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ラディヴィータの伝説と、ソルミラの詩から。  作者: 荒間文寧


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2-8

 始業時間はとっくに過ぎている。具体的に言えば二時間くらい。信じられないほどの頭痛と、胃から湧き上がる気持ち悪さがメラを襲う。凶暴化魔獣みたいなうなり声を上げながらメラはベッドから這い出した。汲み置きの水を一杯だけ煽ってから、メラはのろのろと着替えた。回復の兆しを見せない体を引き摺って外へ出ると冷たい空気が頬を射した。そういえば昨晩降ってたな、とメラはやっと思い出す。地面はうっすら白くなっていた。山を見ると頂上付近は白化粧を纏っている。この程度ならまだ通れるだろう。うっかり落ちたらまあ、それはそれだ。メラ的には全然それでいい。

 身を縮こませながらギルドへ入ると、カウンター内のスコイアがメラを見るなり「あ!」と不遜にも指をさしてくる。

「遅いじゃないですか! 偉い人、とっくに帰りましたよ?」

「そりゃよかった」

 朝からあいつと顔など会わせたくもない。なんなら二度と見たくない。

「よくないですよ。所長なんですから、ちゃんと見送りくらいしないと」とスコイアが言いかけたところで出入り口のドアが大きく開かれた。現れたのは頬と耳を真っ赤にしたセルペだ。メラはそれを寒さのせいかと思ったが、どうやら実際に気分が高揚しているらしい。

「メラさんおはようございます! 雪だよ雪!! 俺初めて見た!!」

 入ってくるなり大声でまくし立て出すセルペに、寒いから早くドアを閉めろとたしなめる。慌てて戸を閉めるセルペの背に向かって「こんなの積もったのうちに入らないぞ」とメラは冷静に言った。

「でもしばらくは解けることもない。ここから最低でも三か月、外部冒険者は呼べないに等しくなる。お前が唯一の、この村の冒険者だ」

 頼りにしてるぞ、振り返ったセルペの肩を、メラは軽く叩く。セルペは一瞬ぽかんとした表情を見せたが、すぐに「任せて」と破顔した。

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