008 自称妹の登場
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「仕方ない。ここは引かせてもらおうか……」
対抗策が思い浮かばないのならば、思い切って退却するのも立派な手段だ。
スウィングは透明人間のようにその場から姿を消し去った。
そして、ラークは取り憑かれたような魔力の暴走を抑え込み、地面に着地する。
「ご、はァ……!!」
リスクなく優れた力は手に入らない。内蔵が破裂しそうだ。どの内臓なのかはこの際関係ない。肝心なのは、今生き残れるかだ。
「ここで死んだら後悔だけが残っちまう。メスガキの身体になって、死んでいくなんて……ごめんだぞ」
されど、ラークの身体は動かない。携帯も取り出せないほどだ。
その場しのぎの所為で、今すべてを失おうとしていた。
そのとき、物音が聴こえた。
「どうしたの?」
ラークは声の主に目をやる。
へんてこな幼女がラークに声をかけた。
典型的な美形。赤い目。白髪。華奢な身体つき。倒れ込むラークでもわかるくらいの低身長。ただ、今のラークよりは背丈が上だろう。
服装は安っぽいワンピース。
なぜへんてこに感じたのかといぇば、彼女の肌の色が関係しているだろう。
白い肌、いや、白すぎる肌。間違いなければ、彼女はアルビノだ。
「……どうにもこうにもしていないさ。快楽殺人鬼に睨まれた哀れなカエルとでも思ってくれ」
「カエルって見てると不安になる」
「あれを食う連中もいるんだぜ? ……随分落ち着いているな」
「焦る理由がないもん」
「目の前でヒトが死んでも同じこと言えるのか?」
「ヒトが持つ魔術と魔力にしては、あまりにも理不尽すぎる。死にたくても死ねないだろうね」
「そりゃ、結構なことで……」
「うちはラキナ。貴方はラークでしょ? 私のお兄ちゃん」
「……そうかい。オマエはおれの妹かい」
ついにラークの意識が途切れた。
そもそも現実に起きたことなのかも曖昧な、濃すぎる1日が終わる。
夕焼けがすべての罪人に恩赦を与えるのだ。
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