気高く、強くあれ、我ら臣民よ!
――――――その頃のロレンヌでは――――。
夜に紛れ、ロレンヌの城門を複数の兵らが飛び出していった。
舗装された道を各々に分かれ、馬をかけらせる。
それは、ラーバス将軍の命令だった。
各地に散らばった、領地を追われた諸侯らをもう一度、召集する為だ。
そして、それとはまた別にドラゴマの手に落ちていない村落へも出向かわせたのである。
とある秘策を携え、各地に行った兵士らは各地の地方代官へロールになった書状を渡していく。
それを地方代官らが自分達の領地の広間や空き地、または、野営地で声を上げ、内容を読んでいく。
「これより、ラーバス将軍閣下よりのお言葉を告げる。諸君!来るべき時が来た!我らに対してのドラゴマよりの圧政と侵略に喘ぐ日々はもう終わりを告げる事をここに宣言する。我自ら軍を率いり、堅牢かつ難攻不落のロレンヌをドラゴマから奪還する事に成功した!これは、大いなる反撃である」
その言葉に、集まった農民らは顔色が変わり、どよめき始める。
なぜなら、地方代官が広間に来るのは、税金の納入の確認にか、罪人の手配書ぐらいだからだ。
「あのロレンヌを取り戻した?」
「それじゃあ……」
群衆らは一斉に湧きだった。
「お―――――ッ!?勝った!勝ったんだ!オラたちの勝ちだ――――ッ!」
「我はこれに乗じて首都も奪還する。しかし、兵力があまりにも足りない。そこで、諸君らから志願者を募る」
その言葉に群集らが一気に黙り込み、ジッと見つめた。
「――――では、参加する者に対して告げる。一つ、今回、指定年齢達しない者は除くものとする。一つ、歴史に名を刻みたい者、恩賞を得たい者は詰め所に行く事。一つ、略奪した敵の物は、市場で売りつけても、おとがめなしとする」
その代官の言葉に驚きの返事が返ってきた。
「わしゃあなんもいらん!息子の仇が撃てる機会さえありゃじゅうぶんじゃ」
「そうだ!そうだ!俺たちは、金も地位も名誉も、糞食らえだ。俺は許せねぇ!俺の娘を家ごと焼きやがったドラゴマを!奴らに死を!奴らに裁きを!奴らを叩き殺せ!奴らをひき殺せ!奴らをぶっ殺せ!」
若い男の行動が、今まで貯めていた悲しみも怒りも憎しみも、爆発した。
それは、凄まじいものだ。
誰もが怒り、そして復讐を望み、憎悪を滲み出していた。
この光景は、あのプルクテスの奴隷達による大反乱の時のようだった。
「我らが神、リスティア様も観られておられるだろう。大義は我らにあり!祖国を取り戻そう。ドラゴマを追い出そうではないかっ!!」
※リスティアとは、軍神の戦乙女の事。
「罪なき人々を殺し、聖者の教会をも焼き払う蛮行、神はお怒りである!」
「みんな!共に戦おう!土地を取り戻そうじゃないか!」
「うぉ―――――――ッ!」怒号の混じった大声が飛び交い、一斉に拳を振り上げた。
ここに至る場所で、戦いの為の声が上がったのである。
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数日後にはロレンヌに向けて、民兵らが長蛇の列を組んで行進していた。
北から西、南からも農民を中心とした民兵軍が肩を並べ、ロレンヌの街に収容できないほどの野営テントが張れる。
軍議場には爵位を持つ者や将軍まで駆けつけてきた。
それにはラーバス将軍も驚く。
なぜなら、今まで兵を出し惜しんでいた諸侯らが賛同し、兵を出すと言うのだから。
「兵はいかほど集まったのじゃ?」
その問いかけにイェルグが資料をみながら答える。
「はっ!北部地方より民兵一万。南部地方より民兵一万五千。西部地方よりは民兵二万が、集結しております」
「私の国からも、プルクテス残党軍、第六・第九兵団、計四百人ほどが先ほど合流しました。それ以外の部隊も合流するように奮闘中だそうです」
「ハイマー卿より、剣兵隊二百。ワダカ卿より、騎馬隊千。ナナキ卿より、槍隊二千を提供してきました。それも、一方的に」
「恐ろしいほどの数だのう……」
「それだけ、ロレンヌの奪還が大きかったということですね」とエルゼがラーバスに向かって言った。
それにラーバスは深く頷いた。
そして、首都奪還の為の作戦立案段階に移行したのであった。
これより、ハニアの戦いから一年ぶりの一大大戦が巻き起ころうとしているのである。




