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勝利の祝杯

「くっ……これが亡霊の力か……」

「フフフ……。どうした?先ほどまでの勢いは、こけおどしか?そんな生半端な気持ちで、私のミネルを狩れるとでも?とんだ思い違いだ。ハンターども、狩られるのはどっちだろうな?もうじき、私らの援軍がお前らを潰しにやって来る。……今なら、ご慈悲で見逃してやるよ。まっ今日だけだけどね」

「……へー余裕だね。でも、あんたも、酷く疲れているように見えるんだけどな?」


ルベアに、そろそろ限界がきていた。ルベアには選択肢が二つある。


このまま、ロレンヌからの来るかもしれない援軍を待つか、それとも、敵に背を向け、レブソン城塞に退却するか。


ロレンヌからの援軍を期待することにしたルベアは、グレバスにかまをかけ、グレバス自身から、逃げるように仕向ける。


だが、グラバスらは、その言葉にも揺れる事なく、剣を振りかざす。


そんな、ルベアの考えとは別にミネルは、久々に驚いていた。


(剣が当たらない。体術もかわされる……ゾス様、レギナスの剣はまだ、解放出来ないのですか?)


ミネルヴァは心の中で、ゾスに話しかける。


(まだまだ、殺し足りない。もっと。もっと。血を浴びさせないと無理だ)


その言葉にミネルヴァは苛立ちを見せる。


「ちっ」

「あなた、なかなか速いわね。でも、私も同じくらい速いでしょ?」とニコラは、そう言うと、今、殺し合いをしているかを思わせないような、笑顔を見せる。


ニコラは、騎士の中では、俊足で、戦場を駆け抜ける乙女騎士と呼ばれるほどである。そして、ミネルヴァの足の速さに追いつき、反射神経もどの兵士よりもずば抜けているようである。


ミネルヴァは、心の奥底で、残っている人物がいた。それは、主人であるヨハンネと、共に逃げている最中に偶然出くわした、ソーイのことだった。


しかし、ルベアの願いが届いたのか、待ちかねた援軍がやって来た。


シェール軍の角笛が鳴らされ、ルベアは希望と喜びに満ちた顔で、その方へ振り向く。


「やっと来たか!!ってなんで、シェールの騎士団なんだよ!」

「よし!敵は少数だ!包囲し、殲滅する!かかれーーーー!」

「おーーーーー!」


 騎士達が雄叫びをあげた。


因縁の敵といえるバターン騎士団。


怒り狂うシェールの騎士もいる。


「仲間の仇!!!」


馬にまたがる騎士達は、剣を掲げて、バターンの騎士に目掛けて突撃を開始する。


「くそ。敵の援軍か……」


シェールの騎士団が直ぐそこまで来た時、グレバスが、左腕を空に突き上げ、拳にした手を、上に向けながら時計回りに回し始めた。これは、バターン騎士団の行動パターンでいう撤退の合図である。


「騎士団!撤退!直ちにこの場から離脱し、ンタドアン要塞へ逃れよ!急げ」


その言葉に、バターンの騎士らは、統制が効いているため、すぐさま、向きをかえて、離脱して行った。


「はぁ?撤退?!ふざけてんのか?もう少しで、亡霊を狩れるんだぞ」

「三人じゃあ無理だよ。態勢を立て直すのよ!早くしないと、置いて行くからね!あっじゃあね。亡霊さん。今度は必ず、仕留めるから」

「てめぇは俺が殺す!待ってろよ。必ずだ」

「………」


 ミネルヴァはその言葉に無反応だった。ルベアは中指を立てる。


「おととい行きやがれ!!」


 



============================================================================================================================






――――――数時間後、ロレンヌの夜の広場にて――――――ロレンヌでは早速、奪還のお祝いとして、宴が用意されていた。勘定はすべて、ロレンヌの街の人々が出しドラゴマ軍の略奪品の樽酒やラム酒などなど、たくさんのお酒やら、食べ物で街の広間が溢れかえる。まるで、お祭り騒ぎだ。さっきまで、殺し合いをしていたのが嘘のようだ。皆、笑顔で踊り狂う。ある程度の時間が過ぎてから広間の中央でラーバスが勝利の言葉と兵士らへ労いを兼ねて表した。


「――――――我が、勇敢なるシェール軍兵士並びにプルクテス軍兵士諸君!今宵、我らは、ロレンヌの街を取り戻す事が出来た!これは、我が国にとって、小さな勝利に過ぎないかもしれない。そして、ここまでたどり着く為に払った犠牲も決して少なくはない……」


 その言葉にシェール兵らは目頭を押さえ、啜り泣きする。敗戦に敗戦を重ね、シェール軍総軍で挑んだハニアの決戦にも、破れ、希望を失いかけたシェール人にとって、この勝利がどれだけ嬉しいかは、他の者にはわからない。共に戦った戦友が目の前で死ぬ光景は今でも忘れられないだろう。部外者であるプルクテス兵らは無表情で、その演説を眺めていた。なぜなら、彼らには何の利益にもならないし、シェールがどうなろうと、関係ないのである。プルクテス兵士らは既に国を失い、希望は何もない。


 だが、すがるものを捜しているのである。そのすがる所がルベアなのだ。現在も尚、生き残っているプルクテス軍の指揮官であり、命を託し信頼できる将として

。また、同じ釜の飯を指揮官でもある。簡単に言い換えれば、ルベアが族長であり、兵士らが民のような存在だ。


「だが、戦死者達の魂は我らと共にある!希望を持て!仇を撃とう!兵士諸君!さぁ。今日は、戦死したともと、酒盛りをしょうぞ!女王陛下万歳!」


「女王陛下万歳!!」


 そう言うと、酒を一斉に飲み始めるので、あった。ラーバスの演説に静まっていた者達が、再び騒ぎ始める。このシェールの兵士らにはとても面白い風習があるみたいで、それは、戦死した戦友の遺品であろう、かぶとや、剣に、自分の酒をかけるのである。また、戦場の混乱の中で、回収出来なかった戦友の為に、酒を石にかけたりもする。そんな光景が多く見られた。時には、それに、話しかけたりもしている。


 少し、離れた場所に、ルベアたちの姿があった。ご馳走が広がるテーブルを前にしても、ルベアはどこか不安そうな表情をしていた。


「なんだよ。このシュールな感じ。いやだぁーもぉ」と不貞腐れるルベア。

「仕方ありませんな。ドラゴマとの戦いで、数え切れないほどの戦死者がでておりまするからな。必然的にそうなるものえです」

「ほぉーなるほど。なるほど。さて、切り替えが肝心。という事で、私も、飲もうかなー」とラムが入っている酒瓶に手を掛けようとすると、ドンタールと、アドルに左右からブロックされる。

「んっだよ。私だって、飲む権利があるだろ」

「いけませんぞ!ルベア様」

「そうである。ルベア様。今日はダメ!前のように、一樽を飲み干して、大暴れでもされたら、困るでござる」

「うっせぇー離せよ。私は飲む!絶対に飲むぞーーー!」


アドルとドンタールを振り払い、酒瓶を一気飲みする。


その、飲みっぷりは、そこらの男らとは、全然違い、周りは、それを見届けるかのように唖然とするのであった。


その光景を見つめる、アドルとドンタールは、冷や汗が、滝のように流れ出るのであった。


「暴れたら、取り押さえるでござるぞ」


「賛成……」

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