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Sword King  作者: ふんころ
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修行開始2

リーヒンドとの特訓を続けて1ヶ月、俺の剣術は確実に進化していた。


"あの一振"の再現はほぼ完璧に近づき、基本の型は体に完全に染み込んだ。もはや意識せずとも体が自然に動く。そんな俺に、リーヒンドは次なる課題を告げる。


「第1の弱点、第1段階がクリアしたら、第2段階はあっという間だ。気を引き締めろ。」


「はい。」


その鋭い眼差しに圧倒されながらも、俺は真剣に応じる。リーヒンドはさらに問いを投げかけてきた。


「ダナー、基本の型を習得して、マネキンと対峙した時を覚えてるだろ?その時、お前の剣術の特徴やタイプを自分なりに説明してみろ。」


少し考えたあと、俺は答える。


「俺は……たぶん、超近接型の剣士だと思っています。そして型を身につけて気づいたことが一つ。木刀は、今の俺には長すぎました。だから、加工を加えました。」


リーヒンドの目が一瞬、驚きの色を帯びる。それでも平静を装い、冷静な口調で言った。


「ほう……続けろ。」


「今まで使っていた片手剣型の木刀、その長さを半分以下にしました。短剣型にすることで、自分の身体能力を最大限に活かせるようにしたんです。」


リーヒンドは心の中で大絶賛していた。


(見事だ……小等部の剣士の中でも、ここまで自分を客観視できる奴はいない。)


「お前の判断、かなり良い。剣の長さを変えることで、自分の戦い方を再定義したわけだな。」


俺は頷いた。


「自分を一番理解していなければ、強くなれませんから。」


リーヒンドはさらに心の中で感心する。


(考える力だけなら、すでに小等部トップだろう。)


そして、新たな技の指導が始まった。


「次は短剣の技の基本だ。"連続切り"の応用を覚えるぞ。」


「連続切り、ですか?」


「そうだ。ただな、ズバーッ!じゃなくて、ズババババ!だ。短剣ではこっちが主流になる。だが、連続切りって名前につられてガチガチになる奴が多い。そこをシャキーンと脱力してやれ。シャキーンだぞ。」


擬音混じりのアドバイスは相変わらずだが、言っていることは理にかなっている。連続切りは単なる速さを追求するものではなく、自由な発想で自分らしさを加える技なのだ。


「つまり、自分なりのカッコいい連続切りを作り上げればいいんですね?」


俺がそう言うと、リーヒンドはニヤリと笑った。


「そういうことだ。お前、そういうの大好きだろ。」


「めっちゃ好きです!」


その瞬間、俺の中に新たな闘志が湧き上がった。自分の色を出せる技、それが俺にとって何よりも魅力的だった。型に囚われず、自由に剣を振るう。それはただの戦いの技術ではなく、俺自身を表現する手段でもある。


リーヒンドの下での特訓は、単なる剣術の習得を超えて、自分自身を深く知る旅のように感じてきていた。


「明日から本格的にこの"シャキーン"を体に叩き込むぞ。覚悟しとけ。」


「はい!任せてください!」


俺は剣を握り直し、次なる試練に向けて気を引き締めた。短剣を手にした新しい自分の姿が、少しずつ明確になっていくのを感じながら。



「メテオローリングウルトラスーパー……!」


「長ぇよ、アホタレ。」


リーヒンドの拳が俺の頭に振り下ろされ、鈍い衝撃音が響いた。


「いてぇ!なんすか急に!」


「名前が長ぇっつってんだよ。まずな、戦闘中に名乗ってる暇なんてねぇし、長いとダサい。マジで。」


「え、長いとダサいんですか……!?なんか壮大な方がカッコいいじゃないですか!」


「そりゃ違う。たとえば"千斬り"だ。短くて覚えやすいだろ?」


「ああ、それは確かに……。」


俺は少し納得した。短い名前の方が威圧感や切れ味があるように感じる。それに、実際に叫ぶのも楽だ。





無意識的に体を動かすことを習得した俺は、今や応用を効かせることがかなり自由になってきていた。リーヒンドの指導で一つ一つの技を磨き上げる中、新たな可能性を発見する。


「回転斬り」はその一例だ。


本来は基本技の一つに過ぎないが、俺が工夫を加えることでより洗練された動きになった。右手で剣を正持ちし、左手を逆手持ちに変える。その状態で身体を回転させるだけで効率よく斬撃を放つことが可能だ。


「その持ち方だと、体全体を使って斬撃を叩き込める。対多人数戦では特に有効だな。」


リーヒンドは俺の動きを見ながら評価する。


「回転の真ん中を意識して、それ以外はだらーんとしろ。それだけで無駄が無くなる。」


「分かりました!こうですか?」


俺は教えられた通りに回転しながら斬撃を繰り出す。剣筋が鋭くなる感覚が手に伝わってきた。


「おお、いい感じになってきたな。だが、もっと早くだ。」


リーヒンドの指摘に、俺の闘志が燃え上がる。もっと速く、もっと強く——それが今の俺の目標だ。





一通りの特訓を終え、俺は剣を置いて深呼吸した。汗が滲む額を拭いながら、リーヒンドに問いかける。


「この調子でいけば、俺……もっと強くなれますよね?」


リーヒンドは一瞬間を置き、鋭い目で俺を見つめた後、微かに笑った。


「当たり前だ。ただし、油断すんな。成長するたびに新しい壁が現れる。それを越えるたび、お前は一歩ずつ本物に近づいていくんだ。」


その言葉に、俺は力強く頷いた。


「絶対、越えてみせます!」


剣を握る手に再び力を込め、俺は自分の中に燃え上がる情熱を感じていた。次なる壁がどんなものだろうと、俺は立ち止まらない——そう、決めている。



リーヒンドの言葉を反芻しながら、俺は剣を握り直す。


連続斬りの技術がある程度完成してきた今、次に必要なのはトドメを刺すための単発攻撃だ。特に、間近に迫る剣王祭のような1対1の真剣勝負では、相手を確実に倒すための「決定打」が絶対に必要になる。


だが、リーヒンドは厳しく警告する。


「トドメの一撃ほど、油断が生まれやすい。それを忘れるな。」


トドメの一撃に全力を注ぐがゆえに、隙が生じやすい。それを相手に見抜かれれば逆転される可能性が高くなる。そんなリスクを背負うからこそ、この技には慎重さと大胆さのバランスが求められる。


そして俺が新たに覚える技、それは——


「踏み込み斬り」。俺はこの技をしぶしぶ「絶」と名付けた。元々はスーパーウルトラハイパーry


踏み切り足で地面を強く踏ん張り、一瞬で相手の懐に潜り込む。その動きの速さで相手に対応させる隙を与えず、最小限の力で一撃を叩き込む技だ。リーヒンド曰く、この技は俺のスピードと反射神経を最大限に活かすことができるらしい。


「ただし、この技を使うときはタイミングを絶対に見極めろ。無闇に突っ込めばカウンターの餌食にされるだけだ。」


「わかってます。無駄にリスクを負うつもりはありません。」



「この技でカウンター食らったら、立ってられないぞ」



もう一つ、リーヒンドから提案された技がある。それは「投剣」。


名前の通り、剣を投げて攻撃する技だ。ただし、これを使うためには短剣を複数持ち運ばなければならない。投剣は奇襲や隙を作るために有効だが、常に補充を意識しなければならないデメリットがある。


「お前なら、この技も覚えておいて損はない。だが、投げる剣のストックが切れたときのことも考えておけよ。」


「了解です。それでも、ここぞというときには役立ちそうです。」





そして、もう一つ特別な戦法——「二刀流」。


右手と左手に短剣を持ち、攻防の自由度を大幅に高める戦法だ。通常、このスタイルは扱いが難しいため、初心者にはおすすめされない。しかし、俺の身体能力と成長速度を評価したリーヒンドが判断し、俺に試す価値があると言ってくれた。


「二刀流は、一見強そうに見えるが使いこなせなければ逆に動きが鈍る。だが、お前ならそのリスクを乗り越えられる可能性がある。」


「なるほど……つまり、二本を扱いながら相手に隙を見せない技量が求められるわけですね。」


「その通りだ。それに、二刀流なら守りを攻撃に転じる動きがしやすくなる。お前の戦闘スタイルには相性がいいだろう。」


二刀流の特訓は、連続斬りや踏み込み斬り、投剣といった技を全て繋げるための土台となる。俺は両手に短剣を持ち、リーヒンドの指導を受けながら基本の動きを繰り返した。


「……よし、その感覚を覚えろ。左右の剣が喧嘩しないように、バランスを取るんだ。特に防御から反撃に移る動きを練習しておけ。」


「了解です!」


俺は汗を拭きながら答えた。この特訓がどれだけ厳しくても、俺の目指すものはもっと先にある。剣王祭の舞台で、誰にも負けない剣士になるために——俺は全てを吸収してみせる。





「まだだ!ギュッと絞ってから広げろ!バーンだ、バーンからのそれだ!オツムは常に余裕を持て!」

リーヒンドの檄が飛ぶ。その声に反応するように、俺は短剣を握る手にさらに力を込めた。


「はい!ここでっ!バーン!」

気合と共に技を繰り出すが、どうにも思い通りにいかない。だが、繰り返すことで確かな手応えが掴めてきていた。


「くっ……」

リーヒンドが一瞬怯む。絶好の機会が訪れたことを直感する。


(今だ!)


「"絶"!」

踏み切り足に全力を込め、一気に加速する。風を切る音が耳に響き、視界が狭まる中、俺の短剣がリーヒンドの懐を捉えようとしていた。


「判断は良い!だが、間合いが甘すぎる!」


——次の瞬間、重い衝撃が腹部に走った。


「ぐはっ!!!」

体が宙に浮き、無防備な状態で地面に叩きつけられる。息が詰まり、視界が白く染まった。


「しまった、やりすぎたか……」

リーヒンドの声が遠くに聞こえる。その言葉を最後に、俺の意識は深い闇の中に沈んでいった——。



---


気がつけば、薄暗い訓練場の天井が目に入る。頭がガンガンする。どうやらしばらく気を失っていたらしい。俺はゆっくりと体を起こし、リーヒンドの顔を見ると、少し申し訳なさそうな表情を浮かべていた。


「すまん、力加減を間違えた。だが、いい動きだったぞ。」

リーヒンドの声は珍しく穏やかだった。


「……いや、俺の方こそ間合いが甘かったです。」

そう言いながら腹を押さえる。まだ鈍い痛みが残っているが、これも成長の証だと思うと不思議と悔しさはなかった。


「まあ、今日はここまでだ。次はもう少し手加減する。もっとも、今の一撃でしっかり学べただろう?」

リーヒンドは薄く笑いながら手を差し伸べてくる。


「ええ、十分に……痛みを通して体に叩き込まれました。」

俺はその手を掴み、ゆっくりと立ち上がった。リーヒンドの言葉に嘘偽りはない。この失敗も次への糧となる。


(もっと強くなるために、俺はまだまだやれる——。)


腹の痛みを感じながら、次の訓練への意欲が湧いてくる自分に驚きながら、俺は短剣を握り直した。




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