試験の始まり
帝国剣術学院への道
船が着岸するやいなや、ダナーは目の前に広がる光景に圧倒された。そこには何百もの剣士たちが、同じように船から降り立っていた。船の数も10隻と膨大で、降り立った人数は実に約1000人。彼らすべてが、帝国剣術学院への入学を目指しているのだ。
「すごい人数だな…」
ダナーは思わず呟く。周りを見渡すと、ただの剣士ではない。目の前にいる者たちの大半が、どこかで名を馳せた者や、数々の島でその名を知られる強者たちばかりだ。年齢も性別も様々だが、そのどれもが圧倒的な実力を感じさせる。試験が始まる前から、ダナーはすでにこの場の緊張感に包まれていた。
そして、彼の目はすぐに目の前にある巨大な建物、つまり帝国剣術学院がある島、プリマステラの姿を捉えた。この島こそ、初代剣王が所有していたとされる伝説の剣の名前を冠した場所。伝説の剣にまつわる話は島を超えて語り継がれている。そのため、この学院は単なる剣術の学校にとどまらず、剣士たちの憧れの地としても知られている。
ダナーは、足元を見つめると、それでも決して動揺を見せなかった。彼は自分の覚悟を胸に誓った。強さだけでなく、ここにいるすべての者が持つ目的、情熱、そして覚悟を感じるが、彼の覚悟もまた負けてはいない。今、ここでこの試験を受ける意味を自分の中で確認する。
試験者たちが降り立ち、船の周りはすぐに人だかりとなった。ダナーはその中でも、強者たちの雰囲気に圧倒されながらも冷静を保とうとした。しかし、彼の心の中では確かな決意が芽生えていた。
「ここが終わりではない。俺の戦いはまだ、始まったばかりだ。」
彼の目は鋭く、遠くの学院の建物を見据え、選抜試験の始まりを待った。
夜の帳が降りる中、帝国剣術学院の試験会場となる首都プリマステラの街は、まるで戦場のように静まり返った。試験管のルスリアの言葉が未だに頭の中で響く。生き残ることが最優先、だが戦闘不能にすることで順位を上げる──その意味をダナーは深く理解していた。
「生き残るだけではダメ、倒した相手がいなければ失格。ついでにここが…ど真ん中だと!?」
ダナーは周囲の景色を一度も確認せずに、ただその厳しい現実に落胆していた。首都プリマステラのど真ん中──それはまさに多くの強者たちが集まる最も危険なエリアだ。どこに隠れ、どこで戦うべきか。ここでは戦いがすぐ目の前で始まる可能性も高い。
周囲には、同じく試験者たちが集まっている。ダナーはその中に混じりつつも、心を落ち着けようとしていた。だが、気を抜くことは許されない。
「くそっ、なんでこんな真ん中なんだよ…」
彼は小さく呟きながら、背後の建物や道をじっと観察した。このバトルロワイヤル、数日に分けて行われるとは言え、最初の晩が過ぎれば、どこで戦いが起きてもおかしくない。それに、隣接する場所にどれだけの強者が待ち構えているかは分からない。やはり警戒は怠れない。
一方、ツキは端っこからスタートしたという情報を聞いて、ダナーは少しだけ安心感を覚える。しかし、その安心感も一瞬のものだった。ツキもまた生き残らなければならないという現実には変わりない。ツキがあの静かな強さで、どれだけ戦っていけるのか…ダナーはしばしそのことを考えた。だがすぐに、自分の試験に集中することにした。
そして、試験開始
夜明けとともに、試験の開始が告げられる。
突然、空気が変わった。空を切り裂くような鐘の音が響き渡り、その音を合図に試験が始まった。
ダナーはすぐに身を低くし、周囲の状況を把握しようとした。いきなり戦闘が始まるわけではないが、このままじっとしていても何も進展しない。さっさと行動を起こすべきだ。
「俺はまず、ここからどう動くかだな。」
試験会場は広大で、様々な建物や道が絡み合っている。ダナーはすぐに最寄りの建物を目指し、その陰に身を隠した。ここでは相手が急に現れるかもしれないので、動きながら警戒を解くことはできない。
そのとき、遠くから足音が近づいてきた。ダナーはその音に反応し、すぐに物陰に隠れる。どれだけの数の試験者がこの区域にいるか分からない以上、少しでも有利に立てる場所を見つけることが最優先だ。
足音は次第に近づいてきた。隠れていると、誰かが通り過ぎる。視界の隅に、戦いの音や声がわずかに聞こえる。戦闘はすでに始まっているようだ。
「とりあえず、動かないと…」
ダナーは再び建物の陰を移動しながら、進行方向を決めた。その先にある広場には、すでに戦いを繰り広げている者たちがいる。しかし、そこに踏み込むのは早すぎる。様子を見つつ、チャンスを狙うべきだ。
この試験、単なる生き残りをかけたものではなく、戦闘を通じて順位を上げていかなければならない。どんなに戦闘を避けようと、やがてその必要に迫られる瞬間が来るだろう。
そして、そのときが来た。
ダナーが立ち止まったその瞬間、数メートル先から物陰に隠れていた敵の姿を発見した。