006 パパ活でカネ作ってたのか!?
「──っぶねぇ!!」
「誰だよ、チクショウ!!」
揃いも揃ってラークの顔を見る。
その精悍で凛々しい幼女の顔は、青ざめていた。
「魔力の流れから特定したのか? ……そんな芸当できるとしたら、オメェしかいねぇよな?」
「いかにも」
知り合いか? と、ジョニーは思う。
相手は40代くらいの男性だ。ただ見た目は似ていない。ならば……。
「おい! パパ活で金作ってたのか!?」
ジョニーの推察はもっともなものだが、同時にラークを知っている者の台詞でもない。
「違げぇよ!! なんで〝おれ〟が男相手に股開かなきゃならねぇんだ!!」
男はニヤリと笑い、自身の高速移動の先にいる、砂ホコリまみれのラークを見据ぇる。
「久しぶりだな、ラーク。風のうわさじゃクビになったって聞いたが」
「……情報の足はおれより早ぇな! そのとおり! おかげでこのザマだ!! 飯すらまともに食えねぇ日々過ごしていたんだ!!」
「その割には、随分魔力の抑制が効いている。子どもになったのが幸いしているのか?」
「知らねぇよ!! ジョニー! ミク連れてどっか逃げろ!!」
「……あ、ああ!」
凄まじい剣幕に、ジョニーも震えた。本当にあの幼女なのだろうか。どこか惚けた態度が嘘のようだ。
「逃がすと思うか?」
瞬発し爆発した男をラークは無理やり止める。足の速度を速めて、魔力を腕に集め、男を殴ることで一応静止できた。
ただ、それが限界でもあった。男はまるで怯んでいないからだ。
その間にジョニーはミクを抱ぇて逃げていくのだった。
「……ははッ、そうさ。あのころの〝おれ〟とは、ちょっと違うぞ」
「なにが変わったんだ? 常に業界の最底辺を這いずり回るゴキブリが」
「そのゴキブリ消しに来ているオマエは、ゴキブリもどきだろ?」
「相変わらず口は達者だな。ヤツらに奉仕して、お友だちごっこさせてもらっているのか?」
「さァな!!」
今度は能力の詳細がわかっている。ならば負けないはずだ。
ラークは地面を蹴り、瞬間に男との間合いを詰める。
男は反応できているが、防御まではとれていない。
ラークはありったけの魔力を腕に注入し、男を殴ろうとする。
だが。
「今のオマエは身長150センチ程度の子どもだぞ?」
腕がそもそも届かない。いや、感覚がつかめていない。この身体のサイズに頭がついていけていないのだ。
手痛い反撃を喰らいそうになり、ラークは慌てて予測し始める。
だが、時既に遅かった。
「そして中身は男だ。男の顔を殴っても心は傷まんな?」
ろくな防御もできず、ラークの鼻はへし折れたかのごとく血を噴射する。
「……いてぇな、チクショウ」
「さて、バラさせてもらおうか」
後方へステップを踏み逃げる。頬に汗が垂れる頃、魔力を固めた波動が飛んできたのだ。
だが、ラークの動きは明らかに鈍くなっている。魔力が保たない──!!
「ねぇのなら、追加するだけだ!!」
ラークは無造作に魔力を感じ取って、それを吸収していく。魔力なんてものは、花や草からでも取れるはずだ。
吸収している魔力を一部波動にして、ついでに攻撃をする。
しかし、それが届かない。最前のごとく、砂のように溶けていくだけだ。
「ほう、天才的だな。随分使いこなしているじゃないか」
「使いこなさなきゃ死ぬだけだ! ゲームと違ってリセット効かねぇからな!!」
やはり直接攻撃するしかなさそうだ。
ラークは闇雲に突撃していき、しかし相手の魔力の流れをしっかり読む。
「悪くないが、まだまだ足りんな」
だが、それすらも察知されていた。
刹那的に魔力の流れが読めなくなって、同時に男も消ぇた。
「手札を知り尽くされている相手に、することじゃねぇな!?」
「大事なのはどのカードを切るかで、オマエにとって致命的なのはどのカードを切られても対処できんことだ!! ラーク!!」
「スウィング! おれァオマエのそういう態度が大嫌いだ!!」
(現れた!! しかし避けられねぇ!! 今くらったら即身仏だ!!)




