強敵、バターン騎士団
シェール軍、作戦開始。
レブソン城塞より、騎馬隊を中心とした一軍の出陣の後、三日の頃。
シェール軍残存部隊はラーバス将軍に率いられ、ロレンヌ城塞へ、進軍をしていた。
ロレンヌの街は、シェール国にとって、重要な拠点のひとつであり、ここを奪還する事で、一気に形勢が逆転することも、ありえるのである。
平均人口、六千人を越えるシェール市民と、膨大な家畜の解放はドラゴマにとっても、痛手となる。
その為、ドラゴマ軍も当然の事ながら、迎撃部隊及び駐屯部隊、都市守備部隊がロレンヌを堅く守っているのである。
そして、新たな増援部隊として、バターン騎士団がロレンヌの街へ入城するのであった……。
ラーバス将軍の部隊とは別の方角から、ロレンヌを目指すルベアの一団は緊迫状態だった。
何しろ、ラーバス直属部隊の鎧に、旗を大々的に掲げているのだから。
ルベアの兵団の後方付近で、護衛隊に囲まれた荷馬車が数台率き連れていた。
その積荷に大量の大樽が積まれていたがこの中身が何かは、ルベアの兵団しか知らない。
数分後、拓けた荒野を進軍中のルベアの兵団は局面を迎える。
「敵の斥候!!」
その言葉にルベアは息を呑んだ。
そして、すぐさまに、命令を出す。
「全班に伝達!散開し警戒せよ!敵を発見次第、私に報告」
「「はっ!!」」
各、班に分かれている部隊長が、自分の隊に向かい、散開した。
「ドンタール!軍旗を持って先行しろ」
「承ったである!」とドンタールの部隊が馬の速力をあげ、先行していく。
「ルベア様、予定通りでござるな」
「あぁ。予定通りだ。忙しくなるぞ……」と、白い歯をアドルに見せるのであった。
ミネルヴァは、口をへの字に閉ざしていたが、心では、いろいろな事を考えていた。
(私は……いつになったらご主人様の所へ帰れるのだろうか……私は……私は……あの時……)
「くっ」と苛立ちが表情に表れ、歯を噛み締めた。
ドラゴマ軍の斥候部隊は、驚きの表情で、自軍の野営テントへ情報を持ち帰る。
「た、大変だ!!ラーバスが、ラーバスがーー」とその方角を手振りて言うが、喉がカラカラで声がなかなか出ないようだった。
「ラーバスがどうした?新人」
「ラーバスの軍団が我がロレンヌ城塞に進軍している模様!!」
「ラーバスの軍団がロレンヌに……?それは真か!?」と斥候部隊の隊長が、体をのめり込む。
「間違いありません!!ラーバス直属の軍旗とその兵団を目視しました!!ゲホォ、ゴホォ」
「直ぐに、ボワラ卿にご報告をしろ!早馬を出せ!」
「はっ!」
野営テントから、一人の斥候兵が、馬に鞭を打ち、ロレンヌの街へ、全速力で向かって行った。
その報告は後に、ボワラ卿の耳に入ることになるのである。
本来なら、部隊の位置を敵に知られたくない為、敵の偵察部隊、斥候部隊には要注意し、もし、発見される事があるのであれば、これを全力で阻止しなければならない。
が、ルベアは迎撃の部隊を出さなかった。わざと、見逃したのである。
ここまでは、ルベアの思惑通りである。




