015 ハッカー役の発見
その後、ラークとラキナはジョニーの家へ向かっていた。
「あんまり広い家じゃないからな。ドンとラキナはベッドで寝られるけど、おれはソファーで練るしかない」
「そこまで気使ってくれなくて良いのに」
「ドンは成長期だろ? なら、ちゃんとベッドで寝たほうが良いさ」
昼の日差しがサンサンと降り注ぐ中、カネなんてない3人はただ歩いていく。ジョニーの空間移動を使えば良いのでは? と思うかもしれないが、家までの道のりが分からなくなるため仕方ない。
「ドン」
「ん? あぁ」
ジョニーは、倒れ込んだ誰かが誰かを蹴っている様子を指差す。連中の年齢的は高校生くらいだろうか。「こりゃいけないな」とラークは、いじめっ子4人組といじめられっ子ひとりの元へ向かった。
「なにしているんですか?」
「あァ!? ガキが首突っ込むんじゃねぇ!」
「そうですか」
ラークは魔力を右腕に集め、張り手のようにいじめっ子の胴体に触れた。
バンッ! という爆発音。
いじめっ子のひとりは、ガードレールまで吹き飛ばされた。
うめき声を上げる友だちを見て、いじめっ子たちは呆気にとられたような表情になる。
「……は?」
「首の代わりに手を突っ込んだだけだよ。さて、次お仕置きされたいヤツは?」
いじめっ子たちは、中心で蹴り放題していた少年を放って一目散に逃げ出した。根性のないヤツだ、とラークは侮蔑の目つきで彼らを見送る。
「よう、調子は?」
「……誰?」
「私はラーク。オマエは?」
「……ローナ」
顔は腫れているが、元に戻れば美形だろう。髪の毛は金髪で、この歳の少年にしては珍しくデコを隠すくらいの長さ。身長は160センチくらいで、あまり高くない。学生服を着ているが、ラークは小学校もろくに出ていないためなんの学校かは分からない。
「そうか。ちなみに、蹴られていた理由は?」
「見れば分かるでしょ……? いじめられてるんだよ」
「理由は?」
「僕が〝ナード〟だから」
「それだけであんな人数に蹴られたりしないだろ」
「……アイツらをぶち殺す毒薬を学校で作ってたんだけど、それが誰かに密告された。だから殺されかけてた」
「へぇ。ならさ、ハッキングとかできる?」
「一応は……」
「上出来だな。きょうからオマエは、ボヘミアン・ファミリーの頭脳担当だ」
「……は?」ローナは汚れて腫れた顔を上げた。
「オマエ、居場所がねぇんだろ? 学校には殺してぇヤツがいるけども、ソイツも失敗している。それに、学校には機材が揃っているだろうけど、わざわざあそこで毒薬を作る意味はない。となれば、家でも孤立していると考えるのが普通だろ?」
「……っ」図星だったらしい。ローナは唇を噛む。
「私たちは社会の落第者で、爪弾き者の傾奇者だ。そんなクソッタレのゴミ箱どもだが、今度ハンターズ入隊の試験を受けようと思っている。どうだ? ここはひとつ手を組まないか?」ラークは小さな手を差し出した。「毒薬を作るスキルは、魔術も絡んでいるんだろ? だからそれらを私らに提供してもらえれば良い。どうだ? 乗るか?」
ラークといじめられっ子がいつまで経っても話し込んでいるので、ジョニーとラキナは彼女たちの元へ向かっていく。
「ドン。人助けも良いけどさ、おれらを放置したら寂しいぜ」
黒髪でウェーブのかかった髪をソフトモヒカンにしている、男前の24歳ことジョニーは、顔が腫れて口も切れて血を垂らす少年に、ひとまず口を拭くようにハンカチを差し出す。
「あ、ありがとうございます」
「あぁ。で? このガキンチョとなに話してたの?」
「簡単だよ。ボヘミアン・ファミリーに勧誘していたんだ」
「あァ? 制服見る限り、金持ちしか通えない学校の生徒だぞ? それがおれらみてぇなクソどもの仲間になるのかよ━━」
「僕、ボヘミアン・ファミリーに入りますよ。ラークさんが僕を助けてくれたのは事実なので」




