魔王再臨
――――――遂に続編が登場!
今回は前作とは、いろいろと違う要素を組み入れて行く予定。尚、前作の「剣闘士を買った少年の物語」より、超える作品にしたいと思います。出現キャラクターを増やしました。より物語らしく、より楽しく書いて行きたいです。
―――――――――では、飯塚ワールドへようこそ。ご堪能下さい。
とある少女は守るべき者を大切な存在を失った。それは家族でなければ兄弟でもない。もっと大切な人を失ったのだ。その者の名はヨハンネ・キンブレイト。彼女にとって一番、優しく接し、人として扱った人物であり、彼女の主だった。
そんな、大切な主人を彼女は死ぬまで守ると固く誓った。だが、その誓いも虚しく、果たす事が出来なかった。最後の瞬間を看取る事すら出来なかったのだ。
守れなかった事に対して彼女は自分に憤りを感じていた。自分の弱さを憎んだ。
そして、主人を奪った帝国に対する憎しみが沸き起こる。物語はこれで終わりではない。彼女はこのまま終わらせる事は出来ないのだから。
彼女は大切な主人の故郷に再び舞い戻り、死を痛む墓石を立る事を誓う。務めを果たさねばならない。そして必ず、復讐を成し遂げる。
(――――――私には出来る。例え一人でも…)
彼女の名はミネルヴァ。数年前、剣闘士として、プルクテスの闘技場で勇ましく、勇敢に戦った一人。
最初は自分が生き残る為に必死になっていた。だがミネルヴァは主人と運命的な出会いをし共に時を過ごした。しかし、その暮らしは儚くも、帝国の手によりあっさりと奪い去られた。
(――――――私は許さない…絶対に帝国を滅ぼす)
鎖で繋がれていた狼はある時を境に解き放たれる。
自我を忘れ、獲物へと牙をむき出し数多くの者がその手にかかり、惨殺されていった。目の前に現れる者、歩む道を邪魔する者はすべて、慈悲もなく、力によってねじ伏せられた。
ミネルヴァの心は復讐の二文字が支配し、黒き血が体中に張り巡らせ、己を邪魔する者を狩る獣となっているのである。彼女を止められるつわものは存在しない。そんな獣を神は許すか?戦場で多くの敵をねじ伏せた者は英雄となる。そんな考えが人々の中にある。ではこの者は英雄になりたいのか?
そうではない。この者が私利私欲に狩られるのはだだ一つ。皇帝の首を自分の手で胴体から引き剥がす事だ。
それ以外、何も欲する事はない。金も、権力も、愛も、ましてや自分の命すら惜しいとは思っていない。
ミネルヴァが戦場を駆け抜けると屍の山が出来る。それと同時に彼女の心中で誰かが叫ぶ。
『―――――死にたくない!!!助けて!助けて!!死ぬのは嫌だ。せめて君の手で僕を殺して。お願い――――――どうしてだよ!僕を殺して!殺して、殺して』
主の声が頭の中から鐘の様に鳴り響き、彼女の感情を爆発させる。時々、ミネルヴァは自分の意識がなくなる時がある。無意識の状態で血に飢えた狼の如く、獲物を狩る。
それはまるで、何かにとりつかれたかのようだった。
(―――――私は私でなくなり、別の者になるような気がする。このままでは…)
ミネルヴァが一番怖いことが一つある。それは主の存在を戦いの中で忘れるのではないかと恐れていた。戦いに救いを求めているのかもしれない。戦っている時が一番、彼女でいられる。なんとか意識を保っていたがもう限界だった。
ミネルヴァの憎悪は抑えきれない――――――彼に再び会わない限り――――――