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ラディヴィータの伝説と、ソルミラの詩から。  作者: 荒間文寧


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4-3

 そんなわけで買ってきた夕食を食べ終わったところ、セルペは躊躇いなくソファへごろんと寝そべった。

「泊めてもらえて助かったー! ありがとうメラさん!」と感謝を口にしつつセルペはくつろいでいる。別にそれ自体にはなんの不満もない。メラは気にすることもなく「そもそもお前、なんで免許なんか取りに来たんだ?」と尋ねた。

「オルソさんが行ってこい、って。数日ならソルミラの魔獣は俺が対応する! って意気込んでたよ」

 あとはまあ、とセルペはちょっと声のトーンを落とす。

「俺自身も、ちゃんと知りたいと思っていたから。いい機会だと思って来てみたよ」

「取ったところでソルミラじゃ飼えないだろ。三ヶ月ごとに魔獣と一緒にここまで来る気か?」

「それ! それなんだよ。俺も今日知ってびっくりした。見せに来なきゃいけないなら、免許取ったところで飼えないよねえ。オルソさんがっかりするだろうなあ」

 とはいえ手ぶらで帰るのも格好悪いし、明日は合格しなきゃ、と言いながらセルペは今日の講義で使った資料を手に取って眺め出す。

「俺、どこで間違えたの? 結構自信あったんだけど」

 と口を尖らせながらペラペラと資料を捲っている。だろうなあ、とメラは思った。非常に言いにくいが、このまま黙っていてもう一度挑戦させるのも可哀想である。時間と受講料を無駄にするだけだ。

 仕方がないのでメラは「あのな、セルペ」と重い口を開いた。

「明日受けなくていいぞ」

「え、なんで?」

「お前は受からないから」

 ぽかんと口を開けたセルペは、数秒後に「そんなズタボロだった!?」と叫ぶ。メラは慌てて「そうじゃない」と否定した。

「点数は取れてた。合格点ちゃんと越えてたぞ」

「じゃあなんで?」

「……不適合、だとさ」

 点数関係なしにはじかれたんだよ、お前、とメラは続ける。数ヶ月間、何人もの受講者を見てきたが、不適合の記載は今日初めて見た。

「……そっかあ」と呟いた後、セルペはじっと考え込むように黙った。ソファに寝そべったまま、腕で目元を覆って暫くじっとしていたが、やがてぽつりと話し出す。

「メラさん、あれからなんか分かった? 共生具や実験のこと」

 悪いが、とメラは首を横に振る。

「今日の講義中に教えたことでほぼ全部だ。あとはまあ、関わっていた派閥と家が明確になったくらいか」

 とにかくギルドとしては、というか王女派は共生具を大きく普及させたいらしい。安全だとは言い張っているが明確な根拠までは明らかにされておらず、セルペの胸にある赤い魔石のこともさっぱり情報がでてこない。はたしてこれは誰のためなのか、メラは未だ見えずにいた。貴族連中によるただの政治的な派閥争いなのか、それとも民衆のためのものなのか。ヴェルドは一向に明かす気配がなく、ただ言うことを聞け、の一点張りだ。転勤直後にやんわり探ろうとしたが笑顔でガン無視された。腹が立つのでこちらから話し掛けたくないが、実態も分からないままひたすらヤツの思い通りに働かされている現状は不愉快極まりない。

 とはいえメラがこうして中央に、ましてや共生化にまつわる部署に配属されたのは間違いなくヴェルドの手回しのおかげであり、そして元凶は数年前のヴェルドとはいえ上層部から目をつけられていることにも変わりはない。おおっぴらに動けば今度こそ一瞬で首が飛ぶだろう。職を失う、という意味ならマシなほうだ。下手したら人知れず本物の首が飛ぶ可能性すらゼロじゃない。

「なにか新しいことでも分かったら手紙でも出そうと思ってたんだが、さっぱりだ」

「分からなくても手紙は出してよ。オルソさんやスコイアさんだけじゃなくて、村のみんなもよく言ってるよ。メラさん元気にしてるかな、って」

 そうか、とメラは呟きながら涼しくて穏やかなソルミラの夏を思い出す。

「じゃあまあ、明日は受講せずに観光でもしようかな。確かに王都にはいたけど、街の中は全然見たことがないし」

「そうしていけ。少なくともソルミラよりはよっぽど見るところがある」

 だろうね、とセルペは笑った。

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