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Sword King  作者: ふんころ
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見て得たものは

3人は都市の中心部に向かう前に、あえて別行動を選んだ。各々が冷静に周囲を観察し、戦闘を見守りながら、目立たぬように動いていた。ツキ、ニナ、そしてライト。それぞれが持つ異なる視点と鋭い洞察力が、場面を静かに見守り、評価を下す。


「今年、かなりレベルが高いな……」と、ライトは呟いた。声には、まるで挑戦者のような気配が込められていた。本来なら、確定合格者として名を連ねてもおかしくない剣士がこの大会に参加しているのだ。


ニナは一瞬目を見開き、視線を移動させた。「あの女の子弱っ…なんで試験なんか受けに来てるのよ…」 目立つほどのレベルの低さを持つ一人の剣士が視界に入る。だが、ふとその刃を見た時、ニナは言葉を止めた。「ん?……刀…?」

何かが引っかかる。だが、その刃には特別な光が宿っていたわけでもなく、ニナはすぐに再び目を向けた。


一方、ツキはじっと周囲を観察していた。目の前に現れた剣士が振るう武器は、他の者たちが使うものとは異なる、どこか違和感のある雰囲気を漂わせていた。その剣士は、まるで何もない場所から突然現れるかのような速さで、次々に攻撃を仕掛けている。


「速さと駆け引きはかなりのものだけど…」ツキは小さく呟いた。その剣士は、華麗な身のこなしと素早い動きで、相手を翻弄している。しかし、それだけでは勝負が決まらない。駆け引きとスピードがあまりにも速すぎて、攻撃そのものが相手に届かない。


「でも、やっぱり決定打がないわ…」ツキはじっと見つめる。何度も何度も気配を消し、相手の後ろから現れ、驚かせるような戦い方をするその姿は、まるで暗殺者のようだ。


「暗殺者のような身のこなしね…」と、ツキはその戦いぶりを観察し続けながら、静かに推測する。「恐らく短剣使いってところ……」


その時、相手の疲れた様子が明確に見えてきた。攻撃を回避し続けていたものの、じわじわとスタミナを削られていく。何度も何度も仕掛けられる攻撃に、相手はついに力尽き、そしてついには決定的な一撃を食らって戦闘不能に陥った。


ツキは冷静にその戦いを見守りながら、息を呑んだ。「相手の体力、精神的にもズタボロになってる……」その姿を見て、ツキはある事実に気づく。


「まさか…あのバーサーカーを半狂乱状態にしたのは……!」


ツキの頭をよぎったのは力任せに戦っていた相手を、まるで遊ぶかのようにしっかりと追い詰めていったブラドーとの戦いだ。今の戦い方もそれと同じだ。


あんな戦い方されたら、相手はイライラが溜まり、次第に攻撃が当たらなくなる。そして、少しずつその気持ちが恐怖に変わっていく。焦り、錯乱し、冷静さを欠いていく。


「こんな戦い方をするやつなんて見たことがない。」ツキは改めて呟く。その一撃の痛みよりも、その相手に追い詰められる恐怖と不安。あの速さ、持久力、そして見えない攻撃の怖さ。だが、ツキは一つの名前を思い出す。


"ダナー"。


彼女はその名前を呟くように心の中で呼んだ。


以前、彼女が戦った時。力強い戦い方、力と力がぶつかり合う瞬間。それがダナーだった。だが、あの時の戦いとは全く違う。ダナーはあの島のトーナメントで戦っていたが、今回は違った。今、目の前で見ている戦い方は、まさに彼女があの時体験したものとは全く別人であった。


「……闘技場で気配を隠す。これがどれほど高難易度な事か。疲弊するのも当然よね。」ツキは冷静にその戦い方を分析した。相手を恐怖で追い詰め、精神的にも追い込んで行くその戦い方。それにしても、相手が感じる恐怖と焦燥感が、より一層その戦いを怖ろしいものにしていた。


自分がどれほど有利な条件でヤツと相対していたのかを思い知る。


もし戦場が今のような町や森だったら……

そう考えるだけで恐ろしい。


「これが本来のダナー……」ツキは静かに呟き、少しだけ戦いの先に思いを馳せる。彼女はその戦いをさらに深く観察し、見極めようとしていた。




夜が明け、バトルロワイヤルは3日目に突入していた。ツキ、ライト、そしてニナの3人は、それぞれ独自に戦況を観察していたが、今、再び顔を合わせた。


「凄い奴がいたよ。」

ツキが、静かに言った。

ライトはその言葉に目を見開く。

「え?」

ニナも疑問の表情を浮かべる。

「どういうことよ。」


ツキは目を細め、遠くを見つめるように続けた。

「今も恐らく、中心部で寝ずに戦ってる。ポイントを稼ぐために。私に着いてきて。」


3人は無言で頷き、ツキの後を追い、都市の中心部へ向かうことに決めた。


途中、ライトが口を開く。

「誰だ?その恐ろしいってやつは。どこにも居ないぞ。」


ニナも少し不安そうに言った。

「どこなのよ。」


ツキは静かに答える。

「彼の名前はダナー。ずっと身を隠してるはず。」


その瞬間、突然、何かが大きく吹き飛ばされる音が響いた。

ドコォッ!!!!!

それは建物を突き抜け、目の前で爆発音が響いた。


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