格を疑う。
調べるうちに、クリスタル・スピアには、発動までには膨大な魔力を充電しなくてはならないと書かれていた。
それも、三ヶ月以上もかかるそうだった。
それに、目を付けたルベアは、二ヶ月を自分らの準備期間とし、その後、決戦を挑む事にした。
それまでは、部下の鍛錬をし、一気に総攻撃する事に方針を決める。
ドンタールもそれに理解を示した。
即日に、第三兵団全隊員にそれが伝えられ、補充兵をサーチベルクの街から召集した。
補充兵と言っても、民兵団なのだが。
――――――――数日後、とある日。
僕は、朝早くから大好きな本を読んでいた。
そんな時に、部屋の扉がノックされる。
「どうぞ」
僕の返事を聞くと、扉が内側へ開き、ルベアとドンタールとアドルの三人が入ってきた。
僕がようやく、傷口が完治し、動けるようになった事を誰かから聞いたのだと、思った。
「具合はどうだ?ヨハンネ」
「大分、よくなりました。これも、ルベアさんに、ここの皆さんのお陰です」
「お礼は良い。それより、早速だが一つ、協力してもらいたい事があるのだ」
「なんですか?」
それに、ルベアは自分から言おうとぜず、横にいたドンタールの腹を肘で突いて、「お前が話せ」と言った。
「わ、我輩が?………ぬぅ。コホン!実は………ヨハンネ殿に、あのレイラ・ラレイを説得して頂きたい」
「………僕がですか?」
「左様。どうも、ヨハンネ殿を気に入っているみたいで、貴殿の説得ならば、我々に協力するかもしれないと思ったのである」
それに僕はうつむいた。
僕には、なんとも言えない複雑な思いがあったからだ。
それは、そのレイラ・ラレイが僕の父上を殺したからだ。
そんな人と顔を合わせたら、僕はどうすればいいのだろうか?
僕の重い表情を察したルベアが再び、ドンタールの横っ腹を肘で突く。
「あっ今すぐではありませぬ!!それに無理をさせようとは」
それに、ミネルヴァが反応を示し、眉間にシワを寄せ、険しい顔をした。
僕の見えない所の奥深い傷口を悪気がなかったとはいえ、えぐるようなドンタールの言葉に、ミネルヴァは怒りの表情を見せた。
ドンタールを睨みつけると、僕とルベアさんらの間に入り、立ち塞がった。
「………ご主人様をこれ以上、苦しめないで下さい」
底から出した濁った声は、まるで、警告しているように聞えた。
ドンタールとアドルは溜まった唾を一気に飲み込む。
ルベアは普段通りだったが、少しだけ、心が揺れた。
それは、ミネルヴァからの怒りを買う事を今までに、しなかったルベアも、今日、初めてその鋭い眼光が自分に向けられた事に動揺してしまった。




