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ラディヴィータの伝説と、ソルミラの詩から。  作者: 荒間文寧


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2-4

 昼食を取り終えたメラは真っ直ぐギルドへと帰った。お帰りなさい、と言いながらカウンター内のスコイアは一枚の紙をひらひらとこちらに振っている。

「報酬、もらいましたよ」

 今朝駆け込んできた彼が戻ってきたのだろう。

「様態は?」

「大丈夫そうでした。仕事は暫く難しそうですけど」

 メラが胸をなで下ろしているうちにスコイアは書類をしまい込み、「セルペ君は?」と尋ねてくる。

「食堂のおばちゃんにいい感じの空き家を教えてもらって、家主に話しをつけに行った」

 なるほど、と呟いてなにやら考え込み出すスコイアの様子に、メラは困惑した。暫く待ってみると向こうからおずおずと「セルペ君って、何者なんですかね?」と言い出す。

 よく分からない、が一ヶ月前にギルド職員三人で出した結論であった。あれからずっと見てきたが、その答えは未だ変わらない。

「めちゃくちゃ強いんでしょう? あの歳で」

「そうだなあ」

「おかしいと言うか、普通に不思議ですよね」

「まあ、そうだな」

 というわけでえ、などと急におちゃらけた声で言い出したかと思えば、スコイアはごそっと紙の束を出してカウンターの天板へどさりと置いた。

「気になったんで、調べちゃいました」

 さすがは暇人、と真っ先に思い浮かんだ感想は口に出さないでおいた。目の前に現れた紙の束を、メラは数枚捲る。王都にある中央ギルドが発行したリストである。依頼内容によってはギルド側から直々に冒険者を指名することができるため、全ギルドは月一で冒険者のデータを書面に纏めて送っているし、また条件を指定してデータを取り寄せることもできる。

「条件は?」

「去年一月以降に達成されたBランク以上の依頼」

「場所は?」

「全域でかけました」

「それにしたって多すぎるだろ」

 凶暴化が増加していることは認識していたが、実際の依頼料を目の当たりにするとメラも驚かざるを得ない。

「で、ざっと見たんですけど、やたら若い子が多いんですよ」

 ほう、と呟いてメラもしっかり資料に目を通すことにした。スコイアの言うとおり、確かに依頼達成者の中には年齢の低い者が多い。しかも地方、それも人口の少ない田舎では単身でいくつも達成している十代の若者もいる。それこそソルミラに来てからのセルペのように。

 肉体面だけ考えれば若いほうが有利だが、高難度の依頼はそれだけでなんとかなるものではない。大抵はそれなりに経験を積んできた冒険者がこなすものだ。一人二人ならまあ、とんでもない逸材もいたもんだと流すところだろう。しかしそう言うには数が多すぎる。

「一ヶ月以上前、ここに来る前のセルペ君の名前はありませんでした。まあ偽名の可能性もあるので分かりませんが。そもそもセルペ君の言う「王都にいた」を信じるのであれば冒険者はしていなかったのでしょう。どの依頼も王都から離れた場所ばかりです」

「だろうな。そもそも王都付近は凶暴化自体が少ない。駆除討伐系の高ランク依頼なんてめったに出ないからな」

 今日、セルペが駆除した魔獣はどうだろうか、とメラは考える。正式にギルドを通して依頼を上げるなら、Bランクまではいかないだろう。Cで出しつつ、口頭では「一応、Bランクをこなせるだけの戦力があったほうがいい」と案内するのが無難だろう。それをあっさり単身で倒していること自体、メラはとんでもないことだと思っていた。しかしこの資料によれば、セルペ以外にもそんな若者が何人も地方で頭角を現しているらしい。

 ではなぜそんなことが? という疑問を解決するだけの情報は残念ながらこの資料に見いだすことはできない。

「優秀な若者が増えていること自体は、好ましいことなんだろうな」

「セルペ君もそのうちの一人ですか。何者なんでしょうね?」

「まあ、悪さしないなら何者でもかまわないだろ。人には知られたくないこともあるだろうしな」

「あー、メラさんがこんなとこに飛ばされた理由とか?」

「はやく飯食ってこい」

 はあい、と平然と呟いて、悪びれる様子もなくスコイアはカウンター内から去って行った。

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