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太古の狼 その2

「どうかしましたか?」

「いや――――ん?それは…」


 ゾスはミネルヴァが大事そうに抱え込む剣が気になった。気になるのか白い狼は不思議そうにその剣を物珍しそうに見入る。


 ミネルヴァが手にする長剣は見た事のないほど地味で飾りのないもの。だが何かを感じた。違和感というべきか。なにか普通とは違う感じがした。ゾスは頭の奥深くに、忘れていた記憶を呼び覚ましていた。


「その剣に名は有るのか?」


 その質問にミネルヴァは何の意味があるのかと思ったがとりあえず答える事にした。


「この剣はレギナスだそうです」


ゾスが驚きの声を出した。


「やはりレギナスかッ!何故、お前がこれを持っている?いやどこで手に入れた?!」


 ソスは首を傾げた。


「これは、ご主人様の大切な剣でした……それ以上の事はわかりません」


 言葉を詰まらせ目線を下に落とした。


「なるほど―――――」


 間があいてからゾスが遠い目で語り始めた。


「その剣は遥、昔、この大陸で、いくつもの果てなき、戦を戦い抜いた戦乙女の愛刀。肌身離さず、ずっと使われていた。幾度も人の血を浴びた、その剣はやがて赤く妖艶の如く光ったそうだ。それからその剣は神をも殺せる神殺しの剣という者がおれば、魔王の為の魔剣という者もいる。そのためリスティリアの死後は誰も扱わず誰もが恐れた。そして、リスティリアの眠る墓に、永遠に現れぬように納められた。その隠し場所は、偉大なる王らの秘密とし、地底深くに隠されたと聞くが」


 次々にわけのわからない事を言われたミネルヴァは混乱していた。ミネルヴァの主人であるヨハンネからたまにおとぎ話を聞くだけで、読み書きが出来ない彼女にとってタイミングもチャンスもない。


(―――――ご主人様はおとぎ話しが大好きだった……再び聞いてみたい。あの頃へ戻りたい……)


 ヨハンネのことを思い出すミネルヴァは空を仰ぐ。そうしないとなにか目から雫が落ちそうだったから。


(――――――今、私が出来る事はご主人様の為にこのおとぎ話を覚えること。だからしっかり聞かなくては……)


 ゾスの長い説明にミネルヴァは食い入るように集中して聞いた。


「―――――あぁすまぬ。話がそれた。レギナスの剣を目にしたのは我とて初めて故、昔話を語ってしまったようだ。許せ」

「別に構いません」

「んむ。だかレギナスの剣から力を感じないな?」


 ミネルヴァはよくわからない、と言いたげな顔で首をかしげた。ゾスがすこしため息とついてから知っていることを彼女へ教えた。


「恐らく、長きに渡る月日で力を失ってしまったのであろう。うーむ。……そこで、どうだろうか?その剣の真の力を引き出してやる代わりに、我の願いを聞いてはくれんか?」


 ミネルヴァがその内容を詳しく聞こうとした態度にゾスは怪しい笑みを浮かべた。

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