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悪魔ノ片鱗-才能ないからクビになったおれ、幼女になったら実力が開花したんだが-  作者: 東山ルイ
第1章

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007 あしたに希望をつなげ

 腹部を殴られ、ラークは口からドバドバ血を流す。


「ごふぁァ!?」

「手加減してやったぞ? 私も鬼じゃない。いくら相手の中身が男とはいぇ、ほとんど女児なヤツに渾身の一発を与ぇるほど落ちぶれていない」

「……あぁ、そうかい。クソ野郎」


 すでにミクを連れてきた公園は戦場となっていた。警察機関も動き始めるだろう。

 もっとも、逮捕されるのは間違いなくラークのほうだ。今の彼、いや彼女には後ろ盾がいない。対してスウィングには、裏に強力な組織がついているからだ。


「……スウィング、テメェはなんでおれに執着するんだ? イカレた快楽殺人鬼が気にかける獲物でもねぇだろ?」


 逃げ場を探さないといけない。会話するふりをして、足を1センチずつ、後ろに動かしていく。


「私は異常者だ。だからオマエを付け狙う。才能に嫉妬してこそ人間だからだ」

「才能……」

「道具は正しく使わないとならない。拳銃は相手を撃つため。刃物は相手を刺すため。それ以外の用途なんてない。最初から殺意むき出しで挑まれる理由が、まだ分からんか?」

「知らねぇな……。知ったところで意味あるの? それ」

「オマエが恐るべき敵で、恐るべき実力を持っているからだ。その本質はガキになったことで完成しつつある」

「あぁ、そうかい」吐き捨てる。


 スウィングは怪物だ。人殺しに罪悪感なんて覚えるわけがない。それは、彼と仕事をしたことのあるラークならば痛いほどわかっている。芸術作品のごとくヒトをバラバラにする怪物相手に、こちらの条理などなんの役にも立たない。


 そんなわかりきった現実と今、このひと気のない公園で対峙している。


「さぁ、続けようか」


 おびただしい殺気だ。魔力に暗闇しか感じない。夜のごとく。もう明けない夜のように。

 だから、蛇に睨まれたかのように、あるいはダイヤモンドに感嘆するような、そういった感覚でスウィングと向き合わないとならない。つまり、逃げられないのだ。


「おれの本質はどうだって良いし、大した関心もねぇ。所詮は人員整理される立場の存在だからな。今までは男だったから本領発揮できませんでした、なんて言い訳できないだろ? 今だ。今を生き残らないと、あしたは訪れない」


 遺言でも残すかのようだった。不安と緊張が胃を圧迫する。

 それでも、強者の一員としてラークは楽しさすら覚えていた。


「そうさ……あしたに希望をつなぐんだ。きょうを乗り越えるってことは、つまりそういうことだ」


 ラークの身体に蒼い放射線が集まり始める。

 言霊(ことだま)というヤツだろうか。ラークの決意とともに、まだ取得できていない術式が脳という電算機で演算されていく。

 刹那、刹那だった。ラークが音もなく姿を消したのは。


「……高速移動か?」


 スウィングは慌てていなかった。おそらくこの幼女は高速で動き回っている。空を、地面を。

 しかし、常時高速で動き続ければ,ガス欠を先に起こすのは間違いなくラークのほうだ。


 いや、そんな自爆にも近い行動でなにを得ようとしている? 魔力が枯渇することが一番の敗因だということは、当のラークが一番理解しているはずなのに。


 そして、ひとつの答えが示される。


「──ッ!?」


 脳が振動した。頭蓋骨が割れそうなほどだった。脳内で嫌な音が響き、砂嵐が舞い上がる。

 ラークは頭上に現れ、スウィングの頭を思い切り蹴る。膨張しきった魔力は、むしろ感じ取れないほどに強まっていた。


「いったい、なにが……!?」

「小物臭せぇ台詞吐くな。続けるんだろ? スウィングッ!!」


 ラークは楽しそうに笑う。

 最前とは立ち位置が逆転した。

 四方八方から忍び寄る攻撃。防衛しようにも、追撃の向きが読めないのだ。それはつまり、魔力の動きが歪んでいるということである。


「チッ……。やはり怪物はオマエのほうだ」


 瓦礫の山から立ち上がり、スウィングはそうつぶやく。

 正直、打つ手がない。攻撃の向きが分からないのならば、悪魔の片鱗による防御体制も、自分の魔術で防ぐこともできないのだ。


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