ヨハンネ・キンブレイト その2
暗闇の地下牢に二つの足音がする。
それに、その場にいた囚人ら、面をあげる。
その二人を通り過ぎる姿をただ黙って、見つめていた。
「地下牢は、いつきても慣れないものだな」
「そりゃあ、囚人にでも、ならない限り、滅多に来ることはないからな」
ランタンの明かりが壁に突き当たる。
それに、ルベアは、左に向きを変えて、また歩き始めた。
「ここだけ、別格なんだな」
(こいつは、本当によく喋る………)
「………着いたぞ」
そこに、一つだけ、別室のように、牢があった。
そして、そこ一人の少女があぐらをかいき、頬杖をつきながら、小さな窓から射す光の方を向いていた。
「手前か………」と言うと、ルベアを睨みつける。
「少々調べ物があって、遅くなった」
「で、俺になんの用だ?」
ルベアがここへ来た理由はただ一つ。
皇帝の居場所を聞き出すこと。
当然、それは拒否られるだろう。
なにせ、親衛隊よりも格別な幹部の一人なのだから。
ルベアは、どうやったら、皇帝の居場所を吐くかを考えていた。
それに国を消滅させることが出来る魔法の武器の事もある程度、調べていた為、少し、時間がかかったのである。
「単刀直入に言おう。フェザールは、今何処にいる?」
「言わねぇーよ。バカか手前か?こう見えても俺は、白蛇なんだぜ」
「わかっているつもりだ。………では、次の質問、皇帝は国を滅ぼせるほどの膨大な魔力を持つ対魔物兵器を探しているそうだな」
「へ~~よく調べたな」
レイラは余裕ような表情でそう語った。
しかし、次に発せられる言葉に顔色を変える。
「………クリスタル・スピア」
「?」
「クリスタル・スピア?なんだそれ」
「これは、何万年前の話だ。戦の女神リスティアの妹、狂乱の女神として知られたアーバルデが使っていた武器。それが、クリスタル・スピア。とある魔族との聖戦で殺しに殺しまった結果、やがてその強大な魔力が暴走し、大爆発を起こした」
「大爆発した?」
「そうだ。周りの物を全て巻き込んで、綺麗さっぱり無くなった。だが、クリスタル・スピアはなんらかの理由で復活した」
「ちっ。なんだよ。結構、調べられてんじゃあねーかよ。ダリアの奴、情報統制がなってないぜ」とレイラは、頭をポリポリとかくと、あぐらをかいていた足を組み替えて、自ら話し始める。
既にそこまで、知っているのなら、もう全部知っているのだと思ったからである。
クリスタル・スピアは、確かに、強大な魔力に耐え切れず、そのまま暴発し、狂乱の女神アーバルデと共に消滅した。
しかし、それから千年の後に、聖フェレン騎士団が魔族との戦争に苦戦を強いられた時に、神にすがる思いで、禁忌とされた神々の武器を作り出そうと、魔術と錬金術の両方で試みた。
そして、遂に聖フェレン騎士団の本拠点、ホーリーグランドの都でクリスタル・スピアの復活に成功したのである。
だが、その時、そこへ憎悪を持つエルフ軍の大規模な襲撃を受け、ホーリーグランドの都ごと、滅ぼされた。
そのホーリーグランドのあった場所こそ、ここプルクテスなのである。
「なんだか、頭が混乱するな」
「低脳だな」
「うるせぇ。クソ女」
「もう検討はついているんだろ?フェザール様の居場所がな」
「そうなのか?」とブライアンはルベアに視線を送る。
それに、ルベアは胸を張り、腰に手を置いて大きく頷いた。
「もちろん」とニヤリと笑ったのである。




