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Sword King  作者: ふんころ
19/56

ダナーVSブラドー

「何だ!?」

ライトが叫ぶと、目の前の荒れ果てた街の景色に現れたのは、ダナーだった。彼はそのまま地面に叩きつけられ、周囲の空気を切り裂くような衝撃音を立てていた。だがその目は未だに冷静で、明らかに意識を失っていない。


そして、ダナーの目の前に立っているのは、圧倒的な力を持つ狂戦士、ブラドーだった。彼は足を踏みしめ、全身の筋肉を震わせながらダナーを見下ろす。


ライトは目を見開き、声をあげた。

「バーサーカー…!」


ブラドーが低く唸りながら、声を上げる。

「やっと現れたなぁぁぁぁあ!!!虫野郎!!!お前だけは簡単には死なせねぇぞぁぁぁぁ!」


戦場の空気が一変した。周囲の静寂が一瞬にして破られ、戦闘の嵐が吹き荒れた。

ブラドーは無差別に周囲を破壊し、戦闘不能の剣士たちをなぎ倒していった。その身体は疲れ果てているようだが、狂気に満ちた顔からは全くそんな様子が見受けられない。


ダナーとブラドー、二人の戦いが今、始まった。


「逃げるか、正面から戦うか。」

ツキは冷静に言った。

「どっちも選べる。でも、ダナーは本当の自分を試す必要がある。」


ライトとニナは驚きの表情を浮かべたが、ツキはそれを気にせず続けた。

「ダナーは今、格上の相手に立ち向かうことで殻を破ろうとしてる。」


ブラドーは戦場を荒らしながら、ダナーに向かって突進する。その鋭い目と、狂気を帯びた力強さは、まさに暴走状態の象徴だった。


ダナーはその全身に汗を滲ませながらも冷静さを保ち、ブラドーの動きを観察していた。

彼の目は鋭く、動きは一切無駄がない。だが、ブラドーの力には圧倒的な差があり、ダナーの力だけでは到底太刀打ちできそうにない。


「所詮は虫ケラ以下のようだなぁぁぁぁ!」

ブラドーが嗤いながら、強烈な拳を振り下ろす。その一撃がダナーの肩をかすめ、地面に激しい衝撃を与えた。


ダナーは身をひるがえしてその一撃をかわし、すぐに反撃を試みる。しかし、その動きはブラドーの反射的な膝蹴りに阻まれた。


「ぐふぁっっ!」

ダナーは顔面に膝を受け、地面に叩きつけられる。そのままダナーは地面を転がり、何とか姿勢を立て直すことができた。


ブラドーが手を振り上げ、ダナーを殴ろうとする瞬間、ダナーは間一髪で投げた短剣がブラドーの手に当たるのを見て、ようやく助かった。


だが、状況は厳しい。ダナーは立ち上がるものの、ブラドーはその圧倒的な力をもってダナーを圧倒しようとしていた。

戦闘が長引くほど、ブラドーは冷静さを取り戻し、再び優位に立ち始めていた。ダナーはどうしてもその力を打破する方法を見つけられず、次第に消耗していった。


その時、ブラドーが一瞬動きを止めた。

「終わりだ!このゴミ虫が!」

彼が叫ぶと同時に、その膝を上げてダナーの顔面を狙った。


ダナーはその動きを察知し、死に物狂いで身をひねって避けるが、ブラドーの一撃がダナーの肩を激しく打ち、彼を地面に叩きつけた。


ダナーは倒れ込むが、顔を上げる。彼の目はまだ冷静だ。まだ諦めていない。


「これで終わりじゃないぞ。バーサーカー。」

ダナーはそう呟き、息を荒くしながらも立ち上がった。




ダナーは倒れ込みながらも、瞬時に立ち上がる。その目は鋭く、決して死んだ魚のような目ではない。血が流れる額を拭い、彼は痛みをこらえて息を整えながらも、ブラドーに目を向ける。


ブラドーはすでに、ダナーを見下ろして笑っていた。無慈悲な笑顔がその顔に張り付いており、目には狂気が宿っている。彼は大きな大剣を肩に担ぎ、歩みを進めながらダナーを挑発するように声を荒げた。


「虫野郎がいくら剣を向けようと、俺には効かねぇんだよォ!!!」

ブラドーの声は空気を震わせ、ダナーの心臓を強く打った。彼はその言葉の意味をしっかりと受け止めた。


その時、ダナーは一瞬だけ目を閉じ、静寂の中で冷静さを取り戻す。彼の体は血で染まっているが、精神は研ぎ澄まされていた。ダナーは短剣を握りしめ、冷静に戦況を分析する。


「知ってるか?」

ダナーの声が響いた。その声には、かすかな冷徹さと決意が込められていた。

「世界で1番人を殺しているのは、その"虫"なんだぜ?」


ブラドーの顔から、少しだけ笑顔が消えた。だが、すぐにまた得意げに笑いながら言った。

「なんだと?お前みたいな虫野郎が、何を言ってやがる!?」


だが、ダナーの目が鋭く変わった。

「知らねぇだろうけどな。虫のように常に命を懸けて生きてきた者が、最も残虐な戦い方をする。生き残るためなら何だってするんだ。」

その言葉に、ブラドーは一瞬、眼を細めた。だが、その一瞬の隙を見逃さなかった。


ダナーはすぐに動いた。短剣を一閃。目にも留まらぬ速さで、その刃をブラドーに向ける。しかしブラドーはそれを一切気にせず、巨体をゆっくりと動かして短剣を防ぐ。


「お前の刃が、俺に届くわけないだろ!?」

ブラドーはその声をあげると、振り上げた大剣でダナーの短剣を弾き飛ばす。刃がぶつかり合い、金属音が轟くが、ダナーはそれに気を取られることなく、再び後ろに跳躍する。


ブラドーはその後ろに飛び込んだダナーの動きを見逃さず、一気に大剣を振り下ろす。ダナーはその一撃を目の前で感じ取りながらも、ギリギリで回避。大剣が地面に刺さり、周囲にひびが走る。


「逃げるだけか!虫野郎!!!」

ブラドーはイラつきながら言い、地面に突き刺さった大剣を引き抜くと、再びダナーに向かって突進する。


その巨体に迫るブラドーに対し、ダナーはひるむことなく立ち上がり、短剣を構える。彼は背中を少しだけ曲げ、息を整え、そしてその場に留まる。


(アイツの方が強い!……あいつの方が速かった!)

ダナーは心の中で呟く。それが彼にとっての最後の決意だった。

その瞳の先には遥か先を走る親友の背中であった。


ブラドーがその身を沈め、大剣を前に出してダナーに向かって一気に突進する。大剣の刃先がダナーの目の前で光を放ちながら迫る。だが、ダナーはその刃を避けることなく、両手で短剣を握りしめ、正面から向き直った。


その瞬間、ダナーは目を見開き、全身を駆け巡る感覚を感じ取った。全身に流れる血液が、まるで時間を遅くしてくれているかのようだった。


「今だ。」

ダナーは低く呟き、必死にその瞬間を掴み取ろうとした。


ブラドーが突進したその刃を、ダナーは見極めた。彼の腕が一瞬だけ速さを失い、かすかな隙間が生まれた。その瞬間、ダナーは一気に踏み込んだ。


「お前が俺を虫だと言うのなら、俺はその針となり、生き血を食らう!」

ダナーの短剣が、ブラドーの大剣の隙間に食い込んだ。ダナーはその刃を振り上げ、思い切りブラドーの腹に突き刺した。


ブラドーが一瞬、驚いた表情を浮かべる。その目の前でダナーはその短剣を引き抜き、もう一度突き刺す。


「う、うぅぁ…!」

ブラドーはその痛みに呻きながらも、大剣を振り上げようとするが、ダナーはそれを許さない。彼の体重を利用して、ブラドーを押し倒す。


「俺は、虫のように生きてきた。だからこそ人間のりも強くなるための戦い方をしてきた!」

ダナーの声は荒くなりながらも、毅然と響いた。


ブラドーは最後の力を振り絞り、大剣を振るう。しかし、その刃は空を切り、ダナーの短剣が再びブラドーの胸に突き刺さった。


しかしブラドーの体がゆっくりと立ち上がる。

街の静寂を破った。


ダナーは息を荒げながらも、冷静にその場を見回す。彼の瞳は、全てを見透かすように輝いていた。





ダナーの息が荒く、心臓の鼓動が耳をつんざくように響く。その手に握る短剣が、ブラドーの巨体に突き刺さったままで、動きが止まらない。刃は、ブラドーの分厚い鎧を貫通し、徐々に奥へと食い込んでいく。しかし、それでもブラドーはその威圧的な笑みを崩さない。


「なんだこの光はっ!!!クソッタレが!」

ブラドーはその痛みに耐えながら、歯を食いしばり、ダナーを睨みつける。しかし、その視線の中に恐怖がちらつくことはなかった。彼はまだ信じていない、ダナーの力が本当に通じるのだろうかということを。


だが、その刃の先から、金色の光がじわじわと広がり始めた。まるで、ダナーの命がその刃を通してブラドーに宿っていくかのような感覚だ。ダナーの左腕が、光り輝きながら力をみなぎらせていく。その光は、彼の内側から、怒涛のように湧き上がり、腕を包み込んでいった。


「"絶…迅"……!」

ダナーの声は小さく、しかし、その言葉には確信が込められていた。彼の心は、戦いの終わりを見据えていた。だが、ブラドーの鋼鉄のような意志は揺るがず、力の差はまだ縮まらない。刃が深く食い込んでも、ブラドーの大剣を振るう力は衰えなかった。


「まだ遅い!このままでは刃がまだ通らない!」

ダナーはそう自分に言い聞かせると、目の前の現実に目を凝らし、必死で次の一手を考える。手のひらから伝わる金色の輝きが、未だ全力を発揮していないことを告げていた。もっと速く、もっと強く。


「絶……迅!!!」

ダナーは再び声を上げ、左腕をしっかりと力を込めて突き出す。だが、ブラドーはその力をまるで無視するかのように、今度は左腕で大剣を振り下ろし、ダナーの身体を吹き飛ばそうとした。だが、その一撃がブラドーの身体を振るわせる。ダナーの腕に宿った光が、さらに強く輝き、無敵のような防御を張り巡らせる。


「まだだ!」

ダナーの足元が崩れそうになる。しかし、彼は歯を食いしばり、振り下ろされる大剣を避け、ひらりと身をかわし、再びその刃をブラドーの肉体へと叩き込む。無駄な動きは一切無く、ただ鋭く突き進んでいく。


「絶…迅!!!!!」


ダナーの瞳に、決して諦めない光が宿っていた。もうすでに、彼は限界を超えている。身体が悲鳴を上げる中で、力を込めたその一瞬が、すべてを変える瞬間だと信じていた。


「絶…迅!!!!!!!」

その言葉が響くとともに、ダナーの左腕に宿った光は爆発的に拡大し、金色の波動があたりを震わせた。刃がブラドーの肉体に深く突き刺さり、次の瞬間、まるで時間が止まったかのように、ブラドーの体がビクリと震える。その身体の中で何かが破裂したかのように、ブラドーの体が揺れた。


ブラドーは絶叫を上げ、目を見開き、口から血を吐きながらその場に膝をつく。しかし、ダナーの刃は、彼の背中から頭の先までを貫通し、その全身を圧倒的な力で押し広げていた。


「絶・迅!!!!!!!」


その瞬間、ブラドーはついに大きく体を崩し、膝をついた。その顔は痛みと驚愕に歪み、息も絶え絶えになった。ダナーの金色の輝きが、今や完全に彼の体内に突き刺さった刃を貫通し、ブラドーを圧倒している。


その場に静寂が訪れる。周囲の爆風が吹き荒れる中、ダナーの呼吸が荒く震えるように響いた。身体全体に余波が走り、金色の光が次第に収束していく。しかし、彼はまだ動かなかった。倒れたブラドーを見下ろすように、その目は冷徹に向けられていた。


「…言っただろ。世界で1番人を殺しているのは虫、だってな。」

ダナーは小さくつぶやくように呟き、左腕の輝きは完全に消えた。残るのは、虚無と疲労の中で、何かをつかんだという安堵感だけだった。


ブラドーは切り傷の出血多量によりそのまま地面に崩れ落ちた。



試験は終了。

ダナーは勝利した。

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