戦いの準備 その2
「はい!将軍閣下。提案します。まずは、ドラゴマ軍守備隊を城塞から誘き出さなければなりません。そこで、将軍閣下の直属の装備一式と旗をお貸し下さい」
「それで、何をするというのかね?」と第五兵団隊長のコップが尋ねた。
「我が軍の最高指揮官は現在、、ラーバス将軍閣下であります。つまり、ドラゴマ軍は我がシェール国の戦意を挫く為には、まず、将軍閣下を狙われるでしょう」
「なるほど……確かに閣下がいなくなれば、シェール軍はバラバラになりますな」
「はい。そこで、このラーバス将軍の部隊に化けた囮部隊の登場となる訳です」
「敵は、手柄欲しさに、おのずと出てくる……と言う事であるか?」
「その通りだ。ドンタール」
「良い案だのう。気に入った。しかし、問題なのは誰が囮になるかだのう。もし、仮に誘き出せたとして、敵はその部隊を功績欲しさに死に物狂いで襲ってくるだろう。志願者はおるか?」
その言葉に、集まった一同が口を堅く閉ざした。
確かに、妙案だ。だが、囮になるリスクが大きすぎるのだ。
誰も、手をあげなかった。
それを見た、イェルグが手をあげようとした。
が、ルベアが先に、口を開いた。
「その囮部隊、我が兵団にお任せ下さい」と自信があるかのように、胸を手の平で押えた。
「なっ。それは我が騎士団がやるべきです閣下。どうせ、我らは栄光も輝きも失った騎士です。最後ぐらい女王陛下がお喜びになられるように我が一団で輝かしく散って見せます」
「騎士団は本隊の護衛として参加して、いや参加しろ」
「貴様、今、俺に命令をしたのか?」
「あぁそうだ。お前が、居たら邪魔で仕方ない。まー矢避けにはなるが、それでもいいのかな?」
「くっ。てめぇ……。いいだろう。生きて帰れるか見ものだ」
「イェルグ団長殿?私は勝ち戦しか、しませんので。将軍閣下。許可を」
「よかろう。おぬしの兵団に全てを託す」
「ありがとうございます!では準備にかかります」と言うと、ルベアら、一行は部屋を後にした。
石で出来た奥が広く、天井は吹き抜けになった廊下をルベアの一行が歩いていた。
そんな時、ドンタールとアドルが、顔を合わせた。
何かを言いたい様子だ。
「にしても、ルベア様?大丈夫でありますか。我輩、心配である……」と心配そうに、ドンタールがささやいた。
「なぁ~に心配ないって。ハハハハ。ルベア様の事だ。作戦があるに決まってるでござすよ」と心配しているドンタールの背中を、アドルがポンと手で叩いた。
「そ、そうだな。アハハハ」
「ない」
「「へ?」」と二人の拍子抜けした声が漏れた。
「だーかーら、作戦はない。時間との勝負だ。敵の城塞が落ちるか、我々が全滅するかのどちらか二つに一つ」
「それ、真面目にいってます?ルベア様?」
アドルは少し笑いながら、ルベアの顔を覗きこんだ。
冗談だと、思ったのだろう。
だが、冗談ではなかった。ルベアは本気だったのだ。
「同じ事を言わすのか?アドル。なんなら、貴様の最後の希望を毟り取っても良いのだぞ」と、アドルの頭のてっぺんをルベアは睨みつけ、怪しい笑みを見せた。
「ひぇ~それだけは、ご勘弁を!!!!」と頭を必死で守りだしたアドル。
「ミネル!」
「はい……」
「すべてはお前の働き次第」
「はい。承知しています。私が立ちはだかる者、全てを消します……」と、無表情でも、体の奥から、黒いオーラが出ているだった。
「ミネル殿、いつにもまして、悪魔のような雰囲気がでておりますぞ……」
「くれぐれも、味方だけは殺さないようにお願いするであるよ」
「承知しています……」
(私は、ミネルに賭けたよ。大丈夫、兵員は充分。問題は敵の守備隊の数だけか……耐えてくれよ。私の兵団……)
と、ルベアは心で、つぶやいたのであった。