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いつもの日常

お読みくださりありがとうございます!

誤字報告ありがとうございます。

ピチョンと暗い道を恐る恐る進む一行の上から水滴が落ちて来る。

ピチョン。


斥候が魔道具の灯りを掲げ、罠にかからないよう四方に目を配り一歩ずつ進む洞窟の中。

緩やかな下り坂に足を取られないよう、一歩ずつ慎重に足を動かすが、暗い道、濡れた岩肌、いつどこから魔物が襲ってくるかもしれない緊張感に疲労が溜る。

ギリギリの精神状態の中で、剣士が魔法使いが神官が唾を飲み込むのも躊躇する中、その声は響いた。


「にゃあ~ん」


「あ、にゃん太郎。お腹減ったの?」














「もう、まいったわよぅ」


暗い洞窟エリアを抜けると明るい草原エリアだった。

しかも階段のすぐ側にセーフティーエリアがある。

ドサッと体を投げ出すようにセーフティーエリアに横たえた女性の冒険者、職業魔法使いは恨みがましい目を俺に向ける。


「しょうがないだろう、にゃん太郎が腹減ったんだから」


俺はウエストポーチからにゃん太郎専用の器を取り出し、トポトポとミルクを入れソワソワとしながら待つにゃん太郎の前にコトリと置いた。

ピチャピチャと音を立ててミルクを飲むにゃん太郎。


「しかし、あのエリアは慣れんな」


こちらもドサッと床に腰を下ろす男の冒険者、職業剣士でこのパーティーのリーダー。

斥候と神官もお互いに水筒を傾けて乾いた喉を潤している。


「リーダー、どうする? 今日はこのまま休むか?」


セーフティーエリアで休まずこのエリアの偵察に行っていたパーティー新参者のまだ若い冒険者が戻って来た。


「うーん、精神的な疲れもあるし……今日はここまでだ」


リーダーの決定に他のメンバーがホッと胸を撫で下ろしていた。


「それでいいか?」


「ああ、いいよ。俺はポーターだから、パーティーの決定に従うさ」


ここで休むと決まれば、俺はウエストポーチからテントやら魔道コンロやら焚火用の薪やらをどんどん取り出していく。


「にゃああ」


「うん? にゃん太郎お代わりか?」


ミルクを器に注ぎ足してやると、にゃん太郎は前足を揃えて俺に向かって「にゃん」と笑った。

ここで休むと決めたメンバーは自分の影の中から次々と契約している召喚獣を呼びだした。

リーダーの召喚獣は本人とよく似たゴツイ体格の熊の魔獣で、魔法使いの召喚獣は魔法に長けていると評判の風妖精。

斥候は狭い場所でも潜り込めるゴースト系の魔物で神官はやっぱり聖魔法に適した白蛇だ。

サポートメンバーのポーターとして何度かダンジョンに一緒に潜った仲だから、奴らの召喚獣とはお馴染みである。

問題は最近パーティーに入った若い冒険者の召喚獣だ。


「……へえ」


召喚獣としては珍しくないが狼系の魔獣だった。

ただ、デカイ。

そして、目付きが悪い。

ミルクを美味しそうに飲んでいたにゃん太郎も毛を逆立てて俺の足の後ろへと隠れる。

隠れて「シャーッ」とかわいく威嚇している。

まだ、他のメンバーの召喚獣とも慣れていないのか、リーダーの指示で少し離れた場所へと連れていった。


「すまんな。まだこいつらとも慣れていないんだ」


「構わないさ。ただ、見張りで俺と組ますのは止めてくれ」


いくらダンジョン内のセーフティーエリアだとしても夜の見張りは交代で行う。

あんなのと一緒じゃ、俺の召喚獣であるにゃん太郎にもの凄いストレスを与えてしまうじゃないか。


「わかった」


苦笑いのリーダーを見送って、俺は焚火を起こし鍋に水を入れ簡単な夜食作りを始めよう。


「私も手伝いますよ」


神官が首に白蛇を巻き付けて手伝いに来てくれた。

……嬉しいけど、にゃん太郎とお互いに「シャーッ」ってするの、やめてくんない?









この世界には魔法が存在する。

その魔法が扱える種族は天の理によって定められていた。

人族は魔力を持っていたが、魔法を使うことができなかった。

ある日、偉大な賢者が人族でも魔法が使えるようになる方法を編み出した。


――召喚獣。

魔物を召喚し隷属させ、魔力を与えて代わりに魔法を行使させる。

以降、人族は成人の儀で召喚を行い、呼び出した魔物と契約し、一生の相棒として共に過ごすことになった。

いつの日か、人族の価値は召喚した魔物の力で判断されるようになる。

伝説の魔獣を従えれば一国の王にだってなれるが、もし召喚した魔物が矮小な者であれば貴い身分の者でも地に堕ちることになる。


さて、「猫」それも「子猫」を召喚したこの男はいったい何者なのだろうか?

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