利用し、利用される者 その4
「合言葉だぁ?最悪、意味わかんないし」とルベアは、呆れた顔で、頭を抱える。
ドンタールにも、その合言葉が何なのか、全く、検討がつかなかった。
一刻の猶予もないこのタイミングで、閉め出された気分だ。
今すぐにでも、ハルピュイアが群れをなしてどこからなくとも、襲いかかってくるかもしれない。
ミネルヴァは、とにかく、自分が出来る事として、耳を澄ませる事にした。
水滴が地面に落ちる音が聞こえ、ハルピュイアが翼を羽ばたくす無数の音、次に歌が聞こえた。
「歌が………聞こえます」とつぶやく。
それに、敏感に反応したルベアが焦り出す。
なぜなら、ハルピュイアが餌にありつけた時の嬉しさを歌で表現するからである。
「それは、いかんぞ!非常にいかん!ドンタール!合言葉は何かわからんのか!」
「と、言われても、我輩、ドワーフではないであるからな」と困った顔で、頭をぽりぽりと掻いた。
「とにかく、何か言え!」
「では………開け、扉!」とドンタールが思いついた合言葉を言った。
※しかし、効果はないようだ!!
アドルは、おどおどしながら不満をぶちまけた。
「ドワーフの合言葉なんて、わかるわけないでござる!なぜなら拙者らは人間!合言葉が、“開け扉”か単純な言葉なみたいにはいかないでござるよ!絶対に巧みにかつ巧妙な合言葉でござるよ――――――ッ!」
「はぁ…うるさい」
「あ――――――もう終わりだ!拙者らはあのおぞましくて恐ろしいハルピュイアに骨の髄まで喰われるでござるぅううううう!」
「ミネル、こいつを黙らせろ。永遠に」
「いや………それは、流石にできません」
「お父上!!拙者は不出来な子でしたござりました!申し訳ありませんぬ!!されば、ここで、武人として最後に自決を!」とわんわんと泣き始める。
ルベアは、苛立ちを露わにした表情で、アドルに向かって言った。
「うるせぇーハゲ!バカ!アホ!マヌケ!」とルベアは怒り狂う。
「しかもだ!お前もお前だ。何が、“開け扉”だっ!問われてるのは汝は何ぞやだろうが!これで答えるんなら“我はドワーフなり”みたいなのを言うのが最もらしんだよ!!バーカ!このアホッ」
ルベアはアドルの胸ぐらを掴み、顔面に唾を飛ばしながら、とりあえずイラつくからと殴ろうとしたのだが、ここで、奇跡が起きる。
なんと、石の扉から反応したのである。
「………汝らを………我らの同族と認めん………」
ルベアは、殴ろうとした格好のまま固まる。
「え、今、なんて言った?」
すると、びくともしないはずの石の扉が重々しい音を鳴らしながらゆっくりと開いていく。
その場にいた全員が空いた口が塞がらなった。
ミネルヴァさえ、少し驚いてしまう。
そんな時、反対側の坑道から叫び声があがった。
「ルベア様!こちらに傭兵とハルピュイアが向かって来ます!」
「引き連れて来たかのであるか!?ルベア様!」
「ちっ。第三兵団、移動するぞ!急げ!もたもたするな」
しかし、5千もの兵士が移動すると時間がかかる。
その前に追いつかれるかもしれなかった。
それでも、応戦の命令をルベアは出さない。
どうしても、自分の兵を無駄に死なせたくない思いがあったからだ。
ルベアにはとある意図があった。
それは、皇帝フェザールとの決戦に備えての兵力温存である。
今後、兵力の補給が出来ない可能性がある。
その為。無駄な交戦を避ける事にした。
全ては、皇帝を殺す為だ。
その為、今回は傭兵を囮にし、このキング大坑道を抜けようという目論見があったのだが、傭兵団が思ったよりも、役に立たなかったようである。
しかし………遂に追いつかれた。
「隊長!後方にハルピュイア!」
「くそっ!!ミネル!部隊が出口へ行けるまで時間を稼いでくれ」
それにミネルヴァは無言で頷くと、向きを変え、追いつて来たハルピュイアに、剣を構えた。
一人の兵士をハルピュイアが襲おうとしていた。
ミネルヴァはそこへ走り込み、そのハルピュイアを斬り落とした。
襲われそうになった兵士に向かって、ミネルヴァは「逃げて下さい!」と言う。
「す、すまん、助かった」と素早く、走り去った。
奥からまた二匹追いつき、兵士を襲おうとする。
それにミネルヴァが反応しそこに向かった。
兵士がハルピュイアの鷲のような脚に掴まれ連れ去られそうになる。
しかし、ミネルヴァがそれを阻む。
ハルピュイアに剣を投げつけたのであった。




