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利用された奴隷達

その頃、帝国とアレー解放軍(奴隷同盟)との戦闘が終局しつつあった。


あれだけの勢いがあっただけに呆気なさが残る戦いだった……。


結局の所、大反乱を起こした奴隷らは、一時的には、念願のプルクテス王家の根絶と奴隷の身分解放には成功したものの、それを好機と見た帝国軍の総攻撃により、各地において、アレー解放軍は掃討されていった。


この反乱を起こしたのは、アレー・ソリスという男だ。


彼は、妹の敵を討つために、自ら反乱の先陣を切って戦った。


それは、一つの約束があったからだ。


ダリア・ロナスという仮面を被った貴婦人のような身なりをした者が、アレーの前に現れ、こう言ったのだ。


それは、とある日の事。


アレーは部下を集め、集会をする為、深夜の街を警戒しながら、歩いていた。


そして、細い路地に入った時、その女と鉢合わせした。


それを避けて、通り過ぎようとするが、その女は、突然、唐突過ぎるような言葉を発したのだった。


「……貴方がプルクテスを滅ぼしたいのであれば、お力になりますわよ」


「……どういう意味だ?」


「そうですね。簡単に言えば、貴方の憎む、ジャバ王を殺すとかはいかがでしょうか?」


アレーはその言葉に、少し苦笑いになった。


ジャバ王を殺す。


それは厳重な警備を潜り抜け、近衛師団及びローズ騎士団の目を盗んで、王宮に入らなければ、おの臆病なジャバ王は殺せない。無謀な事を言うのは、バカだけか、死に急ぎにしかいない。


なんの根拠もない奴の言葉を信じる者など一人のいないだろう。


だが、仮面で、ダリアの表情はわからない。それが、アレーには薄気味悪かった。


「ふっ。冗談は好きではないんだ。何が言いたいんだ?」


「あら?そうなの。面白くないわね。確かに冗談だけど……。でも意外と本気かもよ」


「はぁ?」


「いいでしょう。ならば、私と友人で、砦の一つを落としてみせるわ」


アレーは何を言っているのか、さっぱりだった。


ダリアの一言一言は理解できるが、あまりにも、実行できるわけがない。


しかし、その内容が面白くなったアレーは興味を見せる。


「……本当に出来るのか?」


「もちろん。そのかわり……」と言うと直ぐに何かの交渉をするのだとわかっていた。


「?」


「プルクテスでの大反乱を盛大に起こしてくださるかしら?」


アレーは大分前から、プルクテスで、反乱を起こす準備をしてきた。


その為の武器と部下も着々と揃えており、タイミングを見計らっていたのだ。


(偶然すぎる……)それが一番に、頭を過ぎった。


「もし、断ったら?」と相手の出方を見る。


「わかるでしょ?この情報、高く売れるとおもうのよ。私は」


なるほど。


断れば、ジァバ王に垂れ込むとわかったアレーはダリアと約束を交わした。






それから数日後、ダリアという女が、プルクテス領のトルナンシー砦を予定時刻通り、落としたのである。


その時、時が、歴史が、動いき、アレーの反乱への心が動いた瞬間だった。


だが、かれは浅はかだった。


これが、まさか、帝国の工作だったとは……気づいた時には、時既に遅し。


アレーの夢は、焔と同時に、消え去り、戦いに疲れ果てた奴隷たちは帝国軍が騎馬隊で、踏み潰していった。


そして、謎の黒騎士に捕らえられ、プルクテスから、帝国の帝都マキシリアンへ送られていた。


皮肉にも、奴隷を輸送する牛車で……


その檻の鉄筋は、冷たさが骨の髄まで響きわたる。


(私は……どこで、どこで間違えたのだ?反乱のタイミングはよかった……あの約束は?そうか。あの女……帝国の手先だったのか?ハハハハ。笑える。妹の敵を討ちたかったあまりに、自分を見失うとは……私がバカだった……)


アレーは虚ろの目で、あたりを見渡した。


女、子供が鎖で首と足を繋がれ、歩かされている。


動けなくなった者は、お決まりの鞭打ちだ。いつものプルクテスの風景と変わらない光景に、アレーは絶望した。


(私は何の為に……戦ったのだ……)


アレーが視線をあげた時、目に移ったのは、先導をする謎の黒騎士の存在である。


かれこれ、数時間も経っているのに、何も言葉を発しない。


そして、一番気がかりなのが、動きを不自然なのである。


まるで、何かに操られているような感じだ。それでも、帝国兵は気にしていない。


そんな、謎の黒騎士を虚ろな目で、眺めていると、少女が馬上から話しかけてきた。


「どうした負け犬?死ぬのが怖いか?」


「私の事はどうでもいい……それより、あの黒騎士は、一体何者なんだ?」


「あれ?あれは、俺の物なんだぜ。良いだろう?あれは、俺の恋人なんだぜ」


その台詞に、後から着た者達が笑い出した。


つぼにはまったのか、髪がパッツンの少女が腹を抱え大笑いする。


「アハハハ。チョーうける!あいつの事、まだアレクだと思ってんの?自分の手で、刺し殺したくせに」


「……キュナン、あれほど、俺の過去を話すなっていったよな?手前、マジでぶっ殺すぞ?」とキュナンの首元に剣を突き立てた。


キュナンは直ぐに、冗談だと言ったが、おさまらないのか、剣を鞘に納めない。


そこに、二人より、子供の風貌をした少女が割り込むように、入って、二人を引き離す。


「レイラさん。怒らないの」


「そうよ。これから主様に会うのだから、身なりは整えなさい。あっ言葉使いもよ」


アレーはその声に聞き覚えがあった。


仮面を被ってはいたが、身なりと、話し方、声すらも同一だった。


その瞬間、アレーの怒りがにじみ出るのであった。


「貴様ぁぁぁぁぁ!!!」


「あら?どうしたのいきなり」と何も知らないというような顔をして、アレーを見下ろした。


そして、ニヤリと一瞬だけ笑う。


「裏切り者!私を騙したな!!」


「あら?そうかしら。わたくしは騙すつもりはありませんでしたが」


「うっせぇなー。騙されるのが悪いんだよ。プルクテス人。手前は黙って明日の運命を神にでも祈ってろ」と言うと、レイラはアレーに唾を吐いた。


その光景を見ていた周りの帝国兵らは、あざ笑うかのようにクスクスと笑い出した。


アレーには、これ以上にない屈辱だった。


(殺してやる……みんな殺してやる。悪魔と契約してでも。未来永劫、恨んでやる……)


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