再会 その2
私は坑道を抜ける時にやられた傷の癒えが、あまり良くなく、深い眠りについていた。
毎日、その痛みでうなされていた。
そして、走馬灯のように、今までの過去が脳裏を走る。
そこにいつも、現れるのは、やはり、ヨハンネの姿だった。
ヨハンネは笑顔で、彼女に語りかける。
そんな時、突然、警鐘がなった。
それも、かなり大きく何度も。
彼女は思わず、飛び起きた。
汗を拭い、窓の外を確認しようした。
「何?!」
扉付近でゾスは、丸まって寝ていた様だが、ミネルヴァの声で、目を覚ました。
「………どうやら、侵入者のようだな」
「侵入者?それでは、行かなくては!………くっ」と起き上がろうにも、痛みと痺れで体が思うように動かなかった。
「無理するな」
ゾスがそう言って、止めようとした。
扉越しで、館に駐在する兵士らが駆け回る足の音がした。
「敵襲!!敵襲!!各隊、持ち場に就け!緊急事態である!!第三隊は、門に集結!第四隊はルベア兵団長殿の守護に就け!急げ!」
ミネルヴァはそれを聞き、自分も戦わなければと、体中に包帯が巻かれているその上に、剣闘士用の鎧を装備し始めた。
しかし、彼女にとって、鎧は、痛みをさらに倍増するものだった。
鎧の繋ぎ目の紐を結ぶ度に、激痛が走った。
それでも、彼女は装備し、レギナスの剣に手を掛ける。
彼女は、無理してでも、鎧を装備しなくては、いけないと思っていた。
なぜなら、彼女が、自ら、ヨハンネに無理を言って、買ってもらった鎧だからだ。
しかし、それを見たゾスは、扉の前に立ち、彼女の道を阻む。
「お前はバカか?その体では戦闘の邪魔になる。わからぬのか」
「行かなくては………いけないのです」
「戯け!今のー」とゾスが言い返そうとした時、突然、扉が外側から勢いよく、押し開けられた。
ドンっという鈍い音と共に、ゾスの顔面が扉にぶち当たる。
「んぁ?なんか今、物にぶつかった気がするが?」
現れたのは、ドンタールだった。
当然の事ながら、ドンタールには、ゾスの姿は見えない。
ドンタールはルベアの命令で、護衛する為にミネルヴァの元へ向かったようだ。
「ドンタールさん?」
「ミネル殿、無理はせずに。我輩がお守りするので」
「しかし………」と一歩前に出ただけで、足に激痛が走り、地面に膝をついてしまった。
どうやら、傷口が開いたようだ。
包帯で巻かれた右足から、血が滲み出てきた。
(情けない………本当に………)
ドンタールが、彼女の肩を持つと、ベットに座らせた。
「無理はダメである。ミネル殿は、休まれよ」
その頃、サーチベルクの館、正面の門付近では、敵の襲撃を受けていた。
領主であるヴァルキラも襲撃に驚き、白い絹の寝巻きのまま、剣を持ち、館の三階にある自室からベランダへ向かい、正面の門を見下ろした。
部下らがヴァルキラの部屋に入り、報告した。
「報告します!敵の進入です」
「そんなもの見たら分かる!」
ヴァルキラは親の代まで守ってきたサーチベルクの街へ、敵をいとも簡単に侵入された事に、焦りと怒りが込上げてきていた。
そんな心境の中で、襲撃にも関わらず、予想外の報告をされる。
「領主様に報告申し上げます!!敵は大胆にも正面から襲撃してきている模様!また、お味方は劣勢との事!」
「正面からだと?!何を考えているのだ。頭がおかしいのか?ここから見ても、大軍が入り込んだとは思えんが………それよりルベア殿は?」
「はっ。只今、防具を身に着け、迎撃の準備を整えている模様」
「直ぐに、ここに呼んでくれ!」
「はっ!」
「敵の数を把握しろ!何が何でも、ここに来させるな」
(襲撃………父上、私はどうしたら良いのでしょうか?)
そんな時、正面の鉄門がまがまがしい音を出した。
「な、なんだ?!一体何が」
砂煙と暗闇ではっきりとは、見えなかったが、逃げ込んでくる兵士の姿は確認できた。
「正面が?!門が破られたのか」
―――レイラと黒騎士は正面の門から大胆に侵入していた。
それを阻止しようとサーチベルクの兵士らが取り囲む。
だが、その兵士らは恐怖に陥っていた。
なぜなら、か弱そうに見える女が正面に構える鉄門を蹴り一つで破壊したからである。
手は震え、足はぶるぶると、まるで小鹿。
「おいおい。ここの兵士、弱すぎ」
「仕方ないよ。レイラ姉さんが強いんだから」
「化け物め」
「君も僕の事を化け物って言うんだね。傷つくなぁ………」というと、いきなり踏み込み、化け物といった男の咽喉元を斬り裂く。
「暇つぶしにもならねぇーよ。手前ら」
鉄斧と長剣を持つレイラは、近くにいる兵士に向かって斬りかかる。
脳天を鉄斧でかち割り、次に長剣で別の兵士の足や手を斬りつけ、地面に這わせる。
そこに、足で踏みつけ、何度も蹴った。
「おらおら、どうした?かかって来いよ。みんな殺してやるからうよぉ」
その挑発に、三人の兵士が同時に立ち向かう。
「うおおおおおおおおお!!!!」
一人が剣を振り上げた。
それをレイラは、鉄斧で防ぎ、長剣で、がら空きになった腹部を突いた。
両手が塞がったのをチャンスだと思った一人が、剣を突き出す。
しかし、それを黒騎士が高速で移動し、邪魔に入り、斬り伏せた。
「おいおい。助太刀はいらないぜ」
「ごめん。つい、手が出てしまったんだ」とレイラに顔を向け、相手に背中を向けた。
そこに、もう一人の兵士が斬り込む。
が、当たらなかった。
気がつけば、既に背後にいた。
「だめじゃあないか。剣を構えていない人の背中を斬ろうなんて」
「なんなんだよてめぇは?!あれ?なんで、俺の体が急に熱いんだ?」
「それはね?君が斬られているからだよ」
「はっ………畜生………」と言うと膝から崩れ落ちたのであった。




