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悪魔ノ片鱗-才能ないからクビになったおれ、幼女になったら実力が開花したんだが-  作者: 東山ルイ
第2章

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010 ラークの遺伝子

 平行線である。ラークの文句は正論だが、ラキナもある意味正論を述べているのだ。だから交わることはない。

 そして、この場合折れなければならないのはラークのほうだ。現状男性に戻る手段がないのだから。


「ははッ……。怪我の功名はそもそも、瀕死並みの怪我くらわないと発動しないってか」

「でもさ、その分おいしいところもあるでしょ」

「……、悪魔の片鱗か」目を細める。

「見た目が変わろうと、性別が変わろうとヒトの考え方は変わらない。でも、変わらないんだったらやることも手っ取り早いでしょ? 邪魔なものは壊して、欲求は他人を奴隷にすればどうとでもなる。問題はその腹積もりが立ってるかどうかだよ」


 人間の本質は欲望だ。ラキナの語ることはもっともだと感じた。考え方が似通っているから兄妹だと断言している節もあるだろう。

 ラークは空を眺める。そして冷静に自分を見据える。


「おれの欲望か。そりゃきっと、かわいい女や男に囲まれて、ハーレムパーティ24時間365日だな」

「男も入ってるんだ」

「むさ苦しい野郎はいらないけど、美形だったら許せる気がしてきた。もともとの気質か、こうなったからかは知らんが」


 ややこしい話だ。この見た目ならば性愛を向けるのは男性だが、中身は列記とした男性だから本来は女性であるべきであり、しかしその哲学が崩れ始めているのも事実だった。ラークは限りなく中性に近づいているのだ。


「ま、楽しければそれで良いんじゃない? ラキナは正妻としてラークを待ち続けるだけだよ」

「妹が正妻になる世界なんて、聞いたことないね」

「ラキナは家族がほしいだけだよ。そのためだったらなんだってする。ラークの手足を切り落としてでも、最後にはその位置にいるようにしてみせる」


 異質に服を着せればこうなるのだろうか。

 しかし考えてみると、ラークは明確にラキナを否定していない。変なヤツがいる、という捉え方だ。

 そして危害を加えられたわけでもないので、特段対処する理由もなかったりする。

 されど、こうやって会話していると、この少女は危険因子以外の何者でもない。現状は無害だが、いつしか猛毒に化ける可能性だってある。


「……ラキナ、仲良くやろうぜ。互いにな」

「そりゃもちろん。ラークが受け入れてくれるなら、ラキナなんでもするよ?」


 だから、ラークは爆弾を抱えつつ、うまく起爆装置を無効化する方法を考えるほかない。現状ラキナは無害だから、この間に方程式を組み立てるしかないのだ。


「なにはともあれ、家へ帰ろう」


 *


 さほど広くない家。あしたまでに家賃を払えなければ追い出されるため、出ていくことがすでに決まっているような自宅。回りっぱなしの換気扇。殺風景な家電。


「相変わらずなんにーもない」

「もうストーカーするなよ? オマエ多分、思い込んだら一直線なんだから」

「ストーカーじゃないもん」

「ならなんなんだよ」

「熱心なファンってところ?」


 どちらにしても犯罪である。子どものような屁理屈……いや、ラキナは子どもだ。ただアルビノな子どもでしかない。


「しかし、アルビノってところに嫌味を感じるな」

「なんで?」

「おれもそうだったから」


 ラークはこうなる前、白い肌に白い髪、赤い目をもったアルビノであった。見た目で舐められないようにと筋肉をつけて刺青も入れた。なお、刺青は現在も残っている。


「なにかやらしい考えを感じるぜ。たちの悪い、嫌がらせみてーな」

「そりゃラキナは、ラークの遺伝子でできてるんだもん」

「……は?」

「冷蔵庫もからっぽ~」


 引っかかるどころの騒ぎではないことを口にした。

 ラークに子どもはいない。いないはずだが……。


「ちょっと待て。おれの遺伝子でできているだと?」

「気づかなかったの?」

「気づくもなにもないだろ! ──オマエは、おれのなんなんだ?」

「父であり、母でもある存在?」


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