背中にゾクッときたら、それがオラっちの合図さ。――妖怪サブブのつぶやき
オラっちは悪い妖怪じゃないよ。
人様の背後にスッと立って、心の隙間にちょっと冷たい風を送るだけさ。なっ? 悪い妖怪じゃないだろ?
オラっちの正体は、ただの氷だ。それも、家の冷凍庫で適当に作られた氷と一緒。周りは透明だけど、芯のところが白く濁っている――そんな感じさ。
人間がオラっちを見ると、なぜか天使のように愛らしい10歳くらいの男の子に見えるらしい。不思議だよね。みんな、自分が見たいものだけを見るんだ。
この世の中は、どうしてこうも他者をコントロールしたがる奴ばかりなんだろうね。
「支配」ってのは、彼らの寂しさと空虚さを埋めるための甘い砂糖なんだ。一度味合うと、もう止まらないらしいよ。
例えば、子供時代に受けた傷から逃げ続けているような大人さ。
あいつらは「支配される側」になることを極端に恐れている。だから、その恐怖を埋め合わせるために、一番無防備で優しい人間を見つけては攻撃し、支配することでしか「自分は安全だ」って確認できないんだ。
あいつらにとって、他者は「自分の物語を演出するための小道具」でしかない。他人がどれだけ苦しもうが、それは単なる『自分の管理下の出来事』としてしか認識されない。
結局のところ、一生自分の弱さと向き合うことから逃げている、想像力のない未熟なガキなんだよ。
そういう奴らはね、外面だけはやたらといい。
外でどう思われるかばかり気にしているから、オラっちが天使のような顔で困ったふりをして近づくと、向こうからホイホイ寄ってくる。
「迷子かな? 大丈夫?」なんて親切ぶってね。そこがオラっちのチャンスさ。
会話の隙に、奴らの心の奥底にある、重油みたいにドロドロした『澱』を、氷の手で背中からひょいっと撫でるんだ。
よくあるだろ? 何もないのにゾクッとする、あの鳥肌。それが立ったら、だいたいオラっちが後ろにいると思っていいよ。
ポイントは、澱を全部吸い取らないことさ。
ほんの少しだけ残しておくと、あいつらは懲りずにまた澱を溜め込んでいく。一度冷やされた場所には、さらに濃厚で苦い感情が育つからね。
澱が深まれば深まるほど、あいつらの攻撃はエスカレートして、最後には勝手に自滅していくのさ。
自滅しない奴は、またオラっちが冷やしに行くだけ。
この街には、大人になれない大きな子供がいっぱいいるからね。
いくらでも自滅してくれればいいんだ。オラっちは、ただ静かに冷やしているだけなんだから。




