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冬のソルミラはすぐ静かになる。日没が早いこと、そしてその寒さから逃れるため、早々と住人たちは自宅へと籠もる。防寒具をきっちり着込んだメラは一人、静寂の村で雪を踏みしめて歩いていた。片手に握っているのは先日ヴェルドが置いていった飲みかけの酒瓶である。すでに酔いは回っているが、真っ直ぐ歩けないほどではない。
セルペの話を冷静に考えられるようになるまで、メラは数時間を要した。そこから好きな酒を適当に呑んで、とはいえアルコール耐性は弱いので少量ですっかり酔って、今こうしてのんびりと外を歩いている。目的地はメラの家から数百メートルしか離れていない。だから考え事をする間もなくたどり着く。セルペが借りた家はギルドからも、そしてメラの借家からも近い。カーテンの掛かった窓の、さらに奥から明かりが漏れていることを確認したメラは躊躇いなくドアを叩いた。正確には、躊躇わないために酒を呑んできた。
すぐに開いたドアの先で、セルペはちょっと驚いた顔をした。しかしすぐに中へと通してくれる。コートを脱ぎながら、メラは少しだけ室内を見回した。家も家具も年季が入っているが、散らかってはいない。綺麗に使っているなあ、とメラは勝手に安心感を抱いた。その中で一つ、暖炉から少し離れたところにある檻だけが異質だった。セルペが毎晩連れ帰って、面倒を見てくれている魔獣が二匹、その中で丸くなっている。メラはその檻の前に屈んで中を見た。魔獣をのんびり観察しつつ、メラは持参した酒瓶を一口煽った。
「さっきは悪かった」
斜め後ろに立っているセルペは何も言わない。突然押しかけてきたから困惑しているのだろう。
「先に言っておくが、本当に知らないんだ。人間のお前にそれが着いているのを見て驚いてな、驚きすぎて頭が回らなかった」
だけど知らない、分からないとだけ言われてもお前は納得しないだろう? とメラは続ける。
「俺が知っていること全部話してやる。聞いたところでお前の知りたいことはなにも分からないだろうけどな。だから一晩だけ付き合え」
側に立っていたセルペはなにやら遠ざかっていった。暫くすると戻ってきて、メラの隣へとしゃがみ込む。キッチンからコップを持ってきたらしい。両手に持ったそれのうち、左手のほうをメラへと差し出してきた。
「コップくらい使いなよ」
それを受け取って、メラは手酌で酒を注ぐ。お前は? とセルペへ酒瓶を向けたが首を横に振られてしまった。
「お酒はいいや」と言いながら手元のコップに口をつけだす。自分用になにか入れてきたらしい。ならいいか、と納得しながら、メラはポツポツと話し出した。




